『風立ちぬ』『九十九』受賞ならず…ウォルト・ディズニーを“人力ボカロ”化するアカデミー賞ノミネート作のヤバさ

 また注目したいのは、短編アニメ部門にノミネートされた『Get a Horse!』。この邦題は『ミッキーのミニー救出大作戦』で、もちろんディズニーの作品だ。ディズニーは、ピクサーとの共同制作を含めてアカデミー賞の常連として知られ、これまでも長編と同時制作の短編とでダブルノミネートしている例が多い。前回も長編に『Brave』(『メリダとおそろしの森』)、短編に『Paperman』(『紙ひこうき』)がダブルノミネートした結果、ダブル受賞を果たしている。特に短編アニメ部門で受賞した『紙ひこうき』は、違和感のない2Dの手描きとCGの融合を目指すべく、自前でソフトまで開発しており、技術面からでも絶賛されていたため納得の受賞となった。アカデミー賞受賞の直前に、全編がネットで期間限定公開されて話題になっていたので、覚えている人も多いだろう。

 今回の『ミッキーのミニー救出大作戦』はモノクロで、一見するとディズニーの未公開作品を発掘してきたような感じであるが、もちろん完全新作である。そして見どころは、カラーの3DCGのミッキー達がモノクロと行き来するという演出である。さらにそれだけでなくウォルト・ディズニーの生前の肉声を1音節ごとにサンプリングして再構築し、「声優」としている。つまり“人力ボカロ”と同じことをやってのけているのである。

 今回、短編は森田監督の『九十九』も含め、いずれも制作に3DCGが用いられた作品で占められることになったが、そうしたなかで、またしてもディズニーの作品は一段捻りを加えていた。短編は短編でコマ撮りも含め、「2Dの手描きでもセル風か否か」「3DCGでもセルルックかフォトリアルか」など、制作者の領分や視聴者の好みが見え隠れしていた。しかし、『ミッキーのミニー救出大作戦』は受賞を逃したものの、制作方法の違いなどを凌駕して、業界の牽引者たるディズニーの力量を伺うことができた。華やかな長編アニメーションが脚光を浴びやすい状況にあるが、短編アニメーションもなかなか侮れないのがわかるだろう。なお『ミッキーのミニー救出大作戦』は、『アナと雪の女王』と同時上映されることが決定しているので、チェックしておきたい。
(文/真狩祐志)

■短編アニメーション「ミッキーのミニー救出大作戦」特別映像
http://www.youtube.com/watch?v=75a__8qcRdQ

■アカデミー賞・ノミネート一覧(★は受賞作)
【長編アニメーション部門】
・『The Croods』(Chris Sanders, Kirk DeMicco and Kristine Belson)
・『Despicable Me 2』(Chris Renaud, Pierre Coffin and Chris Meledandri)
・『Ernest & Celestine』(Benjamin Renner and Didier Brunner)、
★『Frozen』(Chris Buck, Jennifer Lee and Peter Del Vecho)
・『The Wind Rises』(Hayao Miyazaki and Toshio Suzuki)

【短編アニメーション部門】
・『Feral』(Daniel Sousa and Dan Golden)
・『Get a Horse!』(Lauren MacMullan and Dorothy McKim)
★『Mr. Hublot』(Laurent Witz and Alexandre Espigares)
・『Room on the Broom』(Max Lang and Jan Lachauer)
・『Possessions』(Shuhei Morita)

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