「大人になりたくない大人たちへ」は“究極の皮肉”だった!? 『サムライフラメンコ』が訴えたもの

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

【今週の極私的見どころ!】
 羽佐間正義(CV:増田俊樹)のストリップショー!! 最終回なのにこのぐだぐだ感……好きです!!!!

【今週のおすすめ度】
★★★★☆
(前回のあらすじはこちら

「またね。ごっちん」

 バスに乗った彼女を見送ったあの夕暮れ。送られてきた最後のメールが後藤英徳(CV:杉田智和)の生きる支えでした。後藤は消えてしまった彼女に一方的なメールを送ることで心を保っていたのです。部屋に引きこもり自作自演のメールを続ける後藤。そんな狂った日々の中で、後藤が警察官になるのをすすめたのは“彼女”のほうでした。ネットでは「やっぱりエア彼女だったの!?」「これはアカン……」と視聴者騒然。あの格好よかった後藤はどこへ……。

 間近に響いた銃声で我に返った後藤は、澤田灰司(CV:鈴木晴久)の放った「またね、ごっちん」のセリフに動揺を隠せません。灰司は、サムライフラメンコの中に自分の存在が深く刻まれるためには、「あなたが僕を殺すことこそ望ましい」と夢見顔。そんな灰司を見て「イカれてやがる」と言った後藤の言葉には、視聴者も「お前が言うな」とツッコミを入れずにはいられなかったようです。

 ともあれ、灰司は後藤の恨みを買うため、拘束されて動けない後藤の目の前で、“彼女”とのメール履歴を消していきます。そして後藤の懇願も空しく、失踪前に送られてきた最後のメールも消去。憎悪の目で「お前を殺す!」と言う後藤に、灰司は歓喜の声を上げます。

 同時刻、羽佐間はネットニュースのプロデューサー・今野明(CV:三上哲)から、戸籍は偽装されていたものの灰司が生きた人間であることを知らされます。そして現地へ到着した羽佐間は、灰司の目的が「サムライフラメンコを“ダークヒーロー”にすること」だと聞かされ、決意を固めます! 一枚一枚服を脱いでいく羽佐間。

 次の瞬間――。

 イヤイヤイヤイヤ、このシリアスな展開にそれはないでしょうよ!? 「サムライフラメンコにとって悪であり続けようとする君を救うには、生身の羽佐間正義になるしかない!!」との極論でなぜか全裸に! そして「僕たちに必要なのが愛ならば、僕は君のすべてを受け入れてみせる!」と灰司に迫る羽佐間には、ネットでも「なぜ脱いだ」「狙いすぎのセリフがキモイ」と、まともな意見が浮上。しかし、大多数の視聴者は「あ~いいっすね~」「そのまま押し倒せwww」と、羽佐間のストリップショーに好意的(?)でした。

 羽佐間と灰司がもみ合う内に拘束から逃れた後藤は、“彼女とのメールを消されたことで自分は本当に一人になってしまった。だから灰司を殺す”と、拳銃を片手に正気を失った目で叫びます。そんな後藤を見て、うまい言葉が見つからない羽佐間は無我夢中で口走ります!!

羽佐間「後藤さん。僕と結婚しましょう! 彼女さんの代わりに僕が一生そばにいます!!」

 これにはさすがに後藤も灰司も目が点。出鼻をくじかれた後藤は、「この童貞!!」「バカ!!」と子どもじみたセリフで羽佐間に当たり始めます。これに対し「バカって言ったやつがバカなんだ、バカ!!」と実に頭の悪いセリフで応酬する羽佐間。羽佐間の後ろでドン引きしている灰司が面白いです。「うるせぇよ……変態」と、今にも泣きそうな後藤が銃を下ろし、これにて一件落着――。

――かと思ったらここで真打ち登場!! いつもより2トーンほど低い声&巻き舌で、フラメンコダイヤに扮した真野まり(CV:戸松遥)が灰司を容赦なく吹っ飛ばします。一方、後藤に駆け寄る羽佐間。無言で投げ渡された携帯には、「ごっちんを止めてくれてありがとう。私しばらく旅に出るよ」と“彼女”からのメールが映し出されていました。ようやく涙を流せた後藤の姿に、不覚にも筆者は胸が熱くなりましたよ……。

 それからしばらくして、日常に戻った人々は新たな一歩を踏み出していました。要丈治(CV:小杉十郎太)はヒーローミュージアムの館長に。フラメンジャーたちもみんな元気です。ミネラル☆ミラクル☆ミューズの3人も復帰し、まりは相変わらずの破天荒ぶりで、楽しく毎日を過ごしているようです。

 時同じくして、少年院へ入った灰司の面会に来た羽佐間。更生する気なんてないと言う灰司に、それならそれでいいと、羽佐間はすべてを受け入れていきます。灰司はきっと羽佐間によって救われていくのでしょう。面会を済ませた羽佐間を少年院の外で待っていた後藤は、「謹慎が解けて今日から職務に復帰できる」と晴れ晴れとした笑顔を見せます。ずっと大事にしていた携帯電話はスマホに変わっていましたが、メールを受信した後藤はいつもの口調で言います。
 
