『狂淫姦獄奇譚』三船誠二郎の「描きたいものが多すぎるんだよ!」感が光ってる 

 まず、タイトルロゴが読めない……ッ! 三船誠二郎『狂淫姦獄奇譚』(エンジェル出版)。装幀家としても、中身そのものにグチャドロな雰囲気を出そうとした結果が、コレなんだろうか?

 作者の三船氏は、これが初の単行本とのこと。どういう人物かと思い、まずTwitterアカウント(@mifuneseijiro)を見ると「同人やったり、コスプレやったり、3Dやったり。エンジェル倶楽部で漫画を時々描いてます」という。いろいろなことに挑戦をしたい作者だと見受けられるわけだが、収録作品もそんな感じであった。

 収録作は、どれも一話完結の短編なのだが、とにかく内容が濃い。エロマンガで「濃い」というと、だいたいの人はエロシーンの描写のことだと思うだろう。それも濃いのだが、同時に物語がえらく濃い。

 ノルマともいうべきエロシーンの合間に、必死で物語を挟んでくる。とにかく、一つの物語に「あれもいれたい、これもいれよう」と、入れ込みたくてたまらないシーンが、溢れている感じだ。

 こなれた器用なマンガ家だと、うまーく整理して描くわけだが、三船氏はそんな小手先の芸には無縁な感じ。リビドーの趣くままに描きまくってやろうという熱意で描いている雰囲気がする。だから、1ページあたりの情報量は多い。多すぎてコマがうるさい。

 例えば、収録作のひとつ「奇祭!でかまら祭り!!」。まずタイトルからして、川崎で行われている奇祭「かなまら祭り」のパロディであることを匂わせる。

 物語は、引っ越して来たばかりの人妻が、町に馴染むために近所の奥さんたちに誘われて「でかまら祭り」に参加するというもの。この祭り、町の人妻たちが、男根そのものの神輿に乗って練り歩くのである。川崎のかなまら祭りを見物したことがあれば、このシーンは笑える。練り歩きはしないけど、見物に来た女性が、でっかい木彫りの男根にまたがるのは定番。しかも、それに男たちが群がるように写真を撮っているという……ローアングラーよりも見たくはないものを見た感のある祭りなのだ。

 おまけに、祭りの解説のところに、どう考えてもアトラスのゲームとかに登場している、あの神様の絵が……。

 展開は想像通りで、祭りの本番は乱交。そこでは、町の女性たちが喜々として腰を振っているのだが、ここでのセリフに注目。

「酒屋の有希さん……? 本屋の由美江さんも!? 和菓子屋のエカテリーナさんまで……!」

 本編とはまったく無関係に、なぜエカテリーナさんが、和菓子屋の嫁になったかのドラマのほうが気になってしようがない。

 もう一本、やたらといらない情報が濃いのが「女将校サーシャ~悪魔の強制姦獄収容所~」である。いや、三船氏は『イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験』(1974年制作のクソ過ぎて歴史に名を刻んだトンデモ映画)とか好きなのか?

 物語は、独裁国家の政治犯収容所。一ページ丸々使って独裁国家の概要と、ヒロインである所長(かつ独裁者の娘)を説明し、クーデターの発生で立場は逆転したとして、延々と輪姦を描く。エロシーンでは「このつまらん余興に付き合ってやる」とか、なかなか堕ちそうになさげなヒロインが、次のページでいきなり堕ちてる疾走感に、作者のやる気を感じる。けれども、その一方でちゃんと同じ時系列でクーデターが進行しているドラマも描かれている。なのでクーデターが成功するかどうかのほうが気になるし、部下も我が身可愛さにクーデター側に鞍替えしているドラマまで挿入しているのが、秀逸だ。

 ともすれば、余計な情報が多くて集中できなくなりそう。けれども、リピドーを感じるタイプの読者だと、そのうるささが見事な味として楽しめるような気がする。

 相当、描きたいものが脳内で溢れていると思われる三船氏。今後の活躍を期待しているぞ!
(文=ピーラー・ホラ)

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