【今月の不健全図書レビュー】『女装クロギャルママ男子』タイトルからしてツッコミどころ満載！

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――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない！　このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング（群衆による資金調達）ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー（群衆による批評）、はじまり、はじまり～！

『女装クロギャルママ男子』 (著：十はやみ/ジュネットコミックス ピアスシリーズ)

【今月の指定図書】
　今月の指定図書が発表されてから注目を集めているのが、まず作者名が読めないという奇書。十はやみ先生の『女装クロギャルママ男子』（マガジン・マガジン）。

“じゅうはやみ”か“とうはやみ”だと思っていたら“もぎきはやみ”だそうです、ハイ。作者名も目を引きますが、タイトルがすごすぎる。だって、女装でクロギャルでママって……寿司と焼き肉を一緒に食べているような美味しさです。なお、本サイトで“女装もの”のレビューといえばビーラー・ホラ氏が担当のハズですが、「前立腺の存在意義に悩んでいて書けない」と言われたそうなので、筆者にお鉢が回ってきました。さて、作者の十はやみ先生ですが、今回の不健全図書指定を知ってTwitterで次のように書いています。

有害図書となった女装クロギャルママ男子！女装で黒ギャルでママとは何なのか？性的感情を刺激するのかしないのか？絵はどれだけ下手なのか？真実はAmazonから消される前に君の目で確かめてくれ！

（十はやみのTwitter[@mgk6455]より引用）

　Amazonから消されたら「e-hon」（トーハンが運営）で注文しましょう。自宅に届くとヤバい人は書店での受け取りも可能です。
　
　はてさて、不健全図書指定にあたって自分の目で本書を確かめた委員たちはどういう感想を持ったのか、見ていくことにしましょう。

（以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用）

　十はやみセンセは元来エロ畑の方で、今回は初のBL作品です。pixivに公開されている作品を見ると、シーメールに次ぐシーメール。相当な変態であることは間違いありません。

　今回の単行本は、誰もチンポやケツハメに躊躇しない短編集。両親が離婚して都会から田舎に転校してきたクールなイケメン。彼が母親の愛に飢えていることを知った田舎の方言男子は、「俺がお母さんになっちゃる」とお姉ちゃんの制服を着て登場。息子の悪いムスコの世話をして肛門という愛で包み込む――というのが、表題作のストーリーです。

　ほかにも、一緒に暮らす父親と兄は男好きなド変態。そんな家族をイケメンな先輩に見せたくない主人公・カスミちゃん（男ですッ！）は、先輩が家に来ている間は留守にしてくれと、父と兄に懇願するが――という「お父さんは見た!!カスミちゃんのごっくん初体験」など、ネタのぶっ飛び加減が激しいです。

“指定該当”という意見も【コミカルな内容ではある】と物語自体は否定しません……というか、楽しんでいるようにも思えます。それでも問題にしているのは性器の修正。【性描写での性器部分の修正が甘い】【性交描写の多さ、言葉、体液描写、擬音など卑わいな表現が随所にみられる】という意見が多数見られます。

　確かに修正は甘いです。十はやみ先生は、相当チンポを描き込むのに魂を注ぐ変態なのでしょう、pixivの作品を見ると心配になるくらい描いております。おまけに汁も多いし、書き文字で「ぐっちゅぐっちゅ」「ちゅこちゅこ」と、BLなんですけど男性の性感をも刺激するような上手い描き方をしているんです。

“保留”とする意見では【男性器の修正の描き方がかえって卑わい感がある。体液描写も多く、刺激的であるが著しく卑わい感があるとは言えず、判断が難しい】というコメント。どうも読んでいる本人が「これで興奮している自分」を信じたくないのでは？　とも深読みできます。一方で、同じく“保留”の意見では【卑わいには感じず、絵も下手である】との声も。なんだ、このメディアリテラシー教育の見本みたいな百家争鳴は。

　まあ、大多数の人にとっては、なんでマークをつけなかったのか、疑問に感じるほどエロスを換気する作品であることは否めません。なんで、“指定非該当”とする意見も弱腰です。【マニア向けの内容であり多くの青少年の性的感情を著しく刺激するものとは思えない】【このジャンルが一般の青少年の性的感情を著しく刺激するとは思えない】。

　ともあれ、これから気になるのは出版社・書店の対応ですね。4月に指定された座裏屋蘭丸氏の『PET契約』（リブレ出版）は、一部書店では限定ペーパー付きで大量入荷して「18禁になったよ！」と売りまくってました。ぜひぜひ、このぶっ飛んだエロスの世界を多くの人が堪能すべきでしょう。そうそう、5月指定の某人気作品ですが、版元在庫は裁断しちゃったそうなので購入はお早めに！
（文／昼間 たかし）

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/660/660siryou2.pdf