手塚治虫のゴーストは超大物!? クラシック界より“ディープ”なマンガ家とアシスタントの関係

 最後にアシスタントとは少々異なるが、マンガ界の神様、手塚治虫氏に関する代筆話を紹介しよう。

 1957年、いくつもの雑誌の原稿を掛け持ちしていた手塚治虫氏は、残り5日で8本を完成させなくてはいけないという修羅場を迎えたことがあった。そこで手塚氏は、どうしても手が回らなそうな『火の鳥』(「少女クラブ」連載)を下書きだけ編集者に渡し、誰かにペン入れを頼むように、と申し出たのだ。今では考えられないような話だが、なんと当時まだ若手だった石ノ森章太郎氏と赤塚不二夫氏が、そのペン入れを引き受け、無事、誌面に掲載されたという。

 しかもこれには前日譚があり、同時期に手塚氏は「漫画王」でも『ぼくのそんごくう』を連載していたのだが、あまりの窮地に編集部は勝手に『ぼくのそんごくう』の代作、代わりの作品ではなく、手塚氏の『ぼくのそんごくう』として掲載するための作品を若手マンガ家に依頼していた。その代作を引き受けたのが、前述の石ノ森氏と赤塚氏、そして藤子不二雄(藤本弘と安孫子素雄)の四名で、彼らは共作でアイデアから作画まで丸々一本、独自の『ぼくのそんごくう』を作り上げたのだ。

 結局、手塚氏の原稿があがったため、この代作が「漫画王」誌面を飾ることはなかったが、当時のエピソードは原作:宮崎克氏、マンガ:吉本浩二氏の『ブラック・ジャック創作秘話』および藤子不二雄A氏の『愛…しりそめし頃に』に詳しく描かれているので、興味がある人は手にとってみてはいかがだろうか。
(文/蜂須賀のぼる)

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