初体験で覚えたエクスタシーが忘れられなくなっちゃう! この味を一度知ったら忘れられないよぉ〜ッ!
ヒロインが、そんな気持ちになってしまう姿を描く小野中彰大『クミカのミカク』第1巻(徳間書店)。でも、エッチなマンガではない。あくまで、食を描く作品である。
物語の舞台は、異星人が珍しくなくなった時代の地球のデザイン事務所。そこで働くクミカは、空気中の微生物から栄養を吸収するので、食事をしなくてもよいという異星人だ。
でも、物理的に食べる行為ができないのではない。クミカの生まれた星は、とても貧しい。ゆえに必要のない食事という行為は限られた富裕層の嗜好品扱いなのである。そんな星から地球へやってきたクミカは、貧しい中で頑張ってお金を貯めて、地球に送り出してくれた両親に恩返しをするべく働くのに必死。だから、どんなに食事を勧められても断っているのである。
とはいえ、職場はワンフロアの小さなデザイン事務所。仕事が終わって打ち上げにも参加しないクミカに対して、職場の仲間たちは、ちょっと違和感を覚えている。嫌っているのではない。仕事を完璧にこなして、トラブルにもすぐ対処してくれるデキる仲間であるクミカが参加しないことに、一抹の寂しさを感じているのだ。
そんなクミカにちょっと惚れているチヒロは、あの手この手でクミカに食べることの楽しみを教えようとする。しかし、クミカは頑なに断るのである。
だが、たっぷりと読者に気を持たせた上で、クミカはついに食の歓びを体験してしまう。風邪で寝込んでいるクミカのアパートに駆けつけたチヒロのつくった、鍋焼きうどんによって!
このクミカの人生初の食事。レンゲにすくった、1本のうどんとスープを啜る様に、なんと6ページも費やされる。上目づかいにスープをすすり、我慢できずにむしゃぶりついて、悶える。その瞬間をたっぷりと描写するのである。もはや、これは食事ではなく、セックスである!
それでも、風邪が治ったクミカは頑なに食事をとろうとはしない。しかし、そんなクミカを陥落させようとするチヒロ。草食っぽい眼鏡男子なのになかなかの策士である。
残業していたクミカの前で、ほっかほかの弁当のフタを開けて「我慢するのは辛いでしょ?」と迫るのだ。もはや、欲望を止めることのできなくなったクミカは全身で、1ページを丸々費やしていう「この感覚は……忘れられない……っ」。ええ、本当に食事を使ったセックス。ほんとうにありがとうございました。
こうしてクミカは、女子会にも参加して、みんなでご飯を食べたりして食の歓びというものを知っていきます。
そんなハートフルストーリーなんですが、作品が盛り上がるのは、ここまで記したように健全なただの食事シーンが、ちょっとセックスを想起させているような雰囲気を漂わせているからである。
きっと、この異星人は食欲と性欲が同じ感覚なんじゃないか……? そんな妄想も沸く作品である。
(文=是枝了以)
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