『電車男』『40歳の童貞男』とは異なるオタク系オヤジのリアルな恋の行方『好きにならずにいられない』

1606_fusi02.jpg人づきあいが苦手な大男・フーシとワケあり女のシェヴン(リムル・クリスチャンスドッティル)。2人の恋はうまく成就するか?

 フーシが一瞬で惚れてしまうシェヴンは、決して『電車男』に登場するエルメスのような絶世の美女ではない。そんなに若くもないけど、ニコニコと明るい性格。フーシの外見を気にせず、ダンス教室の後は一緒に帰るようになる。フーシが行きつけのタイ料理店にシェヴンを連れていくと、店主は歓迎してくれた。ドリー・パートンの懐かしいカントリーソングが好きだというシェヴンのために、フーシはラジオ番組にリクエストした。DJは驚きながらも、ちゃんとリクエスト曲を流してくれた。フーシの静かだけど充実した世界に触れ、シェヴンもまんざらではなさそう。フーシ、独身生活からいよいよ卒業かと思いきや、彼女は誰にも言えない秘密を隠していたことが分かる。

 シェヴンが隠していた秘密、それは彼女がメンヘラ系の人だということ。明るいときは誰とでも陽気に接するシェヴンだが、ささいなことで自己嫌悪に陥り、うつ状態になってしまう。自宅に篭ってしまい、仲良くなったフーシが声を掛けても返事をしなくなってしまう。女性との交際経験のないフーシは、心の病に悩む彼女とどう付き合えばいいのかという、よりハードルの高い難題に直面する。でも、ナイーブな心を持つフーシは、他人のナイーブな問題にも理解力があった。傷ついた捨て猫に接するように、フーシはありったけの愛情をシェヴンに注ぐ。人間はときどき自分のことよりも、他人のためのほうがより一生懸命になれることがある。

 非モテ系男性視点のラブコメにスティーヴ・カレル主演作『40歳の童貞男』(05)があるが、本作はそれともまた異なるエンディングが待っている。ハリウッド製のラブコメはハッピーエンドで気持ちよく終わることが王道であり、本作もハリウッドで作られていたら、最後は心の病から立ち直ったシェヴンとフーシがめでたく結ばれるシーンで幕を閉じることだろう。でも本作のエンディングはもっと現実的なものとなっている。なんだバッドエンディングかよと思うのは早とちりだ。『電車男』や『40歳の童貞男』とも異なる現実味のあるエンディングゆえに、本作を最後まで観た人たちはもっと現実的に勇気づけられるものとなっている。氷の国・アイスランドで生まれた大男フーシのハートは、万年雪を溶かしてしまう温泉のようにポカポカと温かい。
(文=長野辰次)

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『好きにならずにいられない』
監督・脚本/ダーグル・カウリ 出演/グンナル・ヨンソン、リムル・クリスチャンスドッティル、シガージョン・キャルタンソン、マーグレット・ヘルガ・ヨハンスドッティル、アルナル・ヨンソン、フランチスカ・ガグスドッティル 
配給/マジックアワー R15 6月18日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
(c)Rasmus Videbaek
http://www.magichour.co.jp/fusi

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