日刊サイゾーから、おたぽるへお引っ越し! 劇中に登場する「武器」を知れば、もっともっと作品が面白くなる! 「武器で見る映画」連載第2回は、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』(2013)です。(作中のネタバレを含みますので、ご注意ください)
魔法少女となった主人公・鹿目まどからが“魔女”と呼ばれる怪物と戦う、社会現象を巻き起こした人気アニメ『魔法少女まどかマギカ』こと、“まどマギ”。同作品は、11年にTBS系で放送されたテレビの続編という位置付けで、テレビ版を再編集した劇場版も公開されました。
登場キャラの暁美ほむらは、時間を止める魔法を用いて、自衛隊やら暴力団事務所から銃火器や爆弾など盗んできて戦っていました。時間止められるなら、いらねーだろ!? って思うかもしれないですけど、そこはご愛嬌です。
物語序盤、銃がなかなか出てこないんです! テレビから見てる僕なんかは、もう銃でてくるのなんて知ってるんで鼻息荒くして待っています。
最初に登場する銃は、まどかのよき先輩で、同じく魔法少女の巴マミが可愛がっていた、謎の生命体・べべを倒すためにほむらが取り出した「グロック17」です。僕からすれば、グロックほど語れる銃はないですよ! オーストリアの銃器メーカー・グロッグ社の代表的な銃です。特徴的なのは、ポリマー樹脂を多用していること。銃といえば、まだまだ金属のイメージがありますよね?
しかし、グロックの登場以来、プラスチックを多用した銃がどんどん出てくるのです!ポリマーフレームの方が加工が楽ですし、まさに同社は革命を起こしたわけです。そんなグロックは「プラスチック銃だから金属探知機に引っかからない」というデマが流れ、空港素通りできるなんてテロリスト用の銃だ、なんて言われたという話が銃マニアには有名です。もちろん! 金属部品はあるんで、ひっかかりますけど。
あと、余談ですが洋画『逃亡者』(1993)のトミー・リー・ジョーンズ演じる刑事が「グロッグはいいぞ?」って言っていたのが、僕の銃の目覚めでした! 目覚め?
べべには当たらず、マミはほむらに反撃。この2人ってテレビ版から見てるとわかるんですが、経験豊富なベテラン魔法少女の対決です。マミは魔法の銃を使い、ほむらは実銃を使います。基本は銃の撃ち合いです! ま、魔法は……!? でも、そこがまどマギのいいところですよね!
次にほむらが使う銃は、ドイツ・エルマベルケ社のサブマシンガン「MP40」、通称シュマイザーです。これは第二次大戦のナチス・ドイツ軍の武器です。
新しい拳銃グロック17、古いサブマシンガンMP40、ほむらは、銃なら選り好みしません! 手段より目的なんです! ってことなんです。使う武器のセンスで登場人物の“覚悟”や目の前の出来事の深刻さを説明しているんですね。
さらに、ほむらはサブマシンガンの「Vz61」、通称スコーピオンを使います。別に大文字小文字間違ってませんよ! Vは大文字で、zは小文字です。Vzor 61。チェコ語で61年式って意味なんです。チェコスロバキア製の短機関銃です。片手撃ちもしますが、反動えげつないです!
おいおい!さっきから、短機関銃とかハンドガンとか何だよ!? ってご指摘があるかと思われます。簡単に整理します。
拳銃=ハンドガン。小型で主に護身用。短機関銃=サブマシンガン。拳銃弾を連続発射できる小型の機関銃。小銃=ライフル。弾丸に回転かけて発射するため、射程距離が長い。自動小銃=アサルトライフル。ライフル弾を連続発射できる小銃。機関銃(機銃)=マシンガン。ライフル弾(以上の弾)を連続発射できる大きな銃です。
さらに、ここからより細分化していき、定義なんてあってないようなものです。
マミとほむらは互いに薄手の衣服なので、至近距離での命中は致命傷になります。なのに! なのにですよ! ほむらは、「グロスフスMG42機関銃」を取り出すのです。
もう殺す気ですよ。MG42なんて、装甲板を貫通する7.92mm×57弾を毎分1,200発で発射できる武器です。第二次大戦では、連合国軍兵士から“ヒトラーの電ノコ”と恐れられた武器です。それを……人に! 薄手の服の女子中学生に……! 撃つ! この人でなし……! 凶悪すぎます。
さらになんと、このMG42に装備したマガジンがダブルドラムマガジンなのです!
