クラウドファンディングでアニメ業界も変わる?アニメ監督・森本晃司を直撃!【後編】

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(撮影/後藤秀二)

──『羊人間012』ではクラウドファンディングを利用していますが、森本さんはもともとクラウドファンディングの存在自体はご存知だったんですか?

森本 クラウドファンディングについては、友達のアニメ監督・湯浅政明くん(代表作『マインド・ゲーム』など)が去年、クラウドファンディングのKickstarterでProduction I.G.と組んで『Kick-heart』(12分間の短編で、20万米ドル以上を超える資金を集めた)という作品をやってたこともあって聞いていました。

──今、アニメ業界には、例えば、『リトルウィッチアカデミア』(TRIGGER制作の短編アニメ作品)とか、クラウドファンディングが結構入ってきてる思うんですが、クラウドファンディングで資金を集めた作品と、現在アニメ制作で主流の製作委員会方式の作品で、内容が変わる部分はあると思いますか?

森本 企業と契約して「こういうの作ってよ」って作るのが今までのお金を集め方だったけど、クラウドファンディングみたいな方法が増えれば世の中がちょっと変わってくるかな、とは思いますね。どっちが正しいとかじゃなくてね。

 それに、クラウドファンディングでお金を出してくれるのは企業じゃなくて複数の個人ですよね。だから、作る側として言えば、「観たいな」って思って支援してくれた人達には、支援した分以上の、想像以上の最高のものを出すぞ! という思いは強くなりますよ。やっぱり「観たい」と感じて応援してくれている人の顔が実際に見えるからね。

――「製作委員会方式だと、収入源となるパッケージ商品が売れる作品ばかりになる」という指摘もありますよね?

森本 今は、とにかくパッケージが売れないとだめで、売れる要素の平均をとるような作品ばかりになりますよね。やっぱり、かわいい画の作品を出せば必ず買ってくれる人たちがいるから、みんなそういう方向性で作る。そうなると、ヘンテコな作品は出づらくなっているのかな、とは思いますね。

 よく押井守さんとも話すのだけど、彼はソフトを売ることについて、10年、30年スパンの長期回収型で考えていて。でも、今はそれをなかなかやらせてくれないんです。わかりやすく目先の利益が見込めないとダメだから。“桃栗3年”じゃないけど、もうちょっと長い目で見みようよ、とは思いますけどね。

──今のアニメ制作現場について、「アニメばかりを見てきてた人がやっていてつまらなくなっている」という批判はよく言われていますよね。押井さんのお名前が出ましたけど、押井さんといえば、相当な映画通で『うる星やつら』ではすごくパロディをしていたり、以前のアニメ現場にはアニメ以外のルーツを持つ人がたくさんいて、そういう雑多な中から面白い作品が生まれたという印象があります。

森本 確かにそういう雑多感は、今は少なくなっていますね。昔は、元々ジャズ畑のミュージシャンがアニメの仕事をして、みたいなのが普通でさ。それは要するに、アニメで大人の本気を見られたってことだよね。だから、かっこよくないわけがない。それで、アニメは子供も観るわけだけど、大人が本気にならないと子供だって面白がってくれないしさ。アニメは早い段階でいろんな表現が入ってくる実験場になっていた部分があったから、昔はいろんな人がいたんですよね。逆に言えば、そういう、なんでもできる場所じゃなくなりつつあるのかもしれないですね。

──その原因として、思い当たることはありますか?

森本 それは、まあ、さっきも言ったように、みんなが売るために似たような方向、言い方は悪いけど、ロリコンのほうに行っちゃったからかなぁ。昔はいろんなジャンルの作品が作れたんです。売れるものを作って、ヘンテコなものも作る余裕があったよね。でも、売れる売れないで言えば、ドラマの『あまちゃん』がウケたじゃない。自分も、毎朝見てましたよ。『あまちゃん』には面白い要素がたくさんあったけど、売ることに迎合したわけでもない。それでも、あれだけヒットしたのは、やっぱり現実にくっついてるところが面白いからだと思うんですよ。要は、ただのテレビ番組じゃなくて、すごく世の中とくっついてる感じがしたんですよね。そこにヒントがあるような気がするんだよね。

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