祝!宝塚100周年企画 ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」第4回

真琴つばさ様の歌う「シナーマン」にヅカの真髄である穢れなき宗教性を学ぶ

――宝塚ヲタの女医、wojo(ヲジョ)が宝塚の名曲を皆様にご紹介! ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」!!

【第4回】
『ノバ・ボサ・ノバ』「シナーマン」
原曲は、アメリカのジャズシンガー、ニーナ・シモンが65年に発表したアルバム『Pastel Blues』に収録されている1曲「Sinnerman」。宝塚では、71年に初演されたショー『ノバ・ボサ・ノバ』において「シナーマン」として披露された。アップテンポなリズムが続く、ハードな楽曲である。

 宝塚ファンの女医、wojo(ヲジョ)です。

 いよいよ年の瀬ですが、今年もいろいろなことがありましたね。選挙とか、医者として決して他人事ではない小保方さん騒動とかいろいろあったのでお忘れの方も多いと思うのですが、6月にはサッカーのワールドカップが開催され、ブラジルがその開催地として注目されましたね。しかし宝塚ファンとしてブラジルといえば、サッカーよりはショー『ノバ・ボサ・ノバ』です。めくるめく灼熱のカーニバル……宝塚とブラジルは、意外と相性がいいみたいです。

『ノバ・ボサ・ノバ』は、奇才といわれた伝説の演出家・鴨川清作による作品で、初演は1971年。76年の再演時には、文化庁芸術祭優秀賞を受賞しています。wojoが宝塚ファンになった90年代初頭には“奇跡のショー”として語り継がれているのみでしたが、99年に轟悠さんの雪組、次いで真琴つばささんの月組にて上演され、幸運なことにwojoは、劇場にて観ることができました。最近では星組の柚希礼音さんも熱演されましたね。義賊であるソールの恋物語を中心に、宗教や人種、性別、職業や階級などといった現代社会の「ささいな」属性を、サンバのリズムに乗せながら、シニカルな視点を織り交ぜつつリオのカーニバルの中に昇華させていく……といった内容です。

 賑やかなカーニバルの一方で哀しい死もあり、わずか1時間弱のショーながら、気持ちが揺り動かされ続けます。羽根やピンクのドレスが出てくるレビュー(演目)などのいわゆる宝塚らしさとは一線を画する作品ですが、小さいおじさん(=娘役が男装)たちと長身の女性(=男役が女装)たちのカップルによるコミカルな踊りなど、宝塚でなければできないであろう興味深い場面が随所にちりばめられています。

『ノバ・ボサ・ノバ』の中でも、特に伝説化している曲が「シナーマン」。主人公のソールが、カーニバルが終わり、身分違いの恋に落ちた白人令嬢のエストレーラに別れを告げられた後、歌い踊ります。

「おお どこへいく 歌を忘れ
 どこへいく 歌を捨てて どこへ行くんだ……」

 トップスター演じるソール以外は皆、同じ鳥の衣装で激しく踊り、その中心でソールは神のような存在に……。宝塚のショーにおいては、トップスターが神を思わせるような衣装、歌、存在で歌い踊ることがたまにありますが、その最たる例がこの「シナーマン」であるように思います。「シナーマン」とは「罪人」。善悪を含めた人間の営みのすべてを浄化しながら、ショーの幕は降ります。日々、病棟や外来で看護師さんや他科の医師らにギャーギャー文句を言いながら仕事をしている自分がいかに小さい人間なのか、ふと省みてしまいます……。

 原曲は、アメリカのジャズシンガーであるニーナ・シモンによる「Sinnerman」。彼女の65年のアルバム『Pastel Blues』に収録されている1曲。99年に公開されたアメリカの映画『トーマス・クラウン・アフェアー』でも使用されていた、10分以上にわたる長い曲です。人間の原罪がテーマとなっている重厚感のある歌詞なのですが、宝塚バージョンの日本語版「シナーマン」にも、そうした歌詞のニュアンスは引き継がれています。

 原曲を歌ったニーナさんは、まさか宝塚のショーで使われるとは予想だにしていなかったと思うのですが、とにかくアップテンポな曲で、クソ真面目の宝塚なこと、そのリズムにものすごく忠実に振り付けがされているので、観ていてとてもハードそう……。舞台の端から端にいたるまで、どなたも! 

 しかし、こんなハードな舞台を作り上げておられるタカラジェンヌの皆さまからのパワーを全身全霊で受け止め、観劇後はまるで、伊勢神宮でおはらいをしていただいたあとのような清々しい爽快感………! ああ、ありがたやありがたや……。少し前、ジャニーズに宿る宗教性について分析した雑誌記事を読みましたが(「月刊サイゾー」2014年8月号、P90~93)、宝塚にも同じことがいえるなーと、そう思った次第であります。

 ダンスや歌、コメディセンスが求められ、技術的にも難易度が高いショーであるゆえ、宝塚での再演の機会はそうそうないようなのが残念なところ。しかし、まさしく宝塚の神髄・カタルシスがビシビシ感じられるので、自分の穢れが気になるときなど、DVDを引っ張りだして無性に観たくなる作品です。ビバビバ、サンバー!

wojo(ヲジョ)
都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当科は内科、宝塚のほうの担当組は月組。先日、宝塚歌劇団内にある、部外者は進入禁止の秘密の食堂「すみれキッチン」のメニューを載せた書籍『愛と青春のすみれキッチン』(祥伝社)を入手しました。たまごを使った料理が多いこと、甘い飲み物が多いことに驚かされました。タカラジェンヌの皆さまは、こうした高カロリーなものをしっかり摂取され、あのような舞台を作り上げておられるのですね。医者としては、ジェンヌさまたちの血糖、HbA1c、悪玉コレステロール、中性脂肪の値が少し心配にはなりましたが……。

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