アニメ『映像研には手を出すな!』モノ作りへの飽くなき探究心…これぞアニメ愛な最終回

TVアニメ『映像研には手を出すな!』公式サイト

 今期アニメの覇権と言っても過言ではなかった『映像研には手を出すな!』。とうとう最終回である。

 最初はあの原作をどのようにアニメ化するのだろうかと一抹の不安もあったが、毎回が神回と言えるほどのクオリティで視聴者を圧巻してきた。今回はその集大成ともいえる。

 納品直前になって音楽が映像と全く合わないという事態に見舞われた映像研。音楽が届いていた際のメモに2週間たって気付くという痛恨のミス。しかしこの音楽では確実に成立しない。起死回生をめざして案を出し合うがどれもこれも時間がかかりコメットAに間に合わない。

 出来がどうあれ、コメットAに参加することは決定事項。どうにか間に合わせなくてはならない。曲自体は悪くなくとも絵に合わなければ意味がない。

 納品を少し待ってもらえないか交渉してみたものの、その場合は金額がグンと跳ね上がる。打開策を見つけようにも既に後手後手になってしまっているゆえに、リスクは避けられない。販売については金森氏が手を打ち、その間に浅草・水崎両名で作品をどうにか完成にこじつけることになった。

 浅草氏は追い詰められると強い子。ひらめきさえすれば皆の期待以上をたたき出す。浅草氏がこの窮地の中で出した案は、音楽に合わせて内容を大きく変えるというもの。

 今までの作業だけでもかなり時間がかかったのに内容を大幅に変えたらさらに同量の作業が必要になるのでは? と危ぶまれたが、ラスト以外は今ある素材を用い、新たなカットは2カットのみで済むという。せっかく作ったダンスシーンは未公開映像ということでどこかで公開するればいい。それで納得する作品になると監督がいうのであれば、誰も反対する者はいない。

 これまでのストーリーは争いから真実を知り、その真実を仲間たちが知り大団円というものだったが、そんな簡単に争いはなくならない。平和の中でも立場や利益を主張した争いが生まれ、利権が絡んで人が豹変しまた争いが起こり戦いは終わらない。その終わらぬ争いの中で主人公たちが選んだ道は……と、新たに描き出すというのだ。

 タイムリミットは朝まで。もう時間がない。映像研の面々はすぐさま作業に入り完成を目指す。ギリギリのギリギリで作品を納品。コメットA出品に滑り込みセーフを決める。

 オタクに馴染みの深い逆三角の即売会会場。それぞれの作る同人誌や自主制作のグッズが売買される不思議な空間。そこに映像研も出店、販売を開始する。

 水崎ツバメが手売りすることで話題を集め、客足は途絶えない。会場には今まで映像研の周りをにぎわせたキャラクター達の姿も見える。水崎氏たちに紙袋で作った仮面をかぶせて好奇心を煽り購買意欲を沸かせるなど、金森氏の戦略も光りSNSでも拡散されていく。コメットA閉会までに映像研は在庫を売り上げることに成功する。

 疲労困憊のコメットA。終わった後に気付くが、映像研の面々はまだその作品を通してみていなかった。皆で浅草氏の家に集まり鑑賞会。彼女たちの作った「芝浜UFO大戦」が上映された。

 いつも妄想の設定がアニメになると声で音を入れていたものが、百目鬼氏によるしっかりとしたSEがつき、水崎氏のこだわりの動き、浅草氏の頭の中の絵がギュッと詰まったアニメが展開される。商店街の街並み、探検した水路、妄想したUFO、アニメを作る過程を一緒に見守っていたからこそ、この作品の完成に胸が熱くなる。

 最後まで見た後の金森氏と水崎氏は納得のいくものができた表情をしていたが、監督である浅草氏は疲労のため夢の中へ。起きてすぐに発した言葉は「まだまだ改善の余地ばかり」。
 
 この、飽くなき探求心。モノづくりを続けていく中でその時々のベストを尽くしていても、完成した後にはやはりああすればよかった、こうすればよかったという思いは沸いてくるもの。だから次の作品を作ることができる。

 映像研の、浅草氏のこの貪欲で前のめりで作ることをやめない姿勢が大好きで何度も背中を叩かれた。モノづくりをしている人、アニメーションを愛して作っている人が確かにいるのだと教えてくれた作品。本当に素晴らしいアニメだった。
(文=三澤凛)

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