3DCGが新たなアニメ市場を切り開く!! CGクリエイターが語る制作費事情とこれからのアニメ

――CG制作会社としては、アニメよりも、ゲームやパチンコの仕事のほうが安定した売り上げを見込めるということですね。先ほど、アニメの制作は労働集約的だというお話がありましたが、そのことも関係があるのでしょうか? 例えば、アニメーターはフリーの方も多いのに、CGクリエイターでフリーの方はそう多くないですよね。

 人にお金がかかるアニメ制作では、ベテラン原画マンのようなアニメーターを使う場合、その分だけ負担が増えてしまいます。スタジオ専属の方もいますが、制作会社にもアニメーターにも、フリーでやるメリットが大きく、フリーの市場が大きいのかもしれません。

 一方CGの場合は、制作に「Maya」や「3ds Max」といった何十万円もする高価なソフトが必要で、それを高い稼働率で使って投資を早く回収するほうがいい。そして、そういう高価なソフトを使うには、CGクリエイターも企業に所属するほうがよかったんです。

――CGクリエイターとしても、高価なマシンやソフトを使うために企業に所属せざるを得なかった、と。

 ええ。ただ、CG制作が今後も同じコスト構造であり続けるのか? というと、そこは疑問に思っています。というのも、コンピュータの世界ですから、技術的進歩があります。

 例えば、11月に放送された『ルパン三世 princess of the breeze ~隠された空中都市~』(日本テレビ)の飛行船パートはジェトリックスが制作したのですが、オープンソースで無料の3DCG制作ソフトウェア「Blender」を使いました。「Blender」のようなオープンソースソフトが進歩することで、3DCG制作のコストを劇的に下げることができるんですね。無料のソフトというと不安を覚える方も多いけど、今回の『ルパン』で商用にも通用することを証明できたかな、と思っています。

――『ルパン』の飛行船のシーンを見させていただきましたが、無料のソフトを使って制作してるとは思いませんでした。無料というのは、あまりにも強烈です(笑)。たしかに、少ない予算にも対応できるというのはCGの強みですね。

 もちろん、アニメには文化的価値がありますが、同時にビジネスですから利益のことも考えなければならない。一方で、コストを考えて人件費の安い海外で全部制作するのもひとつの手ですが、でも、それでは日本のアニメ文化が廃れてしまう。そんな時に、セルルックCGはもうひとつの方法になると思います。

 それに、以前、ツイッターでCGクリエイターを求人した時には、「Blender」で遊んでいました、という方がけっこういたんですね。そういう、誰でも気軽に制作できる環境を提供しているという意味でも、CGは今後のアニメの可能性を広げるものだと思っています。

――これからCGを利用したアニメが増えていくかもしれませんね。本日はありがとうございました!
(構成/尾野スミ)

■榊正宗(さかき・まさむね)
1973年生まれ。ジェトリックス株式会社・代表取締役社長。『Moblie真・三國無双』『バイオハザード オペレーション』『ロストプラネット』などの携帯電話向けアプリ開発に携わった後、09年に自主制作アニメ『たいせつなじかん』を発表。その後、アニメ映画『星に願いを』のPV『ほしのこどもたち』などを手がけ、12年7月より現職。東北応援キャラクター「東北ずん子」の企画なども行っている。
ジェトリックス株式会社http://www.jetrix.co.jp/

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