手塚治虫のゴーストは超大物!? クラシック界より“ディープ”なマンガ家とアシスタントの関係

1402_ghostwriter.jpg『ぼくのそんごくう オールカラー版』(ジェネオン エンタテインメント/手塚治虫)

「初めて佐村河内の申し出を聞いた時、私は彼のアシスタントになるという認識でした」ワイドショー、報道番組のトップニュースとなるほどの話題となった“現代のベートーベン”佐村河内守氏のゴーストライター騒動。そのきっかけとなった「週刊文春」(文藝春秋社/2014年2月13日号)にスクープされた記事の中で、『交響曲第一番HIROSHIMA』を含む佐村河内氏の代表的楽曲を代筆した新垣隆氏は、こう語っている。

 当初、佐村河内氏が作った映画音楽用の短いテーマ曲をオーケストラ用の楽曲に仕上げてほしいとの依頼を受けた新垣氏は「クラシック界では、大家の下でアシスタントが譜面を書いたり、オーケストラのパート譜を書いたりすることはままあること」(同上)と軽い気持ちで引き受けたものの、最終的に氏の作業は、曲のイメージや構成を言葉や図で示した指示書から一時間を越える交響曲を作曲するまでに至ったという。

 さて翻ってマンガ界に目を向けてみよう。共同作業の面が強いマンガの制作現場においても、ベタや背景、モブなどのキャラクターのペン入れといった匿名的な作業を越えて、マンガ家が信頼を寄せるアシスタントに創作上重要なパートを任せるようになるというのは、実はままあることだ。

 有名なところでは、マンガ『ゴルゴ13』シリーズでお馴染みのさいとう・たかを氏は、制作過程を各分野のスタッフに任せるプロダクション制を採用している。たとえば最新の「ビッグコミック」(小学館/14年2月25日号)に掲載されている『ゴルゴ13』シリーズ「亡者と死臭の大地 後編」巻末では、構成のさいとう・たかを氏を筆頭に構図、脚本、作画、担当(本誌)と、のべ15人のスタッフがクレジットされている。構図、脚本というのは一般的にマンガの“ネーム”にあたる部分だと推測されるが、そこもさいとう・たかを氏と連名で、それぞれ別のスタッフ名が記載されているのを見ると、やはりその部分の実作業は、ある程度他者に委ねられているのだろう。

 また『サラリーマン金太郎』『男樹』『俺の空』など多数のヒットシリーズを持つ本宮ひろ志氏も、作品中にクレジットこそしていないものの、女性キャラは奥方の少女マンガ家であるもりたじゅん氏に描かせ、男性キャラでもアシスタントが下絵をしたものにペン入れするなど、作画面でかなりの部分を任せていることが明かされている。

 ただこれは本宮氏が、かねてより「自分は絵が下手だ」と公言しており、絵柄よりキャラクターやネームを重視する方針をとっているためだ。チーフ級のアシスタントが独立する際、本宮氏と画風の似たマンガが始まることを心配した担当編集に本宮氏は、「アイツが抜けたら、俺の画風が変わるから大丈夫だ」と言ってのけたという、大御所ならではの大胆な都市伝説もある。

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