『機械人形 ナナミちゃん』マンガ家・木星在住インタビュー「何かを喋るんだったら、マンガのコンテンツで喋りたい」

――ここまでのお話で得た印象ですが、本当に脇目もふらずにマンガを描いているのですね。

木星 そのスタートがここまで遅いのが自分でも笑っちゃいますが。遅いからこそ価値を感じています。早かったら、「遊びたかった」とか「もう疲れた」とか、色々変なことを思いついちゃったかもしれません。でも、30歳で掴んだチャンスですから死んでも離したくない。だから、描かせてもらえることを、ものすごく楽しんで大事にして描いています。

――一日、何時間くらい執筆していますか?

木星 一週間で12ページを目標にしていますが、実際には7~10日かかっています。それをこなすには、一日最低でも8時間以上は描いています。土日も基本休みなしです。

――ほかの時間も、「マンガをどうしようか」と考えて終わっているのではありませんか。

木星 そうですね。マンガ以外も大事にしようと思っています。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)でアシスタントをしていたことがあるんですが、週刊連載で「スピリッツ」ですから、皆さん自分の経験を積むために、さまざまな経験をされていたんですよね。自分で描く対象を経験して……だから、自分も、マンガ以外で芸の肥やしになることをやりたいなと心がけています。

 海外旅行が好きで、バックパッカーみたいなこともしていたんですが、その時に感じたことも、今回の作品に反映されているんですよね。たとえば、国によってルールというものはまったく違います。機械人形が出来た経緯は次巻以降で説明していく予定ですが、みんな「あり得ない」というかもしれません。でも、インドのように牛や豚を食べてはいけない国だってあるし、ネパールでは週に一度はストライキがあって、その時には車やバイクに乗っているのもダメなのが当たり前のルールになっていたりします。日本だって、世界から見るとあり得ないルールはたくさんあります。そうしたルールの違いがものすごく好きで、そうした経験を作品に生かしていこうかと思っています。



 インタビューの中で感じたのは木星在住氏の、マンガを描くためには、ほかのものを捨ててもよいという覚悟であった。マンガに限らず、さまざまな創作の現場において、生活や自分の不幸など種々の理由を挙げて、創作に使うべきリソースを無駄にし続ける者がいる。自分の才能に自信を持ちながらも、認められないことに世を恨み、日々を愚痴に費やす者もいる。そうした中において、彼はインタビューで見せたような饒舌な部分を、ほぼすべてマンガへとつぎ込んでいる。

 そして、掴んだチャンスを決して手放さないという想いも、インタビューからは伝わってきた。彼のスタンスは、創作で身を立てようと志すすべての人の本来あるべき姿なのではないか。そんなことを考えた。
 
 なお、『機械人形ナナミちゃん』は公式サイトほか、マイクロマガジン社のウェブコミック配信サイト「マンガごっちゃ」などでも連載中だ。第1巻で描かれた物語は、どのように展開されていくのか、とても楽しみである。

(取材・文/昼間 たかし)

■木星在住(もくせいざいじゅう)
アシスタント経験を経て2009年頃から同人誌を中心に活動を開始。2014年6月にネットで公開した『機械人形ナナミちゃん』で注目を集め、今回初単行本をリリース。
公式サイト:http://mokusei2.x.fc2.com/

■『機械人形ナナミちゃん』特設サイト
http://mangag.com/comics/nanami/

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