【不健全図書レビュー】『淫夢教師、飼育解禁。』「男性器のぼかし方は、蛍が飛んでいる様」詩的な表現でツッコまれたBL

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――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない！　このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング（群衆による資金調達）ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー（群衆による批評）、はじまり、はじまり～！

『淫夢教師、飼育解禁。』(拝崎めじろ/マガジン・マガジン)

【今月の指定図書】
　BL枠での不健全図書指定の常連出版社が、今回（2015年7月）も指定に。灰崎めじろ『淫夢教師、飼育解禁。』です。でも常連出版社のはずなのに、過去1年間では初の指定です。ええ、どういうことかといえば、この単行本は発行元がサン・メディアレップで、発売元がマガジン・マガジンなんです。条例では過去一年間に通算六回指定されると、知事が社名公表するなど、レベルアップします。過去、実際に公表された会社はありませんが、その理由は、ヤバそうになったらグループ内の別会社に発行元を切り替えるなどしているからです。果たして発行元と発売元を分けたのも、これが理由なのか？　あるいは経営の都合なのかは、よくわかりません。いずれにしても、いくら指定を喰らおうとも過激な表現で挑戦し続けるのが、ジュネットコミックスレーベルのスタンスのようです。

（以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用）

　さてさて、このレーベルの作品は男×男が描かれているだけで、基本は男性向けのエロマンガと変わりません。違いがあるとすれば、男性向けは読者を勃起させるのが目的。対して、この本はBLだから読者を濡らすのが目的、ということくらいでしょうか。ゆえに、“指定該当”を主張する意見には厳しいものがあります。【男性器のぼかし方は、蛍が飛んでいる様であり、一部卑わい感が強い絵もあり、体液・擬音が多すぎる】。なるほど、「蛍が飛んでいる」とは、とても素敵な表現ですね。でも、この人、【体液の描き方は気持ちが悪い】と、個人的な好みまでさらけ出しています。ある程度、エロマンガになれたら過激で汚いほうが興奮する人もいるんですよ！　【性器及び性的行為の描写が、部分的には辛うじて、ぼかしが入れられているものの、総じて、露骨な印象を免れるものとはいえず、卑わい感も強い】という意見も、的外れとはいえません。だって、実際に読んでみても、ストーリーよりもヤッてるシーンばかりが目に入るんですから。

　そして、BLに対する理解度もさまざまであることが、こうした意見からは見えてきます。【男性同士のマニアックな内容。ただし、本作は体液など、露骨な描写が多く、性別を問わず、卑わい感が強い】とBLだと理解した上で“指定該当”意見を述べている人がいる一方で、【BL系はいつも判断に迷うが】と正直に前置きする人も。でも、過去の資料を見ると、いつも同じ人が「いつも判断に迷う」といっているような……。ちょっとは学習したほうがよいのではありませんか？

　これに対して、“指定非該当”という意見は、今回ばかりは無理めな印象です。【この程度は許されると思う】【耽美作品であり、一般的な読者向けではない】として“指定非該当”とする意見は、どう考えても無理矢理な感じが否めません。【いわゆるBLものであり、著しく一般の青少年の性的感情を刺激することがないのは自明】なんて、「アンタ、BLを読んだことないんじゃありませんか？」と思ってしまいます。

　改めて感じるのは……、やっぱりBLも18禁マークをつけて区分したほうがよいのではないか、ということでありました。
（文／ビーラー・ホラ）

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/661/661siryou2.pdf