ようやく筆者も本を買いに行くことができそうだ。縞野やえ(画)/MB(企画協力)『服を着るならこんなふうに』第1巻(角川書店)は、ストーリーマンガの形で服を買いに行く服がない人に、服の選び方を教えてくれる作品である。
企画協力のMBという人物は、ファッションバイヤー兼ブロガーだという。まず、本書を読んだ後に、この人物が運営するサイト「KnowerMag」にアクセスしてみたら、驚いた。
ほぼ日刊ペースで、安くセンスのいいファッションに変身する方法が、平易な文章で記されているのだ。中でも「全身ユニクロの服装をたった数千円で『ユナイテッドアローズで買ったスタイル』にランクアップして見せる方法」というタイトルの記事は、さっそく実践してみたくなった。
この手の○○をしたら人生が変わる系の情報サイトというのは、結構な割合で胡散臭さが隠しきれないもの。でも、このサイトは「俺もやってみたから、お前もやろうぜ」の絶妙な空気感を感じてしまった。そうしたサイトの運営者が協力しているからだろう。メンズファッションに特化して、おしゃれの基本を教えてくれる、この作品は極めてわかりやすい。おまけに、金額的にもすぐに挑戦できそうなのが魅力的なのである。
物語の主人公・佐藤は両親が田舎に引っ込んだため妹の環とふたり暮らしの27歳。普段は、爽やかで真面目なサラリーマンなのだが、そのファッションセンスだけは壊滅的であった。そんな彼が自分のヤバさに気づいたのは、小学校の同窓会の打ち合わせで旧友たちと会った時。自分だけ「コンビニに行くみたいな服」だったことに気づいた佐藤に、環は的確なアドバイスをする。
いわく「高いものを買えば格好よくなるわけじゃない」「大事なのはコーディネート」「基本を知れば何も怖くはない」。
こうして始まる佐藤のオシャレの基本は、ユニクロからスタート。そう、この作品は、ブランド物やら何やらを買わせようと煽る作品ではない。あくまで、読者が今すぐにでも実践できるレベルでファッションを一から教えてくれるのである。
そんなユニクロで最初に購入するのは、スキニーフィットテーパードジーンズ。これ「上がブカブカでもバランス良くみえる」というマストアイテム。ここで、この作品はリアルに役立ちそうだと理解した。なぜなら筆者は、このジーンズがあらゆる場面を無難にこなせるアイテムだと気づき、すでに10本近く所有しているからである……。スーツ必須以外のだいたいの場面は、これにジャケットでも羽織っておけば、馬子にも衣装になります、ハイ。
そして、この作品はオシャレ=派手ではないことも教えてくれる。瞬く間にオシャレに目覚めた佐藤に、環はさらなるアドバイスをする。「白と黒それが一番大人っぽい色なんだよ」と。なるほど、世間ではキモヲタは何かと黒を身につけて毎日が葬式かよという具合に笑っているという論調がある。けれども、問題は色じゃなない別の部分だったのだ。
こうしてマニュアル的に、ファッションの基礎を教えてくれる本作。さらに、読者をやる気にさせるのは、佐藤がちょっとユニクロで服を買ったりしただけなのに、同窓会では一目置かれる存在になる展開がやってくることだ。
現実に、そのような変化があるだろうか。いや、服を変えれば気分も変える。だから、物語の中で描かれていることを、そのまま真似して実践してもいいのではないだろうかと、思った。
(文=是枝了以)
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