後藤「あ。アイツだ」

羽佐間「ええ!? 彼女さん旅に出たんじゃないんですか?」

後藤「旅先から送ってくるんだよ。お前には関係ねぇ」

羽佐間「え~!? 冷たい!」

 そんなイチャイチャムードに水を差したのは、2人の隣を通り過ぎた車のポイ捨て。服の下にサムライフラメンコのコスチュームを着ていた羽佐間は走り出します――。



 半年間も親のように見守り続けたアニメだけに、「最終回」の文字が異常に寂しい……でもすごく楽しかったです!! 長い間疑っていた、「夢オチ」ではなかったことが何よりうれしいですね。ネットではBLエンドに不満の声が上がっていますが、最初からBL臭がしていただけに違和感はありません。ただ、できれば恋愛要素皆無で突き進むか、まりとのドタバタ恋模様にしてほしかったというのが本音。

 ただ、スッキリしなかったのは後藤の彼女が失踪した真相と、灰司の神業的な同時多発犯罪をどうやって起こしたのか明らかにされなかったこと。最初のほうであれだけ思わせぶりな煽り方をした、羽佐間の両親が死んだ理由も触れられませんでしたね。アラ探しをしたら切りがないのでしょうけど、それだけがちょっと残念です。

 真面目な話をすると、東日本大震災の後に制作が始まったであろう『サムライフラメンコ』には、たびたび安穏とした世の中への反発が滲み出ていたように感じています。荒唐無稽な超展開は波乱続きの現代を表し、理不尽な権力と戦う勇気は小さな一歩からである、そんなメッセージが含まれていたのではないでしょうか。アニメ序盤に溢れるくだらない犯罪は、まさに今の日本をむしばむ悩みの種ですし、キング・トーチャー出現以降ひとつになっていく国民の心はまるで震災復興を願う一時の日本のようでした。

『サムライフラメンコ』がこのタイミングで制作された理由は、無機質な日常に埋もれていく人々にもう一度信念を思い出してほしい、そんな気持ちからだったのかもしれません。そう考えると、キャッチコピー「大人になりたくない大人たちへ」の意味が見えてきます。これはある意味究極の皮肉なのでしょう。大人になれないバカな大人たちは、過去を乗り越え未来を切り拓くのです。

 とはいえ、これだけギャグに走られると真面目に考えている筆者のほうがバカみたいですけどね(笑)。ストーリーは、やはり最初に言及されたようにアメコミの『キック・アス』に似ている部分が多かったように思います。ヘタレヒーローが成長していく様を描きながらも、最終的にやっぱりヘタレな性格は変わらないところや、シリアスなのにシリアスになりきれないシュールな展開など……。海外の視聴者に評判が良いところを見ても、アメコミ展開が好きな人に響く内容だったのでしょう。

 筆者がこのアニメを一言で表すなら「ここまでぶっ飛んでいれば面白い!!」。それにつきます!! マングローブ制作の次なるアニメにも期待しています!
(文/牧野絵美)

【『サムライフラメンコ』各話レビューは以下より】

【第1話】
主人公が“イタい”けど目が離せない! 『サムライフラメンコ』第1話の評価は?
【第2話】
『サムライフラメンコ』第2話 一番の盛り上がりは男2人の「相合傘」!?
【第3話】
「好きだ!」と男に抱きつかれてアツい!! 『サムライフラメンコ』第3話
【第4話】
“BL”と”百合”の両輪で突っ走る異色のヒーローもの!『サムライフラメンコ』
【第5話】
腐女子狙いから百合へとシフト!? 個性的なキャラばかりの『サムライフラメンコ』
【第6話】
これぞヒーローアニメ!! 現代の大人たちの心が込められた『サムライフラメンコ』
【第7話】
視聴者がく然!『サムライフラメンコ』のあまりの展開にネットは賛否両論!!
【第8話】
「夢オチじゃないの!?」王道ヒーロー展開が続く『サムライフラメンコ』に視聴者は引き気味?
【第9話】
拷問シーンが見どころ!? 緊迫したストーリーが展開された『サムライフラメンコ』の評価は?
【第10話】
視聴者は置いてけぼり!? ギャグかシリアスかもわからない不思議な『サムライフラメンコ』
【第11話】
今度は戦隊モノに!! 作画も心配な『サムライフラメンコ』の評価は真っ二つ
【第12話】
相変わらず先が読めない…『サムライフラメンコ』はどこへ向かうのか?
【第13話】
評価が一気に急上昇!『サムライフラメンコ』がシリアス展開で巻き返しをはかる!?
【第14話】
視聴者からは「『エヴァ』っぽい」という声も…“安定”の超展開を見せる『サムライフラメンコ』
【第15話】
「どこかで見た展開」…だけど目が離せない!? 『サムライフラメンコ』にツンデレ視聴者続出?
【第16話】
濃厚なレズ・キスと感動展開に視聴者絶賛!『サムライフラメンコ』の評価が急上昇!!
【第17話】
痛烈な風刺…なのか? 『ウルトラマン』的展開も期待される『サムライフラメンコ』
【第18話】
『エヴァンゲリオン』のラストにしか見えない!? 数々の大作をオマージュし続ける『サムライフラメンコ』
【第19話】
伏線回収と“いつもの”超展開に視聴者は大喜び!『サムライフラメンコ』
【第20話】
腐女子歓喜!? 男性キャラのセリフや展開にBL感むんむんの『サムライフラメンコ』
【第21話】
最終回を前にシリアス・ラブコメ展開に発展!? 『サムライフラメンコ』
【第22話最終回】
「大人になりたくない大人たちへ」は“究極の皮肉”だった!? 『サムライフラメンコ』が訴えたもの

「大人になりたくない大人たちへ」は“究極の皮肉”だった!? 『サムライフラメンコ』が訴えたもののページです。おたぽるは、アニメ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!