「都庁焼き討ち」の文字を叩きつける同人誌まで 中核派も親衛隊全国指導者もいるから楽しいんだ【C95 3日目レポ】

 コミックマーケット。それは、あらゆる表現、そして主張が集う来る者を拒まず去る者を追わない楽園。いうなればカオス。とりわけ、3日目はね。3日目、大きな面積を占めるのは男性向け。そして、大きくなくとも目立つのは評論・情報。そう、シコりまくらせ濡らせたい。シコりたくて濡れたい。知らせたい、知りたい。痴と知の欲望は限られた時間の中に凝縮されるのだ。

 そんなコミケ。今回、評論・情報で一躍話題になっていたのが、初参加のサークル「みどるこあ」。新左翼とか過激派とかテロ集団とか様々なレッテルで知られる革命組織「中核派」の若手メンバーによるサークルである。

 すでに「日刊サイゾー」のほうで記事にしたけど(参照記事)、中核派のサークル参加に一言いわずにはいられない人は多かった。いわく「近づくと、なにされるかわからない」「頒布物を買えば公安に目をつけられる」「反社会集団なテロ組織が参加したら、コミケの存続が危うい」云々。とても面白い反応。とりわけ、オウム真理教と比較して「オウムも最初は、ソフトな面白集団だった」みたいなことをいう人も。これまで何度か、彼らを取材して事情を知っているからというわけではないが、オウムと比較しちゃあね。

 そう、かつての「お近づきになりたくない中核派」を知っていると、オウムとは真逆に年々ソフト化が著しいというのが、正直な印象。革命党として、それは歓迎すべきなのかはわからぬが、実際にそうである。『ポスト学生運動史 法大黒ヘル編…1985〜1994』(彩流社)の著者である中川文人サンがされたみたいに、命のやりとりが突きつけられた時代は知らない。

 でも、まだ20世紀の末だったか、中核派の拠点がある某地方大学に通ってたボクの友人が趣味でビラやらなにやらを集めてネットにアップしていたことが。そうしたところ、学内の中核派メンバーが突然自宅にやってきて「我々はスパイの摘発を……」と。謝って許してもらって事なきを得たが「なんて、やばいヤツらだ……」と、運動界隈では「面白枠」だったボクなんかは、ビビったものでした。

 それも、すでにひと昔どころか、ふた昔前の話。世の中の変化って面白いものである。

 というわけで、3日目の朝。まず「みどるこあ」の様子を見にいくのは当たり前。先日、取材に答えてくれた、コミケ担当の吉田悠クンと、上記のような話をしていると、いきなり知っている顔がやってきた。『やや日刊カルト新聞』の藤倉善郎さんその人である。知り合いかと思いきや、初対面。挨拶の後、取材のカメラを止めろと激おこに迫る精神科医・香山リカサンの写真が表紙の冬コミ新刊を「渋谷に大暴動を」の文字が躍るクリアファイルに入った「みどるこあ」の交換。ボクに「しっかり撮ってね!」と、自分のスマホも渡してくる藤倉さん。

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 う〜ん、なんて不穏な集団だ。この瞬間を公安に撮影されたら『月刊 治安フォーラム』に「新たな共闘の成立」みたいな文章が載るに違いない。この、なんだかわらない怪しさは、面白い。そう、怪しさがなければ、コミケじゃない。実にその通りだったのか「みどるこあ」のコピー本も、中核派機関誌も早々と完売。で、会場で出会った知人の準備会スタッフたちにクリアファイルを見せると、一様に「ああ、欲しかった」「いいなあ」と。なるほど、ここにまた、コミケの楽しさが。

 でもね、今回は初参加ということで話題になったけど、不穏な魅力を放っているサークルなんて、ひとつやふたつじゃあない。

 ボクが必ず訪ねるエル・ボンデージ先生のブース。夏コミでは、鬼太郎が猫娘にプロレス技をかけられる同人誌を頒布していたが、冬コミ新刊ではさらにパワーアップ。えるぼん先生(略すとかわいい)は、このところいつも、ダーティ・松本先生との合同誌。えるぼん先生のページも震えるけど、ダーティ先生のほうは、一言でいってヤバい。

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 掲載作のタイトルは「頭狂オリンピック2020」。その内容たるや「都知事の大嘘詐欺招致」によって開催されるに至った「銭ゲバオリンピック」の阿鼻叫喚を描くもの。熱中症で倒れるどころか、選手のレオタードに興奮した観客が乱入してレイプの嵐。街は火の海、原発も爆発。「官僚殺害」「都庁焼き討ち」の文字が紙面にぶちまけられる……エロマンガである。「都庁焼き討ち」とか、もうダーティ先生の願望か。いや、もはや読者に、これを作品で楽しむのみならず革命戦争へと導く煽動作品。理屈ではなく、本能に訴えるそれは、極めて危険度が高い。

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 そんな作品と出会うことができるのも、コミケの楽園の象徴だ。そう、理念を理解し、ルールのもとで参加者として、それぞれが自分のやりたいことを全開にできるのが、コミケ。今回、不穏な人だけでなく、美しいまでに自分の好きを実現している人にも出会った。

 知人を訪ねた、西のミリタリー島にその人はいた。ヒムラー閣下である。いや、この方4年ほど前に、コスプレ広場で偶然出会って取材させてもらったことがある。その時も、ほぼヒムラー閣下だったのだが4年を経て、本物よりも本物っぽいヒムラー閣下となった、彼にボクは再会したのである。なんでも、ここ数年の間、養鶏場を経営していて痩せたのが功を奏したという。そう話していると、さらにもう一人。あの、同僚でも会いたくないというハイドリヒもやってきたではないか。なんて、自分の「好き」を実現している人たちだ。感動。感動。そしてまた、感動。思わずボクの右手が動く、ハ……ハイ……(註:映画『博士の異常な愛情』で、ストレンジラブ博士が勝手に動いてしまう義手を必死に抑えるシーンを思い出してください)。

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 主張する人もいれば、願望を叩きつける人もいる。そして、親衛隊全国指導者もいる。みんないて、それでいい。それがまごうことなきコミケの魅力。それぞれに、楽しませ、悲しませ、怒らせ、単一ではない感情が入り交じる表現の渦。それが、ボクらに明日への希望をもたらすのだ。平成は終わる。でも、コミケは続く。きっと、怪しさと楽しさと、あまねく輝きがある限り。
(文=昼間 たかし)

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