今石洋之とコヤマシゲトが語るアナログとデジタル 「3DCGに描いてるのと同じ手間を求めてしまう」「要らない工程はなくてもいいんじゃないか」

■ザックリとしたコンセプトを出せる人が減少中? 原画のデジタル化は一長一短

1610_atsuc20163_2.jpg左からコヤマシゲト、今石洋之、氷川竜介

 コヤマはアナログとデジタルの関係について、「メカの設定とかを描く場合にも、手とか足とか体とかバラバラに描いといて(後で)組み合わせたりできるので、ラフはデジタルが楽だと思いますね。僕の場合は大ラフを鉛筆で描いたらiPhoneで撮って、同期させてるパソコンのPhotoshopやCLIP STUDIOで開いて切り貼りして、その上から描いちゃうっていう。スキャナーも要らないです」と、用途によって使い分けているという。

「一時期、デジタルでアナログっぽい質感を出すのが流行ってたんですけど、今はむしろそういう行為自体が古く見えてしまう。デジタルはデジタルの良いところを使って、アナログはアナログの良いところを使えばいいじゃんって。全部デジタルでやる必要もないし、デジタルだけでやる必要もない。最終的に出来上がった画が良ければどっちでもというのが今風だなと思ってますけど」(コヤマ)

 続けて、「緻密な絵を描ける人は多いですけど、ザックリとしたコンセプトを出せる人が減ってきている気もするんですよね。今石さんの絵はシンプルで一見汚く描いてるように見えますけど(笑)、イメージや本質が的確に伝わるんです。絵の精度じゃなくて、コンセプトとかデザインのキモが伝わるのが重要だと思うんです。でも昨今はコンセプトアートって言うと、ハリウッドみたいにリアリスティックな背景をザザッと描いてるのだと思われちゃってて、本来は違うのではないかなと思います」と、必ずしも綺麗な絵が必要ではないとコヤマ。

 今石もうなずきながら、「上手に描いてることに満足しちゃうんで、それが面白いのかを判断するチャンスがなくなることがあるんですよね。上手に描くのって、ある程度テクニックがあればできてしまうことだし、上手さを競うと、より上手い方が勝ちになってしまう」と懸念。「上手い絵はアイデアを出した後のフィニッシュワークで使うテクニックであって、その前は上手いかどうかは問題じゃなくて、何を意味してるのかを考えます」と、念を押した。

「その際は自分は本当に上手い絵は描けないんじゃないかって不安になるんですが、ちゃんと処理できるスタッフがいればいい、というつもりでやってます。骨の髄からアナログ派なので、デジタルは不具合の方が多い印象です僕からしたら。紙でサクッと描けてたのに、タブレットだと何で上手くできないんだろうって。そういうイライラしかなくて、それを無理してやってるんですけど」(今石)

 さらに「(動きのチェックでは)アナログで原画描く時はクイックチェッカーを使わないですね。使い方がわからなくて。昔ビデオで動きのタイミングを確認するのがあって、それは使ってたんですけど、パソコンだとやれることが多すぎて覚えなかった」(今石)

 現在、今石が使用しているTVPaintでのプレビューにも、「5枚で済む原画を、間の動きを確認したくてどんどん描いちゃうんです。中割が上手く動くのか確認したくなっちゃうのでどんどん描いてって、ほとんど全原画」になってしまうという良し悪しがあるという。「それで何となく色も塗れたりするから『それ仕上げの仕事でしょう』みたいな。個人のテイストを突き詰めたい場合は『こんなに夢みたいな機械があったなんて!』って。高校生の時にあったら本当にこればっかりやってるなって思いますけどね」とのこと。

「ここからは動画です、ここからは仕上げですってシステムができればいいんですけどもね。今まだちょっとモヤッとしてるんで。そもそもアナログの原画のラフな線はセンスがないと塗れないんですよ。TVPaintなら多少ラフな線でも塗れるんで、そのまま原画の線を使うことも可能なんです。動画マンが線を引いてるのは中割のとこだけで、下手したらカメラワークもつけれちゃうんで。でもそれをシステム化したら『その作業分のギャラ配分はどうなるのか?』とか。15年前の仕上げと撮影が移行した時は時間的メリットが明確にあったんですけど、原画のデジタル化は描いてる原画マンのメリットが半々だなって」(今石)

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