“人外ヒロイン”ブームはなぜ起こった? ブームを牽引する「COMICリュウ」副編集長が制作の舞台裏を語った

■フェティシズムとしての人外と、ドラマとしての人外

――ただ、一方で僕はケンタウロスなんかには結構フェティシズムを感じるんですよね。馬体側がなんか妙に色っぽいというか……。『セントールの悩み』の姫なんかは、座り方がすごくかわいい。

猪飼 『セントールの悩み』は六本肢という形態の種が進化した社会というのを描くSFというのが元々のスタートラインなので、作者の村山慶先生の中で特にモンスター娘の魅力を描きたいというのが一番の動機ではなかったと思いますが、確かに座り方とかそういう構造的な部分はすごくこだわって描いていますね。たとえば、トイレに入るときどうするのか、みたいなところを1ページ使って描いたり。人間とは異なる形態の人種が暮らす社会がどうなっていて、そこでの日常がどういうものかという部分を突き詰めた作品なので、そういうところにある種のフェティシズムは生まれるかもしれませんね。

――おそらく、いわゆるケモナー的なフェティシズムって、知らないものに対する興奮みたいな部分があるんじゃないかと思うんですよね。人間の体って、大人になると徐々に神秘性を失っていくじゃないですか。モンスター娘を見るときって、無修正の映像を見たことがない頃の女体への気持ちみたいなものがよみがえりませんか?

猪飼 ああ、見たことないものですもんね。

――(キャラクター同士が女性器を見せ合う内容の)『セントールの悩み』の第0話が、そういう感じだったんですよね。

猪飼 どこに(性器が)ついてるんだっていう話ですよね。18禁の人外ものが、そういう部分を掘り下げていますよね。それは「COMICリュウ」では、あまり突っ込んで描けない領域ではあります。

――そういう意味で、いわゆるケモナー系のブームというのは、2軸なのかもしれませんね。物語を駆動させる、障害やコンプレックスとしてのモンスター娘というのと、造形そのものに対するフェティシズムが別に存在している。

猪飼 魅力の両輪というのが正確かもしれません。だから、『モンスター娘の日常』にしても、造形的な刺激や面白さはもちろんこれからも大切な魅力として描かれていくと思いますが、単に造形の過激さを競うような方向性にはならないと思います。大事なのは、やっぱりキャラクターを描く必然性であって、ただ造形的な刺激だけを追ってもすぐに慣れるし、飽きられると思いますので。

おたぽる編集 なるほど。ケモナーの中には、「ポケモナー」という『ポケットモンスター』のモンスターを対象にした派閥があるんですが、イラストだけでなくSS【注:二次創作小説】も人気があるんです。小説なので、モンスターの造形なんて関係ない(笑)。それでも、おっしゃる通りキャラクターを描けている作品は支持されています。

――これからケモナー市場がすごく広がるということでなく、いろんなところに“人外要素”が少しずつ入っていくんでしょうね。

猪飼 元々マンガにはある程度あったセンスでしょうしね。『うる星やつら』のラムちゃんにしても、もっと鬼側に寄せれば、いわゆる“モンスター娘”になる。ただ、それを単純にやるのでなく、やっぱりちゃんとドラマとして展開していくことが、編集者としては重要だと思っています。
(取材・構成/小林聖)

■「COMICリュウ」
http://www.comic-ryu.jp/

“人外ヒロイン”ブームはなぜ起こった? ブームを牽引する「COMICリュウ」副編集長が制作の舞台裏を語ったのページです。おたぽるは、マンガ&ラノベ出版業界事情の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

PICK UP ギャラリー
写真new
写真
写真
写真
写真
写真

ギャラリー一覧

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!