頒布は5冊、だけど幸せ…初心者が同人活動を始めてみると…【イベント参加編】

 出すまでに一番大変だったのは同人誌の内容そのものを作ることよりも、印刷所の設定通りに本の体裁を整え、注文する作業だった。印刷所のホームページを見ると、「不備が多いので気をつけてください」という表記をよく見かけ、ずいぶんうっかりしている人もいるものだと思っていた。しかしいざ自分でやってみると、悪気がなくても不備を出しかねないと思うくらい、初心者には「?」の連続だ。“オン専”の人がオフデビューを果たしたいと思うなら、

「印刷所のホームページを熟読し、わからなければYahoo知恵袋でなど聞かず印刷所に問い合わせる」
「何かあったときに備え、締切日より3日前には入稿」
「はじめは少部数」

 の三点をしつこく強調したい。あと、前回「サークルカット」を書いているときに「今まさに私は同人活動をしている!」とお約束感がうれしかったのだが、今回「奥付(発行日、作者の名前、連絡先などを記載する、本の最後にあるページ)」を作っているときにも同様の感動があった。ちなみに奥付は本の責任の所在を明確にするために、私が利用した印刷所では必ず入れるようにと指定されていた(入れないと不備扱いになる)。奥付のない同人誌は見たことがないため、ほとんどの印刷所で徹底しているのだろう。

■ぼっち同人のイベント参加の必須アイテムは「暇つぶしグッズ」

 イベント当日。イベントは他サークルとの交流の機会! と楽しみにしている人も多い。しかしこちらはぼっちゆえに「あまり早く準備が終わっても暇なだけだろう」と直前に会場入りして、ささっと準備をして開会となった(ただこれは交通機関の遅れなどがあったら一発アウトなのでお勧めしない)。会場の中で聞く開会宣言のアナウンス。拍手をして、お祭り気分も上がってくる。

 両隣は開会直後から人が来て、その後も1~2分に1冊のペースと、順調に頒布している。一方ぴたりとも動かない私のスペース。両隣は売り子もいて、片側の隣に至っては私自身買ったこともあるサークルだ。実績のある両隣と自分を比べるなど恐れ多いことだと思いつつ、こういう状況が続くと堪えてくる。用意してきたおつり(重い)を使わずに終わるのだろうか、暇なのでスマホをいじっていようかと思うもののそれも暗いし、かといって前を向いてニコニコしている気力もどんどん削がれてくるし、だいたい悲しいのに無理にニコニコしていたって白々しい。私のテーブルの少し前で「あれ、どこだったかな」と面持ちでサークル地図を見て、「あ! 見つけた!」とぱっと笑顔で隣のサークルに向かっていく人が数人いて、私自身それはよくやってしまうので(大量のサークルが参加しているため、今自分がどこにいるかが非常にわかりにくいのだ)悪気はないのは心底わかるが、ガクッと来た。

 開会から20分。泣きが8%くらい入っていると「こちら、ください」の声がして見上げると笑顔の女性。立ち上がり本を渡し、うわずった声で「ありがとうございます」と伝えて一礼。椅子に座り直す。

 はじめて頒布した。胸に去来した思いは「あの女性に3億円が当たりますように」だった。0と1の間の差は天国と地獄だ。相変わらず両隣は順調だが、もう私にはあの人がいるから大丈夫! と気にならなくなる。うれしいだろうとは思っていたが、こんなにうれしいと思わなかった。さらに別の方からはお手紙までいただいてしまったのだ。もったいなくてしばらく開けなかった。私が死んだらこの手紙を棺桶に入れてほしい。記事のタイトル通り、トータルの頒布冊数は5冊だったのだが、「悪くない人生だった」くらいに思えた一日だった。今後人生で嫌なことがあったらこの日のことを思い出そう、というくらい励みになった。

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