同人誌の売り上げを気にするヤツは死ねばいいと思った……『サンデーまんがカレッジ つくろう!同人誌』

【日刊サイゾーより】

 今回、紹介するに当たって再読して、あらためて内容の素晴らしさに気づいた。

 『サンデーまんがカレッジ つくろう!同人誌』。タイトルの通り「少年サンデー」編集部による同人誌の作り方をまとめたマニュアル本である。この本が出版された1980年代前半「少年サンデー」が「同人誌グランプリ」なんて企画をやってたのも、今から考えるとすごいことだが、それはさておき、中で記されている内容は現代でも通用することばかり。いや、今から同人誌を作ってみようかという人は、読んでおいて損のない内容である。

 さくまあきらが構成を担当しているこの本。当時の人気作家より石ノ森章太郎新谷かおる高橋留美子岡崎つぐおの4人が同人誌時代を語った上で、実際の制作のレクチャーへと入っていく構成だ。

 大人気の漫画家たちも同人誌をやっていた! イコール、同人誌はプロデビューへもつながる可能性を秘めている! という夢のある構成だ。

 というわけで、夢を膨らませながらページを読み進めていくと……同人誌の第一歩として記されているのは「まずは会員を集めよう」というもの。これは、注目すべきポイントである。今でこそ、個人サークルなんて当たり前になっているけれど、当時は同人誌というのは仲間同士で集まって制作するのが当たり前だったということが見て取れる。なにせ、1行目に「同人誌をはじめるには、まず会員を集めなければなりません」と書かれているくらいだし。

 そして、読者層を10代前半あたりに設定しているのか、仲間集めに関する説明がとても丁寧だ。仲間を集める方法としては、雑誌読者欄への投稿が一番早い方法として懇切丁寧に説明されている。さらに、注意事項の説明も微に入り細に入っている。中でも「(雑誌に募集告知する場合)しっかりした書き方をしないと、あっという間に200人以上もの入会希望者が集まってしまうので、注意しないと大変なことになってしまいます」という一文は見事だ。なにせ、夢を持たせながらも「サークルの方向性はちゃんと決めないとグダグダになっちゃうよ」と教えているわけなんだから。注意事項では、募集する人の年齢もちゃんと考えるようアドバイスがなされている。ちょっと引用してみよう。

「せっかく募集しても、入会希望者が5歳も6歳も年上ばかりでは、会の運営はなかなかうまくいきません。できれば、何歳以下の人を募集中と、明記したいものです」

 どうだろう。ここで書かれた内容を実践して出来上がるサークルは、かなり「本気度」の高いものではなかろうか。ネタでマニュアルっぽく書いているのではなく、文章の端々から、ぜひサークルを設立してうまくいってもらいたいという執筆者の願いが見えてくる。

 これらの記述から見えてくるのは、ここで目指されている同人誌が現在とはかなり異なるということ。会員集めに続いて原稿の書き方、スケジュールの立て方などを解説したあと、「会員紹介のページをどうするか」という項目が設けられていることからも、それは明らかだ。ここで執筆者は多くの文字数を割いて会員紹介の大切さを記す。

「同人誌を読んでいて、この本はいいなあと感じるときは、作品の出来はもちろんですが、会員紹介のページの良し悪しが左右することが多いのです。会員紹介のページが楽しそうで、ていねいに作ってある本は、まずいい本と思って間違いないようです。同人誌というと、どうしてもひとりよがりな作品が、掲載されている場合が多いものです。このような作品が、多く掲載されている本にかぎって、会員紹介のページがなかったり、あったとしても非常に冷たさを感じるページになってしまっているから不思議です。また、同人誌のなかには、絵はうまくないけれど、読んでいてあたたかみを感じる作品が多い本があります。各作家が一生けん命やって、チームワークもいいなあと感じる本もあります。こういう本の場合、必ず会員紹介のページがおもしろいのです」

 この記述は、大上段に構えることなく同人誌がどういうものかを示している。同人誌とは本来、コミュニケーションのツールである。同人誌を通じて仲間と研鑽し合うこともできるし、即売会に参加することで同好の士や、いまだ見ぬ仲間との出会いも無数にある。実のところ、人気があるとか売れるとかは同人誌においては、あまり重要な要素ではない。「同人誌とは何か!」みたいに肩肘張って書き記すのではなく、「うまいヘタとか別にして、仲間と一緒にやったほうが楽しいでしょ」と優しく教えてくれる点で、この本の価値は高い。

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