ダブル? ドラム? ダブルドラムマガジンのMG42なんて存在しないんです! 時間停止で奪ってるはずなのに! まさか、改造してる!? こういうのをマニアは見逃しませんよ!
ほむらは、「H&K P7M13」と「ベレッタPx4」の2丁拳銃を駆使した後、「H&K MP7A1」を取り出します。これは、先述の分類に当てはまらないジャンルなんですよ。一見サブマシンガンなんですが、実はPDWってジャンルなんです。
このPDW(パーソナルディフェンスウェポン)とは、1990年代に出た新しい概念なのです。これは話すと長くなります。PDWだけで、1,000字は必要ですが、このMP7に限って言えば拳銃とサブマシンガンの中間的なやつです。
そんなPDWのMP7を簡単に捨てて、「DSA SA58 タクティカルピストル」で片手撃ちします。これはさっきまで片手撃ちしてたハンドガンやサブマシンガンとは違いますよ。アサルトライフル「SA58」を極限まで短くして、肩に当てるストックを取り外して、無理やりサブマシンガンサイズにしたやつです。
2人の戦闘で、建物が崩壊します。これは、過剰演出だと思います。対物系の武器は出てきてないし、爆発物も出て来てない。単純に実在する銃とマミの「魔法のマスケット銃」の撃ち合いですから。逆に言えば、架空の武器である魔法のマスケット銃の威力が高すぎる、とも考えられます。
銃を向け合って対峙する2人、ほむらが持っているのは「ワルサーP5」です。グロックは!? P7は!? Px4は!? どこ行っちゃったの? ハンドガンだけでいくつ持ってるんでしょうか?
ワルサーって有名なのは、ルパン三世の「ワルサーP38」とヒトラーの「ワルサーPPK」ですよね。
そして、それを捨てます。ほむらが自分の頭を撃ち抜くために新たに取り出した銃、それがまた、ワルサーP5なんです! しかも、さっき投げ捨てた、P5との差別化をはかるため色を変えてます。投げ捨てたのはブラックで、頭撃ち抜いたのはシルバーでした。
頭を撃ち抜いてもほむらは動きます、貫通してましたけどね。そして、時間止める魔法を使って、マミの足を撃ち抜きます。マミは言います。
「急所を撃とうとしなかったあたり、まだ私の身を案じてくれるだけの気持ちはあるようね」
待て待て待て! さっき、MG42撃ってましたよ! あんなに凶悪な兵器なのに……。
ここで、一番の見せ場であるマミさんとほむらの戦闘は終了です。さぁ、もうハンドガンも出てこないだろう、油断していたら出てきました。魔法少女たちの命の代わりであるソウルジェムをほむらが自ら撃ち抜いたのは、「デザートイーグル50AE」です。一番有名で、一番デカい自動拳銃です。ここまでで、登場ハンドガンは美樹さやか相手に出した「ベレッタF92F」を含め7丁です。
実は、この一連の戦闘は、ほむらが創り出した世界の出来事でした。つまり、盗む必要はなく、好きな銃が手に入り、架空の銃も、高価なドイツの銃も、古い銃でさえも使えたんですね。「新しい武器から古い武器まで、どこから盗んだんだ!?」って思って見てましたけど、なるほど、銃そのものが本作の伏線だったんですね。
使用する武器でキャラクター紹介のみならず、ストーリーの伏線も張る……あっぱれです!
いや〜、武器って本当にいいものですねぇ。
(文=二木知宏[スクラップロゴス])
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