『このマンガがすごい!』は本当に無難? ランキングよりも面白い選者たちの業

1312_konoman.jpg『このマンガがすごい!2014』(宝島社)

 今月9日に発売日を迎えた『このマンガがすごい!2014』(宝島社/以下、このマン)。ランキング企画の火付け役とあって、今年も発表と同時に各所で話題を呼んでいる。

「オトコ編」1位がすでに初版100万部を突破している『暗殺教室』(集英社)だったりと、例によって「上位に新鮮味なし」といった不満の声が上がる部分はあるが、投票者が増えれば増えるほど、「売れている作品=多くの人が知っている作品」に票が集まるのは必然。20位圏内あたりは、「マンガ読み的には知らない作品があったら焦る」という感じで読むしかないだろう。

 むしろ『このマン』で面白いのは、ランキング以外の部分。各選者のピックアップタイトルや特集企画を見ていくと、何時間でも話ができるポイントが数多くある。

 たとえば、今年特に胸を熱くさせてくれたのはオトコ編の選者になっている歌人・枡野浩一。『このマン』では2012年度版以来3回目の選者だが、マンガ好きなのは有名で、雑誌の選書企画などではおなじみだ。とりわけ枡野浩一のマンガ家・鴨居まさねへの愛情と信頼はすさまじい。10年以上前から何かといえば書評で取り上げ、新刊の帯を書き、文庫版が出るといえば解説をしたためる。そんな枡野は、去年の『このマン』では当然のように鴨居まさねの『君の天井は僕の床』(集英社)を1位に挙げている。

 確かに集計期間内に久しぶりの新刊が出た作品だが、傾向として「その年、刊行開始された作品」に票が投じられることが多いランキング企画で、連載スタートは数年前という作品を挙げてくる枡野の姿は、ロックだった。おつきあい的な帯コメントも多くなっている昨今、ガチで10年以上にわたって帯にしたためた愛情を抱き続けている枡野のすさまじさを感じさせた。

 そんな枡野は、今年も魅せてくれた。選者が投票できるのはたった5作品という条件がある中、枡野はうち3本を施川ユウキの新作で使うというロックぶり。確かに『鬱ごはん』(秋田書店)など、施川ユウキの3作品はどれも非常によかったが、ここまで大胆な投票ができるのは、『このマン』では枡野くらいだろう。「バランスもへったくれもない、俺が好きな作品を選ぶ!」という強い意志を感じさせる枡野の選書は、「なるべくバランスよく」と考えてしまいがちな、ランキング慣れした選者に、マンガ愛とは何かを伝えてくれるようだ。およそマンガ読みほどの者は、枡野浩一にあやかりたく存ずべしという感じだ。

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