“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.41

ネタなの? マジなの? クロちゃんプロデュースアイドルの可能性を占う!

ネタなの? マジなの? クロちゃんプロデュースアイドルの可能性を占う!の画像1
TBS公式YouTubeより

 私は、アイドルに絡んだ仕事なら何でもやってみたいと思っているのだが、「これだけはやめたほうがいいだろう」というものもある。それが、実際のアイドルをプロデュースすることだ。

 世の中でよく言われることだが、「好きなこと」や「その才能があること」が、必ずしも「作る側として優れている」とは限らない。スポーツの世界で優秀な選手が、必ずしもいい指導者や監督になれないのと同じことだ。私の場合「アイドルファン」として、ステージに立つアイドルを応援することはできるが、では作る側に回れるかというと、それは無理だろうなと感じているのである。

 11月6日に放送された、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の中で、安田大サーカスのクロちゃんによる新しい企画が始まった。その名も「モンスターアイドル」。昨年同番組内で放送され、大きな反響を呼んだ「モンスターハウス」の第二弾といったところだろう。

「モンスターハウス」は、フジテレビ系列やNetflixなどで放送されている恋愛リアリティー番組『テラスハウス』のパロディで、クロちゃんを含む男女6人が同じ家で共同生活を送り、そこで生まれる恋愛事情などが、詳らかに放送されるといったものだった。

 本家の『テラスハウス』でも、恋愛の駆け引きや打算的な行動で批判を浴びたりする人はいたが、クロちゃんの「ゲスっぷり」は特筆ものだった。複数の女性に「お前が一番好き」と言い寄ったり、ライバルになりそうな男性に圧力を掛けたりとやりたい放題。もちろん、番組の企画としては、その極悪さを楽しむというものだったので、その目的は十分に達せられたと言えよう。

 そして始まった今回の企画である。言うまでもないが、クロちゃんは、芸能界でも有名なアイドル好きだ。その「好き」という気持ちは、偶像としてのアイドルを見ているのか、女性としてのアイドルを見ているのか、そのあたりが微妙なところだ。

 第1回の放送では、オーディションで集められたアイドル候補生16名の中から、クロちゃんが8名を選抜するという展開だった。まずは、それぞれのキャラクターや歌唱審査などをするのだが、早速そこでのクロちゃんがゲスっぷりを発揮。「アピールタイム」と称された審査では、ほっぺを触ったり手を握ったりとやりたい放題。プロデューサーという立場を利用してのセクハラ三昧だった。何より衝撃的だったのは、最初に見たときから目をつけていた女の子の「泣いた顔が見たいから」という理由で、合格発表の際、わざと最後に回したことだ。これにはスタジオゲストからも悲鳴が上がるほどだった。

 最後には、「アイドル作りたいし、彼女も作りたい」と発言。明らかにメンバーを“女性”として見ていることが露呈した。

 次回以降は、沖縄での合宿の様子が放送されるとのことだが、ある意味前回の「モンスターハウス」にも近い状況になる。さぞかし欲望に満ちた映像が見られるのではないかと思う。

 もちろん、これはあくまでもテレビの企画なので、予め想定された流れや演出もあることだろう。クロちゃん自身にしたって、それをわかった上で行動している部分もあると思われる。もっと深読みをするならば、「アイドル界のプロデューサーは、心の中で少しはこんなことも考えてるんじゃないの?」ということを、アンチテーゼ的に提示してるとも受け取ることができる。

 このような企画が始まった場合、製作者側や、長くアイドルを見ている人達の中では、「ああ、それはこのくらいの盛り上がりにはなるだろうね」というのが何となくわかってしまうものだ。そうなっていくと、これは、女の子と運営(この場合はクロちゃんではなく、番組を作っている側)との戦いになる。アイドル界というのは、しばしば女の子が作り手側の想定を超える成長を見せることがある。選ばれたメンバーたちが、どのようなポテンシャルを発揮していくかは注目だろう。

 そして、問題なのは、このアイドルユニットが今後どんな展開を見せるかということだ。先に書いたように、私はアイドルファンだからといって、いいアイドルプロデューサーになるとは思っていない。今までの行動を見る限りでは、クロちゃんがどこまでできるかは疑問である。ただ、忘れてならないのは、番組自体はTBSが構成しているわけだし、何より、かつてBiSで「全裸PV」や「ビンタ会・ハグ会」などの奇抜な戦略を見せ、現在大人気のグループBiSHを作り上げた、WACKの名プロデューサー・渡辺淳之介が絡んでいることだ。

 彼が今まで行ってきた手法を見てみると、「それまでアイドルがやらなかったようなことをやる」というのが一番のポイントである。もちろん、奇をてらった戦略は、従来のアイドルファンから支持されないこともあるだろう。しかし、渡辺はそれを突き詰めることによって、それまでのアイドルファン以外にも多くの支持者を獲得していったのである。

 ここでもう一度「モンスターアイドル」の構図を見ていこう。集められたメンバーは、クロちゃんの思い入れ満載で試練を課せられ、選ばれていく。その様子を番組が追い、視聴者がそれを眺める。メンバーはクロちゃんの手のひらで踊らされ、クロちゃんは番組の手のひらで踊らされている。でも、ちょっと待ってほしい。

 前作の「モンスターハウス」では、企画の最後にクロちゃんが檻に入れられ、としまえんで公開されるという展開があった。そして、現地には、視聴者が殺到してパニックになり、TBSが謝罪してイベントを中止するという措置まで取られたのである。つまり、このコンテンツにはそれほど大きな影響力があるのだ。

 斬新な手法好きの渡辺がそれを知らないわけがない。もしかしたら彼は、クロちゃんや番組の思いまで含めて、「アイドルビジネスの仕掛け」として考えているのではないだろうか。つまり、クロちゃんも、TBSも、全ては渡辺淳之介の手のひらの上で踊らされているのではないかと考えることもできるのだ。

 第1回の放送後、ネットには賛否の書き込みが相次いだが、もちろん、番組を見ている分には、そんなに難しいことを考える必要はない。その場その場のハプニングを楽しみ、「クロちゃんゲスいなー」と思っておけばいい。ただ、これが今後どんな展開を見せ、アイドル界にどんな影響を及ぼしていくか。それを考えてみるのもまた楽しいことだと思う。私には、甘く見ていてはいけないような匂いもどこかに感じるのである。

(文=プレヤード)

 

ネタなの? マジなの? クロちゃんプロデュースアイドルの可能性を占う!のページです。おたぽるは、その他連載の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!