児童ポルノ法の施行日が決定 これからの「表現の自由」をどう戦う?

 いよいよ改定・児童ポルノ法の施行日が決まった。官報によれば、7月15日をもって施行。来年7月15日から改正後の第7条第1項の適用、すなわち所持に対する罰則が始まることになる。

 当初、児童ポルノ法改定案の附則部分に盛り込まれていた、政府が創作物が実際の事件に影響を及ぼすか否かを調査研究する項目が除外され、衆参法務委員会の質疑でも創作物と切り離すことを目指す答弁が記録された。これをもって、マンガ・アニメの“表現の自由”の危惧という点から、児童ポルノ法はひとつの到達点に達したといえるだろう。

 もちろん、マンガ・アニメの“表現の自由”が脅かされる危惧は消えていない。青少年健全育成基本法案はすでに国会に提出されている。また、改定児童ポルノ法にマンガ・アニメが含まれなかったことを問題とする視点での報道も行われており、依然としてマンガ・アニメへの規制を求める声はなくなったわけではない。

 そうした中で、今回の改定・児童ポルノ法は、かなり「実」の部分を獲得するのに成功したといえる。

 ただ、いわゆる“二次元規制”が阻止されていく過程の中で、大衆運動としてはかなり温度が低かった印象が残る。

 その理由は、とりあえず二次元規制が遠のいたことへの安心感だと見てよいだろう。2010年の東京都青少年健全育成条例改定問題は、“マンガ”が規制のメインターゲットであった。そのため、危機感をダイレクトに反映する形で、集会では参加者1000人超えをするほどの運動になり得た。

 その瞬間最大風速に比べると、今回の児童ポルノ法改定については、やはり大衆運動自体は低調だったといえる。さまざまな人々や団体が個別に活動し二次元規制の阻止に成功した点は評価すべきだが、やはり盛り上がりに欠けた点は気になるところだ。

 二次元規制を阻止したところで、「俺たちの戦いはこれからだ」と思うよりも「これで安心」と胸をなで下ろすほうが多数派だったのだ。けれども、現実に青少年健全育成基本法案は提出されるし、ヘイトスピーチを法規制しろという運動はあるしで、“表現の自由”の危機は継続している。しかも、やがてマンガ・アニメにも影響が降りかかってくるとは理解しがたい形で、である。

 東京都青少年健全育成条例改定問題は、ものすごく単純に理解できる構図であった。けれども、これから引き続きやってくる問題はそうではない。

“表現の自由”をめぐる問題は、「マンガ・アニメを守りたい」という素朴なシングルイシューでは戦えない。いつの間にか「マンガ・アニメを守りたい」といった題目を使う人が少なくなったので、この点についての理解が進んでいるのかも知れないが……。今や中東では、ジハード主義組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が、誰もが「お約束」だと思っていた「イギリスの三枚舌外交」の結果としての国境線を破壊し、それどころかカリフ制の復活まで宣言している。いわば「ここまで百年間の分は間違いだったんで、やり直すわ」というわけだ。自分の好きなものを守るのも当然だけど、どこかでこれくらいダイナミックに、その戦略を考えたいものだ。
(文/昼間 たかし)

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