『機械人形 ナナミちゃん』マンガ家・木星在住インタビュー「何かを喋るんだったら、マンガのコンテンツで喋りたい」

――今回、600ページラフを描いてボツになったということが注目されました。そのボツになった編集部が「600ページのラフを切れ」と指示したわけではないんですよね。

木星 はい。前の出版社では、担当者がゴーサインを出してから編集長に見せるという流れだったんです。ですから、担当の要望が編集長の一声で全部ダメになってしまう。それに担当はあまり戦ってくれなかったんです。担当も編集長も面白くするために要望を出してくるわけですけど、それをお互いに共有していないんですよね。

 それで、私が頭を下げて「描かせてください」ではなくて、先方がコミケに来て「描きませんか」と、いわばスカウトしてきた関係です。普通の会社だったら、工場に発注があってラインを組んだのと同じですよね。自分の場合も、同じ体でほかの仕事を断ったりしていたのに、この扱いですから。これはちょっと、大人としてあまりにも失礼なんじゃないかなと。業界がそんな流れだとしたら、あまりにも幼稚すぎると思ったんです。芸能と同じで、スカウトされたからといって仕事をもらえるわけじゃないんですけど、担当は「絶対」とかいう言葉を多用する人だったんです。

 でも、ボツになってしまった。このこと自体は、よくあることだと思いました。でも、それで終わらすにしては、マンガ家としてつまらなすぎる。作品を発信する側が「よくあること」で終わらせてよいのかと思ったんです。それだったら、このこともエンターテイメントとして提供してみたらどうだろうと思ったんです。

――ボツになった、怒りから始まったわけではないんですね。

木星 怒ったからというのも、ほんの少しはあります。けれども、何か不思議なものを作れるんじゃないかという思いのほうが強かったんです。嫌だったことをTwitterとかで発言しないで、マンガで言えばいいんだと。

――自分の戦うべきフィールドで戦うべきだと。

木星 考え方が変わったんです。以前は編集部に「自分のマンガが面白いので、掲載してください」というスタイルでした。けれど、それをしている人はいっぱいいると思います。それを止めて「自分のマンガはいっぱい読んでいる人がいるから、掲載してください」……単刀直入にいうと「お金になるから掲載してください」というスタンスにしてみようというわけです。

――では、ネットに公開する時点から、作品に自信はあったということですか。

木星 公開してつまらなくて誰も見なかったら、自分も出版社に対して「掲載してください」なんて言えないですけど、人気が出れば出版社に持ち込む時も話が通りやすいと思ったんです。ニコニコ静画や自分のサイトで累計20万PVくらいいったら、出版社に持ち込もうと思っていたのですが、一気に100万PV近くになって、出版社のほうから声をかけてくれるようになったんです。

「自分のマンガが面白いでしょうか」と編集者に聞くよりも、「自分の作品はお金になる」というほうが出版社の食いつきはいいんだなと感じました。

 現実にどの作品も編集者が面白いと感じるから連載し、単行本になっているわけですが、だからといって、すべてが売れているわけではありません。それを編集者はみんなわかっていると思います。その曖昧なジャッジの中で、出版は行われているのではないでしょうか。失礼な話ですけど……ジャッジに自信のない出版社も多いと思います。だから、面白いかつまらないかよりも、お金になるかどうかのほうが話が進みやすいでしょう。

――ネットで実績を作ることもできるのだと、気づいたわけですね。

木星 今、30歳なんですけど……気づくのが遅かったかなあと。

――いくつかの出版社から声がかかった中で、このマイクロマガジン社を選ばれた理由はありますか?

木星 自分はこれまで同人誌を描き、そこでスカウトされて商業エロマンガ誌でオリジナル作品を描いてきました。今回、一般作で初めてのオリジナル作品が単行本になったんですけど、次のステップを考えると、やっぱりアニメ化を想像します。その可能性を一番感じたのが、マイクロマガジン社の「マンガごっちゃ」編集部だったんです。すでにアニメ化している作品もある編集部ですから。ほんの少しの期待値でもあったほうが、夢が見れるじゃないですか。

 私のこれからのプランは、アニメ化に向けて4年か5年で10巻くらいで完結する作品を描いていくことです。そうした作品を死ぬまでの間に5作品くらいは描きたい、そうすれば必ずいち作品はアニメ化されるんじゃないかと思います。

――死ぬまでに5作品だとすると、相当意識を集中された作品になるんではないかと思います。

木星 はい、その中で必ずアニメ化はしたいと思います。

――“儲かる”“儲からない”ではなく、自分の作品がアニメでどうなるかを見たいのですか?

木星 ええ。みんな子どもの頃に、人生でやりたいことを思うじゃないですか。自分は中学生の頃にマンガ家になって作品をアニメにしたいと考えました。自分は神奈川県生まれなんですけど、神奈川にはテレビ神奈川(tvk)というテレビ局があるんです。あそこで、自分のアニメが流れるのが夢でした。中学生の頃に思ったことをなるべく達成させたい……精神論になるんですけど、物心ついてから死ぬまでの自分が全部集まったとして、喧嘩しなければよい人生じゃないかと。自分は13歳の自分に「マンガ家にはなれたけど、これからはアニメ化だ」と伝え、40歳の自分から「アニメ化できた」と聞きたい。こうして考えた時に、必要なものではあるけれどお金は重要ではありません。昔の自分に怒られないために、次の目標を決めていきたいんです。

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