『機械人形 ナナミちゃん』マンガ家・木星在住インタビュー「何かを喋るんだったら、マンガのコンテンツで喋りたい」

――『機械人形ナナミちゃん』の話に戻りますが、現在のマンガ界における主流のキャラクターとは、一線を画しているような印象を受けます。

木星 これまで持ち込みをした出版社でも、「もっと萌え的なものを描いてくれ」と言われることはありました。もし、萌え絵にしたら安パイな作品を描くことができると思います。けれども、それは自分の力の証明をするのが難しいと思います。描いた後に、自分が何を描くことができるのだろうか、と。確かに、今描いている作品は難しい作品だと思います。けれども、最初に話した、自分に何が描けるかを証明するためには、優秀な作品だと思います。

――キャラへの感情移入が、ある程度マンガの素養があるとか人生経験がある人ではないと理解しにくいかもしれません。

木星 今のマンガの流れというのは、キャラクターが裏返ることがあまりないじゃないですか。オタク向けの作品では顕著で、可愛いヒロインが下品なことをするとかもない。見た目のかっこいいヤツがかっこいいのが当たり前です。自分は海外ドラマが好きなんですが、信用していたリーダーが裏切ったり、クズが仲間のために……とか。キャラクターが裏返る展開が数多く見られます。『ドラゴンボール』(集英社)のベジータなんて、キャラの裏返りの典型だと思っています。

 自分の作品では、そうしたキャラクターの裏返りを描きたいし、自分では、そうした物語の展開ができるんだと知りたいと思っています。

――そもそも機械人形を創造する契機となったのは、なんなのでしょうか?

木星 自分はロボットが大好きなんです。中学生の時にずーっと描いていたのですが、それでメシを食うのは難しいんだと気づきました。ロボットだけ描いてメシを食おうと思ったら、サンライズとかバンダイに入って技術を磨いていくから大変だなと思いました。頭も悪いし、大きな会社に入って……というのは難しいとも思いました。

 じゃあ、どうすればいいかと思いついたのが、マンガです。マンガは、一般企業の面接と違って年に何度も持ち込みをすることができる。私はバカだけど行動力があるから、10代の頃から月に一回とか持ち込みをしていました。それで、可愛い女の子とロボットを組み合わせればもっと描けるんじゃないかと思ったんです。

 この作品は、メカが描けるという自分へのご褒美でもあるんです。だから、創造の契機となったのは……ロボットが描きたかったからですね。

(マンガ家の)江川達也さんが、可愛い女の子が描けてメシが食えなくなることはないということを話していたと思いますが、これは本当のことだと思います。私も、作品が評価されるまでは可愛い女の子を描いていかないと思いますね。

――同人誌やエロマンガは、スキルアップにつながったのではありませんか?

木星 そうですね、もともと女の子なんて一切描けなかったんですが。「ヤングマガジン」(講談社)への持ち込みもしていて、チャンスがもらえるのは可愛い女の子を描けるマンガ家なんですよね。だから、可愛い女の子が描けるのは、マンガで生きていくために身につけたものです。本当は、ロボットと男キャラのほうが描きやすいです。

――ニコニコ大百科でも、男性とかキモキャラを描くのが上手いと記述されていますね。

木星 ストレスの発散なんですよね。女の子はシワとか描けないから、ストレスが半端ないですよね。だから、そういう時は先にオッサンから描くことにしているんです。「線が多くてストレスたまらない?」と聞かれるんですが、自分ではオッサンのほうが描きやすいです。

――ペンネームの由来をおうかがいしてもよいですか? 同人サークル名もペンネームと一緒ですが、これはどういう意図なんでしょうか。

木星 まず意識したのは、ネットで検索してトップに出てくることです。

 味の素スタジアムってあるじゃないですか。あれって、味の素が高いお金をかけて名前の権利を得ている。そんな風には価値があると思うんです。だから、難しい名前はやめようと思って……見たらわかるし、覚えやすいし、誰ともかぶらないものを考えた結果です。

 同人誌も、みんなサークル名と作家名を分けるんですが、あれはなんの宣伝効果も発揮していないし、覚えてもらえないと思うんです。頭のいい人や企業が、必死に名前を覚えてもらおうとしているのに、なんで誰も知らない出始めの絵描きがわかりづらい名前にするんだか、わかりません。

 で、木星在住だったら、なんか木星に住んでるみたいなイメージで……惑星の名前、なんか住んでるくらいの連想で覚えてもらえるかな、と思ったんです。「土星在住」とか言われることはありますけれど、覚えてくれる気はあるんだなと感じてます。それに、木星はSFアニメによく出てくる惑星ですから、覚えてもらいやすいなと思いました。

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