これはオタクこそ観たほうがよいのでは……。

『ディリリとパリの時間旅行』公開直前 ミッシェル・オスロが語る作品への愛。そして苦悩。

 試写会の会場を出てからずっと、この映画をつくったミッシェル・オスロに尋ねたかったことがある。

「いったい、この映画の面白さをどう伝えればいいのだ……?」

 アニメーションの「巨匠」の最新作『ディリリとパリの時間旅行』。それは、19世紀末から第一次大戦前までの文化が爛熟したパリを舞台に描かれる少女の冒険譚。ニューカレドニアから来たヒロインのディリリが、パリで出会った最初の友人オレルと共に街を騒がす少女たちの誘拐事件の謎を解いていく。その過程には、キュリー夫人やパスツール、ピカソやサラ・ベルナールなどのその時代を生きた人々も登場し、物語に血肉を与えている。

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 見どころは、とにかく多い。まず、冒頭でディリリが過ごしているのは、博覧会の会場。そこでは、ニューカレドニアの人々が動物園の動物のごとく展示物として働いている。そして、誘拐事件を繰り返している組織の目的は、次第に存在感を増している女性の権利拡充への反発。一見、のどかなタッチの物語は帝国主義による植民地支配からフェミニズムまで、現代に繋がるテーマを忍ばせつつ、光あるところに影がある世の不条理を語るのだ。

 くだらない作品であれば、たとえ試写会でも寝ることを厭わない筆者だが、この作品はその真逆。子供から大人まで、安心して楽しめる冒険譚を軸にしつつも、語らずとも感じられる気づきが無数に散りばめられているのだ。

 それでも、この映画が日本で公開されるにあたり、どれくらい話題になるのかと思うと、少し寂しくなる。

 試写会の会場で、隣の席からはこんな会話が聞こえてきた。

「先生、先日のイタリアはいかがでしたか」

 また、後ろのほうからはこんな声。

「今年の、フランス映画祭は……」

 そうなのだ。マスコミ向け試写会の案内を手にして会場に足を運ぶのは、そうした人々。日本は世界でも群を抜くアニメーションの大国となった。どこでもかしこでも、アニメーションの宣伝を目にする。企業と作品のコラボも数限りない。

 同じ、アニメーションというジャンルの中にあるはずなのに、この作品はそうした「アニメ人気」の枠とはまったく別の世界にある。

 そんな会話を聞いて、ふと頭をよぎったのは前回、オスロが来日した時のことである。

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