【初心者歓迎! アメコミ道場 Vol.3】

映画「アベンジャーズ」プロジェクトが100倍面白くなる!! アメリカ現代史に翻弄された“キャプテン・アメリカ”の黒歴史

 しかし世界大戦が終結し、1950年代に入ると、アメコミではスーパーヒーローものの人気にも陰りが見え、『スーパーマン』や『バットマン』といった超ヒット作を除き、多くの作品が終焉を迎えます。折しもアメリカ国内では、朝鮮戦争やソビエト連邦、中華人民共和国の脅威から反共産主義の気勢が高まり、共産主義者や、その同調者、果ては勝手に共産主義者と推測された者さえ激しく糾弾する、いわゆる“赤狩り”が起こっていました。アメリカ文化史上の惨事である“赤狩り”では、ハリウッドのスターや映画監督、作家も多く仕事を失い、追放されました。また、それを恐れて“赤狩り”に沿った作品が作られたのも事実です。

 そして我らが『キャプテン・アメリカ』シリーズでも、まさに反共産主義の摘発に加担するような展開がなされていました。実は、前述の公式なキャップの設定(仮死状態となり~)は後に作成されたもので、実際はキャップは第二次世界大戦の終結後、無事にアメリカに帰国し、自国の平和を守るスーパーヒーローものとして刊行が続いていたのです。マーベルやクリエイターの意図はわかりませんが、当時のアメリカでは、よほど反共の気勢が高かったのかもしれません。しかし“赤狩り”が、次第に自由を愛するアメリカ国民の反発を買って終焉を迎えたように、人気を失っていった『キャプテン・アメリカ』シリーズも、この時期で一度終了します。

 そして60年代に入り、アメコミの世界に“シルバーエイジ”と呼ばれる時代がやって来ます。この時代の立役者は、何といってもスタン・リーでしょう。マーベルの編集者だった彼は、スーパーマンに代表される、それまでの超人的で人格的にも優れたスーパーヒーロー像と異なる、新たな世代のスーパーヒーローを次々と生み出していきます。貧乏学生な“スパイダーマン”、怒りの感情で変身してしまう“ハルク”、人類から差別されるマイノリティである“X-MEN”。大義のために戦うだけでなく、ささいな個人的な問題で悩んだり、落ち込んだりする人間味が読者の共感を呼び、これらのスーパーヒーロー作品は大ヒットしました。そこで躍進を果たしたマーベルは、自社(正確には前身にあたる会社)の立役者であるキャップを復活させることにします。

 その際、キャップにあくまで古きよきアメリカのスーパーヒーローとして存在してもらうため、これまでの設定は改定されました。先述の公式設定のとおり、スティーブが務める本物のキャップは、第二次世界大戦末期から眠り続けており、戦後のキャップの中身は別人たちだったということになったのです。中でも、アメリカ文化史における汚点“赤狩り”に加担していた時期のキャップは、彼の熱狂的なファンが引き起こしていた凶行という位置づけがなされ、戦後から50年代におけるキャップの活躍は、黒歴史と化したのです。

 こうして20年ぶりに時代遅れのヒーローとして復活したキャップですが、復活後にはさらなる激動の歴史が待っていました。70年代には長期化するベトナム戦争や、政府による盗聴疑惑に端を発する“ウォーターゲート事件”などで、アメリカ国民の政府に対する不信感は高まっていきます。第二次世界大戦の頃は、“政府の方針=正義”と単純な図式で動くことができたキャップも、こうした風潮を受け“正義とは何か”について考え始めます。ちょうどウォーターゲート事件が発覚した頃には、謎の悪の組織の首領の正体が、実は大統領だったとほのめかすようなエピソードも発表されています。

“アメリカ=正義”の図式が崩れたことに絶望したキャップは、「キャプテン・アメリカ」の名を捨てて、国に捉われない遊牧民の名を称した新ヒーロー「ノマド」として一時期活動しました。続くレーガン大統領下でタカ派の軍拡路線がはびこった80年代には、キャップも政府から指揮下に入ることを強要されますが、これを拒否して「キャプテン・アメリカ」を返上。今度は「ザ・キャプテン」と改名し、独自のヒーロー活動を始めました(後に政府と和解し、また「キャプテン・アメリカ」と名乗り始めますが)。

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