どんな作品でも、面白いと感じている読者はいるはずです。ですので、筆者はレビューをするにあたって、必ず面白いと思うポイントを探ろうとして読んでいます。でも、今回ばかりは、楽しみ方を見つけることができませんでした。敗北です。
その筆者が敗北した作品が、ポルリン『カフェちゃんとブレークタイム』第1巻(電撃コミックス)です。この作品「次にくるマンガ大賞」の「本にして欲しいwebマンガ部門」で第9位。「ニコニコ静画」で累計200万再生を突破した作品だそうです。つまり、広い世間では大勢の人が楽しんでいる作品のようです。
物語は、あるのかどうか判然としません。ジャンルを区分するとすれば、飲料の擬人化マンガです。作品中には、毒舌な珈琲の擬人化キャラ・カフェちゃんや、紅茶の素晴らしさを伝えたいと願う天然巨乳キャラの紅茶のティーちゃん、百合好きな緑茶の緑ちゃんといったキャラクターが次々と登場します。
そうしたキャラクターたちが、それぞれの飲料の蘊蓄を語るというのが、作品の内容です。
問題なのは、その蘊蓄の内容です。カフェちゃんはコーヒーの淹れ方にはさまざまあるとか、生産量の話などの蘊蓄を語ります。ティーちゃんは、アフタヌーンティーに合うスイーツをという形でさまざまな情報を教えてくれはします。
けれども、この蘊蓄の内容が極めて薄いのです。
ええ、この作品は学習マンガではありません。蘊蓄はあくまでおまけ、そうした蘊蓄の合間に描かれるキャラクターたちの微エロな肢体に価値を置いて描かれているのです。作品中で描かれるキャラクターが可愛いのは間違いありません。だから、ネットで掲載されて無料で読んでいる限りでは、可愛いキャラを見ることができていいなあ~という気分になります。
でも、それが商業単行本になった場合にはどうでしょう?
本の価格は920円+税。フルカラーのために、ほぼ1,000円近い価格設定となっています。その価格で、キャラクターたちにほんわかすることはできるけれども、蘊蓄は単なるオマケに過ぎないとなると損をした気分になってしまいました。
そのような気分になれば、さらに作品のアラも見えてきます。キャラ設定において、カフェちゃんはSっ気強めだとか緑ちゃんは百合妄想が大好きといった読者にウケそうな要素も付加されています。これもまた、蛇足のように感じます。結果的に、キャラクターの可愛い造形と属性と蘊蓄とが、いずれも中途半端なものだと露呈してしまっているのです。
いや、これは作者の責任ではありません。無料でネットに公開されていた作品が、人気だからそのまま単行本にしてしまえばよいと、安易な考えを持ってしまった編集者に責任があります。そろそろ、気づき始めている読者もいるでしょうが、ラノベに比べてマンガはネットで無料公開から商業出版へと移行した時に、紙に印刷して製本してみたら、意外に面白くなかったという現象が起こりがちです。これは、マンガが文章に比べてアラが目立ちやすいだとか、さまざまな理由があると思います。でも、結局は紙にした場合に、どのような印象の作品になるか想像ができなかった編集者の責任。がっかりされるような作品を世に出すハメになってしまった作者は、むしろ被害者といえると思いました。
現在、紙媒体でも連載が始まっているようですが、問題点が解決されていくことを祈ります。
(文=大居候)
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