“人外ヒロイン”ブームはなぜ起こった? ブームを牽引する「COMICリュウ」副編集長が制作の舞台裏を語った

『セントールの悩み』(徳間書店)や『はたらけ、ケンタウロス!』(リブレ出版)など、2011年にはケンタウロスを主人公としたマンガが(プチ)ブームを起こした。それ以来、一般誌においてモンスターをモチーフにした“人外ヒロイン”ものは着実に拡大を続け、マンガ『モンスター娘のいる日常』(徳間書店)は累計100万部に迫る大ヒットを記録。今や“人外萌え”は、マンガ界ではちょっとしたブームと呼べるようになっている。

 そんな“人外ヒロインマンガ”人気の秘密とは一体なんなのか? 「アニメ『名探偵ホームズ』と『アリス探偵局』を見て“ケモナー”【注:ケモノの擬人化を愛好する人々】になった」と語る「おたぽる」編集者と共に、『モンスター娘のいる日常』が掲載されている「COMICリュウ」の猪飼幹太・副編集長にうかがった。

■「人外は受けない」という過去のセオリー

――さてさて、人外マンガといったら、やっぱり「COMICリュウ」さんにおうかがいしないと、と思いまして……。出版社を擬人化したマンガ『飯田橋のふたばちゃん』(双葉社)でも、徳間ちゃんは人外系として描かれていたり、完全に人外マンガブームの中心地と捉えられています。

猪飼 ありがとうございます。確かに世の中的には「リュウ」といえば“人外ヒロイン”というイメージもあるようですが、実際にはそんなに多いわけではないんです(笑)。今、毎月30本近くの作品が載ってるんですけど、純粋なモンスター娘萌えの作品は、『モンスター娘のいる日常』だけじゃないでしょうか。『セントールの悩み』はケンタウロスの女の子や竜人といった、人間じゃない種族が暮らす世界を描いてますが、そもそも描きたいところは、別種の進化を遂げた人類の社会と歴史を描くSFです。猫娘が主人公の『ねこむすめ道草日記』は妖怪日常もの、獣人世界のヒーローもの『KEYMAN』も基本はアメコミですし。単眼ヒロイン【注:ひとつ目小僧のような造形のヒロイン】の『ヒトミ先生の保健室』を入れて、広い定義でいっても4~5本。「主人公が人ではない」というところだけでいえばたくさんありますけど、それでいったら「週刊少年ジャンプ」(集英社)だってたくさんありますから。

――ただ、『モンスター娘のいる日常』も、『セントールの悩み』も『ねこむすめ道草日記』、『ヒトミ先生の保健室』も、猪飼さんの担当作品とうかがいました。猪飼さん個人の趣味じゃないんですか?(笑)

猪飼 たまたまです(笑)。僕自身がすごくモンスター娘が大好きで「いつかこういう作品を世に問うてやろう!」と思っていたわけではないんですよ。僕のほうから作家さんに企画を提案したこともないですし。ただ、じゃあどうしてモンスター娘ものってカテゴライズできる作品が立て続いているのかっていうと、たぶん、そもそもほかの編集部ではそういう企画が通らないっていうのがあったと思うんですね。今はそうでもなくなってると思いますが、ちょっと前だったらたぶん多くのところで門前払いだった。“獣人ヒロイン”みたいなジャンルって、オリジナル同人誌即売会のコミティアとかでは小さいながらも確立されていましたけど、商業的には「無理だ」「当たらない」っていうのが、編集者の間ではセオリーとして根強かった。作家さんによっては「そういう作品を見せると、編集者さんに嫌われるんじゃないか?」なんていう方もいらっしゃったくらいで。うちの場合はそれを通したってだけなんです。編集長が割と寛大に「面白いからいいじゃん」って通してくれたおかげだと思います(笑)。

――実際にモンスター娘系の実績ができたことで、持ち込みも増えたりしたんでしょうか?

猪飼 他誌よりは多いかもしれないですね。雑誌としても「ジャンルを制限せずに面白いと思ったら何でも載せる」という方針ですし。たとえば、作家さんにはよく「よそでボツになったものを持ってきて」って言うんです。よそでボツになったってことは、どこか尖ったものがある場合が多い。誰でも60点つけるような、「雑誌に載っててもおかしくないよね」と思うマンガって、案外ヒット作になりにくいんですよね。逆に10人、20人の人が0点って言っても、何十人かに1人が「120点です」っていうマンガは売れる可能性がある。世の中のマンガを読む人の100人に1人が読んでくれれば大ヒットですから。けど、そういう作品って意外とプロの編集は切っちゃうことがあるんですよね。

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