ろくでなし子氏逮捕に見る警察当局の思惑 表現規制反対派が直面する新たな正念場とは?

 マンガ家のろくでなし子氏(姉妹サイトの「messy」でも連載中:参照)が、3Dプリンターで女性器の造形を出力することができるデータを頒布したとして、わいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕された事件。この事件をめぐり、新たな「場外乱闘」が始まっている。

『デコまん~アソコ整形漫画家が奇妙なアートを作った理由』(ぶんか社)などの著書がある、ろくでなし子氏の逮捕容疑となったのは、昨年6月にクラウドファウンディングを用いて行った活動だ。「わたしの『まん中』を3Dスキャンして、世界初の夢のマンボートを作る計画に支援を!」と題されたこの活動は、氏が「まん中」と表現する女性器を型どりし拡大し「マンボート」なるものを制作しようというもの。この企画に賛同し3000円以上の資金を寄せた支援者に配布したもののうち、配布した自身の女性器をかたどった3Dプリンター用のデータが、わいせつの容疑をかけられているわけだ。

 今回の逮捕を主導した警視庁保安課は、昨年来、“エロ表現に対する抑圧”を強化している。昨年7月には、出版社のコアマガジンの取締役らがわいせつ図画頒布容疑で逮捕される事件が起こっているが、今回の件も含めて、狙いは同一線上の“エロ表現の抑圧”にあるのだろう。そうした状況下で、ろくでなし子氏のような一種ニッチな表現活動に対してわいせつ容疑をかけたことは、国家権力の抑圧が新たな段階に入ったと見てよい、と筆者は考えている。

 今回の事件で特徴的なのは、「表現の自由」に対する抑圧ということで、従来からの表現規制に懸念を示す人々が一枚岩になるのかと思いきや、足並みが大きく乱れていることにある。その大きな理由は、ろくでなし子氏が勤務していた女性向けアダルトグッズ店「ラブピースクラブ」の代表(このオフィスも家宅捜索を受け、ろくでなし子氏の作品が押収されている)で作家の北原みのり氏が、今回の逮捕に異議を唱えていることにある。

 北原氏は従来から、独自の視点で性に関する問題を執筆している人物。そんな氏は、6月の児童ポルノ法改定案成立を受けて「AERA」6月30日号(朝日新聞出版)に寄稿した記事で“日本は児童ポルノに甘い社会である。欧米をはじめとする多くの国では、たとえアニメであっても、また成人女性が児童に「見えるだけ」であっても、児童性愛を許容する表現は児童の人権の観点から許されていない。日本の法律は、ポルノ目的で撮影されている児童を保護するのが眼目である。つまり、「児童性愛」という「ファンタジー」は、市場として受容され、守られ、消費され続けているのだ”“「幼女を強姦するアニメやゲームなどは誰も傷つけていない」と、言い切れるのだろうか”として「二次元規制」が除外された改定案への批判を展開した。北原氏のこうしたスタンスは従来から一貫しているものだ。

 ところが、改定案の成立によって当座の「敵」が消滅したこともあってか、二次元規制反対を軸にしてきた人々は、北原氏の主張に過剰に反応。Twitterなどでは、北原氏に対する批判が多く見られた。また、6月22日に新潟市で開催された、現代美術家の会田誠氏が新潟市安吾賞を受賞したことを批判するシンポジウムに北原氏がパネラーとして参加していたことも、火に油を注ぐかっこうとなった。

監獄の誕生―監視と処罰

監獄の誕生―監視と処罰

”不快”などの主観を根拠に「規制」を叫べばブーメラン。相互監視が規制を加速させるかのような…。

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