現在フジテレビ系にて深夜に放送中の桜井日奈子主演のドラマ『ヤヌスの鏡』。先行してネット配信されたので、すでに全話視聴済みという人も多いだろう。
この作品は、宮脇明子のマンガを原作に二つの人格を持ってしまった少女を中心に描かれるサスペンスタッチの作品だ。
すでに観ている人も観ていない人もいるだろう。そして、評価も様々だと思う。いずれにしても、これを機会にぜひ観てもらいたいのが、1985年のドラマ版だ。
1985年版は、杉浦幸主演(今回はナレーションで参加)で制作された大映ドラマ。大映ドラマといえば、いちいち仰々しい台詞回しやナレーションがいまだに語り継がれる、インパクトの極めて強いドラマ枠。そのインパクトのせいか、近年でも再放送されることが多い。
大映ドラマ版『ヤヌスの鏡』は、そうした独特のインパクトが絶好調過ぎる作品。もう、番組冒頭のナレーションがすごい。
古代ローマの神・ヤヌスは、物事の内と外を同時に見ることができたという。この物語は、ヤヌスにもう1つの心を覗かれてしまった少女の壮大なロマンである。もし、あなたに、もう1つ顔があったら……。
ぐぐっと引き込まれる作品世界で、インパクトが最高なのは、老け役の名優と知られた
初井言榮。ヒロインである杉浦を厳しく躾ける祖母なのだが「汚らわしい!」とか「お前には、あのふしだらな女の血が流れているのです」とか、いちいちセリフが刺さる。
おまけにシナリオも混迷を深める形になっていて、脇役かと思っていた宮川一朗太演じる真面目な生徒会長が、途中で豹変したり。多少ネタバレになるが、大映ドラマなので大抵の悪役も最後は実は善人だったという強引な大団円に持って行こうとするのもポイントが高い。
もし、ドラマ『ヤヌスの鏡』を観るとしたら、まずは大映ドラマ版も一緒にみるといいだろう。なお、筆者は十年ほど前の再放送の時に思わずDVDボックスを買ってしまった。
(文=昼間 たかし)
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