『ポーション、わが身を助ける』頑張るヒロインが心底かわいいライトノベル !まさしく「ニューヒロイン誕生」!!

 多くの作者が未来を夢見て小説を投稿するサイト「小説家になろう」で人気を呼んだ作品『ポーション、わが身を助ける』が、大幅加筆して刊行。飽和状態のライトノベルにあって、発売前から重版決定というから版元・主婦の友社も相当気合を入れた作品です。

 イラストレーター・戸部淑氏が手がける表紙は、ほのぼのして安心感があります。そして、カバーに書かれた作者紹介は……

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岩船晶
北海道在住。本作でデビュー。

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 デビュー作の自己紹介となると、多くの作家が文字数の許す限り感謝の念を書いたり、自己アピールをするものですが、なんとシンプルな自己紹介。この、近年まれにみる控えめな感じが好感を呼びます。作者が四の五の言うよりも作品で評価してほしい、という覚悟のほどが伺えます。まさにプロ! 期待して読みたいです。

 物語は、普通の女子校生・カエデがファンタジーな異世界にスリップしてから始まります。プロローグの一行目から、すでに異世界。本当に突然、紺色のセーラー服にリュックサックだけを持って、異世界に飛ばされてしまうのです。少女がひとり、それもセーラー服姿で! 可哀想すぎる展開ですが、カエデはとても頑張り屋でした。

 リュックサックの中には、見知らぬ本。そこには「パウロ」という人物から「あなたは私のわがままで選ばれました。ゲームのように楽しんでください」という書き込みが。本に記された「ポーションの作り方」通り、材料を集めて、その本を片手に「生成」と唱えれば、ポーションが出来上がります。

 ポーションを街で売って、お金に換えて……本当にゲームのようですが、カエデにとってはすべてが大冒険。魔法石屋に入ったらポーションを買い取るのは薬屋だと告げられ、薬屋で買い取ってもらう際に「ひとつ、8タミルでどうだ?」と言われても、相場がわからない。それでも、安いパン屋や宿屋の場所を教えてくれたり、基本的にこの世界の住民は親切です。

 右も左もわからないけど、とにかく頑張る楓が心底かわいい。右も左もわからないから、とにかく危なっかしい。でも、その危なっかしさを見捨てておけないのは、読者だけでなく、物語の世界の住人たちも一緒です。だから、カエデには妖精や冒険者といった仲間もできて、物語はドラゴンと戦ったりする冒険譚へと展開します。

 オビに書かれた「ニューヒロイン誕生」。本当にその通り! 厳しい読者なら「いくらなんでも、ご都合主義的」と思うかもしれません。けれど、さまざまな出会いを積み重ねながら成長していくカエデを本当に応援したくなる一冊です。

 また、本書の最後のページでは

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『ポーション、わが身を助ける2』へつづく

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 で、おしまい。後書きもなく、奥付があるだけ。とことん奥ゆかしい……“作品で勝負する”という気概の著者・岩船氏です。本作『ポーション、わが身を助ける』は、現在も「小説家になろう」でさまざまなエピソードを掲載中ですが、せっかくなので続きが刊行されるのを待ちたいと思います。
(文/大居 候)

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