“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.30

「推し」とは一体なんなのか?――ドラマ『だから私は推しました』第1話

【校正待ち】「推し」とは一体なんなのか?――ドラマ『だから私は推しました』第1話の画像1
『だから私は推しました』公式サイトより

 日本テレビ系で放送されている『秘密のケンミンSHOW』に、「標準語にできない方言」を紹介するというコーナーがある。ある地域では普通に使われているのだが、いざ標準語にしようとすると、的確なものが見つからないというものだ。私も、地元の言葉が紹介された時「確かに意味はわかるのだが、標準語にできない」という感覚を味わったものだ。

 そのような言葉は、「地方」ということに限らず、さまざまな業界やコミュニティに存在するものだと思う。

 7月27日に第1話が放送された、ドラマ『だから私は推しました』(NHK総合)。このタイトルにも使われている「推し」という概念も、アイドルファン以外の人には、正確に伝えることが難しいかもしれない。

 警察の取調室で、自身のことを話す一人の女性、遠藤愛(桜井ユキ)。彼女は元々、アイドルとは無縁の生活を送っていた。

 女友達と食事をし、ちょっとした自慢話や愚痴を言い合う。恋人・恭介(中山義紘)との写真をインスタに上げ、いいねをもらう。そんな日常がある日突然壊れてしまう。

インスタの写真を見た恭介から「キモい」「イタい」と言われ、フラれてしまったのだ。そして弱り目にたたり目、うっかりスマホを落としてしまう。

 精神的にボロボロになった愛は、拾ってくれた人からスマホを受け取るために、指定されたライブハウスへと向かう。そこでステージに立っていたのは、「サニーサイドアップ」という5人組のアイドルグループだった。中でも愛の目に留まったのは、歌もダンスも下手なハナ(白石聖)という女の子。無理をしながらも、必死で周りについていこうとする彼女を見て、愛はどこか不器用にしか生きられない自分と重ね合わせるのだった。

 なんとも言えない感情が高まった時、愛はハナに向かってきつい言葉を投げかけてしまう。

「一人だけ歌はできないし、ダンスは下手だし!」

 アイドル現場で言うところの「厄介」になってしまったのだ。

 アイドルとの出会い方はさまざまだ。最初からライブを見に行く人もいるだろうし、テレビやネットで見て心惹かれることも多いだろう。ただ、私の経験上、心が弱っている時ほど、アイドルというのはスッと体の中に入ってくる。そして、スキルが高いメンバーよりも、どこかぎこちなさや無理をしている感がある女の子の方に、肩入れしてしまう気持ちもよくわかる。ある意味、アイドルファンはの頑張りや成長していく姿を楽しむものだからだ。

 そのような点でも、愛がアイドルにハマっていく過程は、うまく描かれていたと思う。

 彼女の投げつけた厳しい言葉に、会場の空気も凍る。スマホを受け取るのも忘れ、会場を後にした愛だったが、なぜかハナのことが気になって仕方がない。結局、後日、またサニーサイドアップのライブを見に行くのである。

 そこで目にしたのは、今までの自分から逃げずに、必死で変わろうとしていたハナの姿だった。その姿を見て、愛は、自分も前に進まなければと思うのだ。

 愛の目に、アイドルはどのように映ったのだろう。

「元気をもらう」とか「癒やされる」という言葉にすれば簡単だけど、「推し」への気持ちというのは、そんな単純なものではない。その子からの言葉に傷ついたり喜んだり、なんとか気持ちを伝えたいと一生懸命になったり、その頑張りに自分自身を投影してみたり。そんないろいろな思いが混ざりあって、「推し」という気持ちになるのだ。

 少なくとも今のアイドル界で、「推し」は「推し」でしかない。標準語にできない方言と同じで、他の言葉での言い換えはきかないのだ。

 ライブの後、愛は常連の椎葉(村杉蟬之介)からチェキ券をもらい、初めて特典会に参加する。そこで、改めてハナを応援すると伝えるのだ。

 物語は、ある理由で逮捕された愛が、それまでの軌跡を振り返る形で進んでいく。刑事の聖護院(澤部佑)から、「瓜田さんを突き落とすまでの……」という言葉が出ていることから、このタイトルが、「推しました」と「押しました」のダブルミーニングでは? と想像され、ちょっとゾクッとした。

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