『電車男』『40歳の童貞男』とは異なるオタク系オヤジのリアルな恋の行方『好きにならずにいられない』

1606_fusi01.jpgジオラマづくりが趣味のフーシ(グンナル・ヨンソン)。彼が優しい心の持ち主であることは、近所の子どもたちしか知らない。

 オタクな独身男性にとって、かなり気になる映画がアイスランドからやってきた。映画『好きにならずにいられない』の主人公は43歳で独身(童貞)。趣味はジオラマづくりに、ラジコンカーの操縦という根っからのオタク気質で、体重は100kg以上ある超メタボ体型。ずいぶんオデコも広くなっている。すっかり恋愛も結婚することも諦めていたところ、容姿を気にしない女性と出会い、俄然ハッスルしてしまう。恋に不器用な中年オタクは、人生最後のチャンス(?)を叶えることができるのか? そりゃ、できれば恋はしたい。でも、今のオタクライフを改めるのは難しい。そんなオタク心理のツボを突く、リアルなドラマが極北の島国で繰り広げられる。

 アイスランドで作られた本作は、今の日本ではまず作られない映画だと断定できる。オタク男子が勇気を出して高嶺の花に交際を申し込むストーリーといえば、山田孝之&中谷美紀が主演したヒット映画『電車男』(2005年)を思い出すが、今でこそ性格俳優のポジションにいる山田孝之だが、その頃の彼は若手イケメン枠の人気俳優だった。当時の山田孝之は青春ドラマで爽やかな若者役ばかりオファーされることにうんざりしていたと後に語っているが、二枚目という天からの資質を与えられた男がいくらオタク系の非モテキャラを熱演しても、非モテ人生を歩んできた者の心はまるで動かされない。日本の映画界は企画内容よりも人気俳優をキャスティングできるかどうかに比重が置かれているため、本作のようなリアルな非モテ系の役者が主演を張ることはない。強いて本作にテイストが近い作品を挙げれば、藤田容介監督の『全然大丈夫』(08年)か『福福荘の福ちゃん』(14年)だろう。ルックスに難があり、臆病になっていた主人公がそれでもひたむきにひとりの女性に愛情を注ぐ。そんな姿に北欧の人たちは心を揺さぶられ、『好きにならずにいられない』は、北欧で最大の映画賞「ノルディック映画賞」に輝いている。

 主人公のフーシ(グンナル・ヨンソン)は社交性は全然ないが、ジオラマづくりなど手先が器用で、マジメな性格。勤務先であるレイキャビクの空港で荷物係として黙々と働いている。毎週金曜の晩には行きつけのタイ料理店にひとりで出掛け、パッタイ(タイ風焼きそば)を注文。帰りはお気に入りのラジオ番組に、大好きなヘビメタ曲をリクエストするのが楽しみ。DJにもすっかり名前を覚えられている。そんな独身生活に特に不満を持つことなく暮らしていた。

 ところが無風状態のフーシの生活に突如変化が起きる。一緒に暮らしているシングルマザーの母親に最近新しい恋人ができたため、家に居づらくなってきた。フーシの誕生日に母親とその彼氏はダンス教室の回数券をプレゼントする。そこには、“家でジオラマばかり作っていないで、ダンス教室で交際相手を見つけてこい、そして早々に家を出ろ”という無言のメッセージが込められていた。渋々とダンス教室に向かうフーシだが、教室を覗くと生徒たちにはそれぞれダンス相手がすでにいる状態。そんな中にノソノソと入っていければ、苦労はしない。

 仕方なくダンス教室が終わる時間まで車の中で過ごしていると、窓をノックする影があった。外は猛吹雪で、ダンス教室にひとりで通っていたシェヴン(リムル・クリスチャンスドッティル)が「家は近くだけど、怖いから送ってくれないか」と頼んできた。母親以外の女性から話し掛けられたのは何年ぶりだろう。車中の会話でフーシが内気な性格であることに気づいたシェヴンは、「来週もダンス教室においでよ。私が相手をするから。今日のお礼よ」と別れ際に告げる。死ぬまでずっとひとり身で生きていくと思っていたフーシの心に明るい灯りが点いた瞬間だった。

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