【今月の不健全図書レビュー】指定非該当が多数。それでも指定される! みこくのほまれ『八重歯のまりあちゃん』

――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない! このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング(群衆による資金調達)ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー(群衆による批評)、はじまり、はじまり~!

【今月の指定図書】

 今月の指定図書数は1冊。4月に青少年課の課長が交代してから指定数が、減少傾向にあるような気もするのですが、気のせいでしょうか。そんな今月の指定図書は、みこくのほまれ『八重歯のまりあちゃん』(コアマガジン)。4月に指定された『まりあちゃんのつぼみ』の作者が描く「まりあちゃん」シリーズから単行本未収録作を選んだものです。

 どう考えても、いよいよ指定に値する雑誌・単行本が「不作」だったために<4月にも指定した作者の同一シリーズだから、これを選んでおこう>という東京都側の無理矢理感がにじみ出る指定です。そんな指定には、ちゃんと異議を唱える人もいるわけです。

(以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用)

 今回、打ち合わせ会での自主規制団体からの聞き取り結果では、指定該当:5、保留:1、指定非該当:9と、指定非該当が多数という結果が出ました。

 指定該当とする意見では【修正はされているが、性描写が多く】【ほぼ全編にわたり性交シーン】と、エッチシーンが多いことが理由として挙げられています。しかし、淫靡な感じがするかといえば、ちょっと疑問です。また、本作は2000年代前半の連載作品。ゆえに、絵柄が若く少々時代を感じさせる部分もあります。すなわち、当時ならともかく現代の青少年が読んで衝動的に犯罪を犯してしまうようなエロではないように見えます。

 それに、そもそもの掲載誌がコンビニ売りもされる「漫画ばんがいち」(コアマガジン)。エッチシーンを描いても、エロよりも萌え要素が強い作品なのです。

 指定非該当という意見は、それらの点をしっかりと理解しています。【絵がリアルでないため、卑わい感は感じない】【コミカルな内容で人格を否定するものでもなく、卑わいさはそれほど感じられない】と、多くの意見では、作品が「エロくない!」と主張するのです。さらには【どちらかといえばキャラ萌えを狙った作品であり、性的感情を著しく刺激するとは考えにくい】【顔と体がアンバランスなうえに身体の描き方に卑わいさを感じない】といった具体的な刺激も。ここまで「エロくない!」と主張されると作者としては、複雑な気もしますけど……。

 でも、例え打ち合わせ会で指定非該当意見が多数でも、実際に指定するか否かを採決する東京都青少年健全育成審議会では、ひっくり返されちゃうのです。なぜから、絶対に指定に賛成する委員のほうが多数を占める構図なんですから。これぞまさに、制度的欠陥というものでしょう。

 作品自体は、ほんわか幸せな気分になれますから、この指定に怒りを感じる人は、ぜひ買ってみるとよいですよ。
(文=昼間たかし http://t-hiruma.jp/

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pdf/09_singi/674/674siryou2.pdf

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