高海千歌の物語は、「μ’s」という川に浮かぶ船──『ラブライブ!サンシャイン!!』第2話レビュー

1607_raburaibu.jpg『ラブライブ!サンシャイン!!』Official Web Siteより

 便乗商法か、正統な続編か……『ラブライブ!サンシャイン!!』第2話は、そんな賛否両論が巻き起こりそうな「μ’s推し回」でした。

 もともと、主人公の千歌ちゃんがμ’sに憧れてスクールアイドルを目指したことから始まった『サンシャイン!!』ですが、今回はほかのメンバーとμ’sとの関わりも、物語を転がす大切なポイントになっていきます。

 今回も引き続き、千歌ちゃんによるメンバー勧誘が縦軸です。親友の曜ちゃんは、すでに水泳部との掛け持ちを表明していますので、次なるターゲットはもう1人の2年生・梨子ちゃんになりました。

 東京から転校してきた梨子ちゃんはピアニストで、作曲もできることから、どうしてもメンバーにしたい千歌ちゃん。いくら「ごめんなさい」されても、まったくめげずに誘い続けます。これ、わたしたちは「後に梨子ちゃんがメンバーになる」ことがわかっているのでニヨニヨしながら眺められますが、普通ならかなり引くくらいしつこいです。

 梨子ちゃんがスクールアイドル入りを断る理由は、どうやら彼女のトラウマに関係がありそう。過去に、ピアノの発表会で観客を前に動けなくなってしまったことがあったようで。千歌ちゃんが誘うたびに古傷をえぐっているのだとしたら……と思うとやるせないですが、結果加入するし、まあ安心して見ていられます。

 そんな折、最低5人のメンバーが必要な創部のための申請書を手に、千歌ちゃんと曜ちゃんは生徒会長・ダイヤちゃんの部屋を訪れます。申請書には千歌&曜の名前だけ。当然「おだまらっしゃい!」と却下されてしまいました。

 しかし、ここでダイヤちゃんの意外な一面が。スクールアイドルの魅力を滔々と語り出した千歌ちゃんがμ’sを「ゆーず」と言い間違えたことをキッカケに、ダイヤちゃんが“ガチ勢”のラブライバーだったことが発覚したのです。

「μ’sはスクールアイドルたちにとっての伝説! 聖域! 聖典! 宇宙にも等しき生命の源ですわよ!」

 そう言い放つと、『μ’sカルトQ』問題を連発。たじたじになる千歌ちゃんが後ずさった拍子に校内放送のカフを入れてしまい、全校にそのマニアっぷりがバレてしまいました。

 その他、新情報としては、曜ちゃんが衣装のデザインと制作を担当しそうなこと、人見知りの1年生ルビィちゃんがダイヤちゃんの妹であること、ヨハネこと善子ちゃんは入学当日の自己紹介で盛大にスベり、そのまま登校拒否していることが明かされました。

 さて、今回のメインである梨子ちゃんメンバー入りのくだりです。

 ひたすら千歌ちゃんの誘いを断りまくっていた梨子ちゃんは、ずっと習っていたピアノでスランプに陥り、弾けなくなってしまっていたのでした。そして「海の音を聞く」ために、この沼津にやってきたのでした。

 千歌ちゃんは「次の日曜」に梨子ちゃんを誘います。スクールアイドルのことはとりあえず置いといて、「海の音だけ聞きに行こう」と。

 千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの3人は、地元で家業の手伝いをしている果南ちゃんに船を出してもらい、海に潜ります。あいにくの曇り空ですが、シュノーケル1本でグイグイ潜ります。やがて日が差すと、キラキラと輝く水面から光が降り注ぎ、「音」が聞こえたのでした。

 この海での出来事をきっかけに、梨子ちゃんは曲作りを手伝ってくれることになりました。そして、スクールアイドル活動に傾きかけた梨子ちゃんの背中を最後に押したのもまた、μ’sでした。

「ユメノトビラ」

 こんな歌を作りたいんだと、千歌ちゃんが教えてくれたμ’sの曲のひとつです。

 真っ暗な部屋の中でひとり、梨子ちゃんはスマートフォンで「ユメノトビラ」を聞いています。部屋の隅には、ピアノが置かれています。あの発表会の日、結局弾けずにフタを「そっとじ」して帰ってしまった、ピアノ。そのピアノの前に座り、梨子ちゃんは今聞いたばかりの曲を耳コピで歌ってみるのです。

<ユメノトビラ ずっと探し続けた
 君と僕とのつながりを探してた>

 窓の外、月明かりの向こうで、千歌ちゃんが手を振っていました。なんと、梨子ちゃんは千歌ちゃん家の隣に引っ越してきていたのでした。歌っているのを聞かれちゃいました。

 ここぞとばかりにスクールアイドルに誘う千歌ちゃんに、梨子ちゃんは力なく答えます。

「何やっても楽しくなくて、変われなくて……」
「このままピアノをあきらめるわけには……」
「失礼だよ、本気でやろうとしている高見さん(千歌ちゃん)に、そんな気持ちで……」

 背を向けてしまう梨子ちゃんに、千歌ちゃんは言います。

「やってみて、笑顔になれたら、変われたら、また弾けばいい。あきらめることないよ」
「梨子ちゃんの力になれるなら、わたしはうれしい。みんなを笑顔にするのがスクールアイドルだもん」
「それって、とっても素敵なことだよ」

 千歌ちゃんが伸ばした手に、梨子ちゃんは身を任せることにしたのでした。

<ユメノトビラ 誰もが探してるよ
 出会いの意味を見つけたいと願ってる>

 千歌ちゃんは、スクールアイドル活動をすれば「みんなが笑顔になる」ということに、一切の疑いがありません。それは、活動を通して「絶対にみんなを笑顔にする」という決意表明でもあります。「笑顔になれたら、またピアノを弾けばいい」という言葉の裏には、千歌ちゃんがスクールアイドル活動を「コンテストに勝つ」といった成果とは完全に切り離して考えていることが見えてきます。

<キボウノユクエ きっと追い続けたら
 君と僕にもトビラが現れるよ>

 そう千歌ちゃんに信じさせてくれたのも、μ’sでした。『サンシャイン!!』は今のところ、μ’sという大河に浮かぶ船のような物語です。やがてその大河を乗り切り、『サンシャイン!!』とAqoursが大海原に漕ぎ出すときがきたら、“トビラ”が現れることになるのでしょう。その向こうには、どんな風景が広がっているのでしょうか。まずは第3話も楽しみです。

 それはそうと、前作の登場人物に憧れて、続編の主人公が自分もそれになろうとする物語って、何か記憶にあったなーと思ったら『ムカデ人間』『ムカデ人間2』でした。たくさんの人の肛門と口を数珠つなぎに縫い合わせる映画で、『ラブライブ!』とは全然似てません。はい。
(文/新越谷ノリヲ)

TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』OP主題歌「青空Jumping Heart」

TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』OP主題歌「青空Jumping Heart」

イントロでMix入れたくなるのは私だけでしょうか……?

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