【劇場アニメレビュー】多少の改変も許容範囲! 17年下半期を代表する傑作3DCGアニメ『GANTZ:O』レビュー!!

1610_gantz.jpg『GANTZ:O』公式サイトより。

『GANTZ』といえば、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で2000年から13年にかけて長期連載された奥浩哉の大ヒットSFマンガであり、単行本の累計発行部数は約2100万部。これを原作にしたTVアニメーションシリーズ(04/フジテレビ、AT-Xほか)や実写版映画2部作(11)が製作されたことでも記憶に新しいところではある。

 死んだはずの人間たちが、突然マンションの一室に転送され、理由もわからないまま「ガンツ」と呼ばれる謎の黒い球体の指示に従い、「星人」と呼ばれるさまざまな怪物たちを制限時間内にすべて「やっつける」という、地獄のようなミッションに強制的に参加させられていくというのが基本ストーリー。戦闘結果に応じて参加者には点数が授与され、100点まで貯まるとご褒美がもらえる(その中には、ガンツのミッションに参加させられていた記憶を消されて、ミッションから解放されるというものもある)。

 アニメ版や実写映画版は、当時まだ原作が連載中だったこともあり、途中からオリジナルの展開になったり、さまざまな設定の変更などもかなり見受けられ、そのため原作ファンからの激しい賛否を呼んだが、作品単体として捉えた場合はそこそこ健闘していたほうではないかと個人的には思っている(少なくとも、あの『進撃の巨人』実写版にくらべれば、ね)。

 今回の『GANTZ:O』はフル3DCGアニメーション映画としてのお目見えで、総監督は『TIGER & BUNNY』テレビシリーズ(11/MBS系)監督や、アニメ映画『アシュラ』(12)のさとうけいいちで、『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』(14)で既にフル3DCGアニメ映画を手掛けたキャリアもある。監督は『アップルシード(APPLESEED)』のCGディレクター川村泰。アニメーション制作は、『GANTZ』実写映画版のVFXも担当したデジタル・フロンティア。

 本作は原作ファンの中でも特に人気の高い大阪篇をベースにした内容となっているが、この夏大ヒットしたアニメ映画『ONE PIECE FILM GOLD』(16)の黒岩勉による脚色は、ここでも原作からのさまざまな改変を行っている。中でも特徴的なのが、原作は玄野計と加藤勝、ふたりの高校生が最初から主人公ではあるが、今回の映画ではまず玄野が冒頭のガンツ・ミッションで死亡し、その後で事故死したはずの加藤がミッションに強制参加させられるという設定になっている。

 もっとも、原作でも玄野はその前のミッション外戦闘(吸血鬼一味との争い)で死亡しており、加藤が東京チームのリーダーとなって戦うという、大まかな流れ自体は同じなので、大阪篇単体を映画化するにあたって上手い改変だと思う。ちなみに加藤が率いる東京チームの布陣は、どこか冷酷で残虐な少年・西、人気アイドルのレイカ、気弱で優しい“おっちゃん”鈴木と、原作より数を減らされてはいるが、その分シンプルで各々の行動などがわかりやすくなっているのが利点。

 さて、大阪篇の面白さといえば、水木しげるもびっくりの妖怪たちが大阪の街で大阪&東京チームと大激闘を繰り広げるところにあるが、大阪チームの布陣も原作よりすっきりさせてはいるものの、加藤に興味を示し、やがて惹かれていくシングルマザーの山咲杏や、室谷、島木といった吉本興業を彷彿させる名前とは裏腹の猛者ども(声優陣も吉本のお笑い芸人を配しているが、これが意外に効果的)、またその最大の象徴ともいえる岡八郎が実にかっこよく魅力的に描かれているのもいい。

 実は個人的にリアルタイプのフル3DCGアニメ映画はそう好みではなく(そういえばかつて高畑勲監督は「日本人は顔の作りが平面的なので、欧米に比べて3DCGが馴染みにくい」といった発言をしていた)、またどんなにリアルに描いても、どこかCG臭が醸し出されてしまうので、それらは割り引いて見なければといった意識が働くのだが、夏に公開されたばかりの『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』といい、本作といい、最近はかなりグレードが上がってきており、実写と見まがうほどのショットを目の当たりにすることもたびたびある。

そもそも原作がCGで描かれていることもあってか、3DCGはセルルックや実写などよりも映像化に適した手法だったのかもしれない。

 戦闘シーンのスペクタクル性とダイナミック性、そして残虐性などが巧みに融合しており、中には『パシフィック・リム』もかくやの巨大メカVS星人といった、それこそ『シン・ゴジラ』に唯一欠けていた怪獣バトル要素のサービスもふんだん。

 また驚かされるのは、レイカと杏、ふたりのヒロインが実に艶めかしく映えていることで、ここまで色香が自然に匂ってくる3DCGアニメのヒロインっていたかな? と思えるほどに魅力を放ち、観る側を萌えモードに突入させてくれる。

 そう、今回の『GANTZ:O』は燃える要素と萌える要素が巧みに同居した、ある意味アニメーションならではの快楽を享受できる優れものとなっているのだ。

 今回も原作からの改変は存在するので、その点においてのファンの賛否は避けられないものはあるだろうが、アニメーション映画そのものの面白さとして、本作は断固推したいものがある。

 7月は『ONE PIECE FILM GOLD』
 8月は『君の名は。』
(加えて個人的には『鷹の爪8~吉田くんのX(バッテン)ファイル~』も入れたいところ!?)
 9月は『聲の形』
 そして10月は『GANTZ:O』!

 正直、観る前はさほど期待していなかったのだが、3DCG技術そのものの向上も手伝い、今年の下半期、絶好調ともいえる国産アニメーション映画を代表する1本として屹立していることに、驚きを隠せないほどであった。

 さらに11月はのん(元・能年玲奈)がヒロインの声を担当した片渕須直監督の秀作『この世界の片隅に』(11月12日公開)が控えている! 国産アニメーション映画の躍進にまだまだ期待できそうだ。
(文・増當竜也)

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