ヘタの研究 vol.6

役者が言う「役が普段の生活でも抜けなくて」は8割ウソ! 演技指導者に聞く【ヘタの研究】

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「物事が“ヘタ”なとき、そこにはパターンや規則があるのではないか? そのパターンを知ればウマくなる手助けになるのではないか?」

 この仮説のもと、当連載「ヘタの研究」では小説の書き方、歌において「ウマい、ヘタとは何なのか?」をその道の専門家に伺っている。前回に引き続き『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(アスコム)の著者でありアイゼ演技ワークショップで演劇指導を行う伊藤丈恭氏に、よく役者が言う「役が日常生活でも抜けなくて……」という発言の真偽などを伺う。

*前回記事:キムタクはなぜ「何を演っても木村拓哉」なのか? 演技指導者に聞く!

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伊藤丈恭著『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(アスコム)


■「狂人」役はなぜ難しいのか~理由はサザエさんと一緒~

――『踊る大捜査線』の映画で、小泉今日子がサイコパス系の凶悪犯役だったことがあるのですが、そういう人っぽく笑う演技を見て、かゆくもない頭をかいてしまったことがあります。小泉さんの演技力についてはさておき「頭のおかしい人の役」はそもそも難しいだろうなとも思いました。

伊藤丈恭氏(以下、伊藤) 難しいです。キャラクターで言うならサザエさんのような、感情がコロコロと変わる役も難しいです。実際は感情って、すぐにぱっと変わりませんから。

 サザエさんの「感情の不自然さ」は「頭のおかしい人の不自然さ」にも共通します。「不自然」だから演じるのが難しいんです。ただ、前編で上手い演技として挙げたオスカーを受賞したヒース・レジャーの『ダークナイト』(2008)は、頭がおかしい人の役なんです。

――狂人を演じたい人必見の映画ですね。

伊藤 あと別の意味で難しいのは、歴史上の人物ですね。比べられてしまいますから。

――土方歳三あたりは色々な人が「トシさんはそんなことしない!」という理想像を持っているでしょうから、さぞかしプレッシャーがあるでしょうね。

 

■「役に引っ張られて日常生活に支障が出ちゃって」という役者の発言は8割はウソ!

――役と役者の関係はどういったものなのでしょうか? 『ガラスの仮面』では千の仮面を持つ少女、と主人公の北島マヤが形容されていますが。

伊藤 自分の過去と役の過去が持っているものを照らし合わせて、あの時の感情を役のときにこうもってくるのではなく(右手と左手のこぶしをぶつけあう)、こうもってくるようにしたい(指と指をからめる)とは思っています。

――より濃密な。

伊藤 役は「俺と言えば俺だけど、俺じゃないといえば俺じゃない」というようなどこかわからなくなってくる感じですね。

――よく役者で、ハードな内容の映画などに出演したときに「役に引っ張られて日常生活にも影響が出る」という人もいますが、そんな感じですか?

伊藤 役者が「役が日常生活から抜けない」というときって、8割は嘘だと思います(笑)。先ほど「俺と言えば俺だけど、俺じゃないといえば俺じゃない」とお話ししましたが、それでも日常生活に支障が出ることは僕はないですね。

 ただ、『ダークナイト』でヒース・レジャーが狂人の悪役をやっていたのですが、あまりにも役に没頭しすぎて、前に同じ役をやっていたジャック・ニコルソンが見学に来た際に、このままでは危ない、と忠告したそうなんです。ですがヒース・レジャーは『ダークナイト』の公開年の2008年に急性薬物中毒で28歳の若さで亡くなってしまいました。

――つまり、ヒース・レジャーのような深刻な状況でなく、「役に没頭して、日常生活に支障が出ちゃってる俺……」とかつぶやけてる時点ではまだ大丈夫だと。役作りにおいてコツはありますか。

伊藤 想像力を推奨している演技指導者もいますが、僕は想像力よりも過去を思い出した方が絶対強いと思います。

 例えば、ハワイに行ったことがないのに「1か月あげるからハワイに住んだことのある人を演じて」といわれたところで、想像でなんとかしようとしたとしても、ググって調べたエピソードの羅列になるだけなんです。

 でもハワイには行ったことがないけどグアムには行ったことがあるとします。南国特有の刺すような光だったりとか、似てると言えば似ていますよね。ゼロからハワイを想像するより、自分のグアムの体験を使えばハワイの近いところまでは行けるんです。最終的には想像力で埋めないといけませんが、イチから想像するよりは絶対ラクです。

――実体験の手触りを活かすと。何年か前に演じた役を再演するというときに、ぱっとできるものなのでしょうか。

伊藤 できるときもあればできないときもありますね。冷めちゃったりとか、新鮮味がなくなっちゃったりとか。

――「仮面」みたいに簡単なものではないんですね。

伊藤 できる人もいるかもしれませんが、それはどちらかというと型の演劇ジャンルの人の方かもしれませんね。

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