華山みおの物語探索 その61

『新聞記者』政治に無関心は実はかなり怖いこと…現代日本を痛烈に風刺した報道サスペンスに深く考えさせられる

 今回は、藤井道人監督の映画『新聞記者』をレビューします。

 東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名 FAX で届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる!

 殺人事件が起こるわけではありません。幽霊の話でもありません。グロテスクなシーンが映りこむわけでもないです。だけど、この映画を観終わった後に感じたのは【恐怖】でした。

 私は新聞を読まない世代、政治への関心が薄い世代だと散々言われているど真ん中でした。大人になったらいつの間にか世の中のことを知るものだと思っていたけれど、そんなことはありませんでした。自分の毎日の生活に流されがちで、ニュースで耳にする単語程度は知っているけれど、表層のことに過ぎず、事件のあらましなんて知らないまま次のニュースに塗り替えられて忘れてしまいます。選挙は行くけれど、その時になってから「あれ?誰が何を言ってるんだっけ?」って調べて投票してそのまんまなんてことも。

 私の政治への関心度はその程度だった。

 だけどこの映画を観て「あ、やばいな」と思いました。新聞もテレビも政治家も正しいと信じていたけれど、それは絶対じゃありません。物語の中では何度も見てきた「上層部の闇」。ファンタジーの世界の中で物語として見てきたそれらが、なぜ現在の日本で起こらないと思えてしまうのでしょうか。

 いや、ニュースの断片から色々あるのは分かっていましたが、ちゃんと見ていなかったのです。どこかで、信じたい気持ちもあったのでしょう。そこまでひどいことが蔓延しているなんて信じたくなかったのです。

 作中、自身の正義と置かれたポジションの中で、松坂桃李演じる杉原の葛藤が描かれます。間もなく第一子が生まれる中、尊敬する元上司の死をきっかけに知った政府の闇。「もうすぐ子供が産まれるんだよな?」と圧力のようにかけられる言葉。自分の正義を押し通す行動が家族に直結する恐怖。官僚といっても一市民であり、権力をかざされたら手も足も出ません

 政府に都合の悪い情報をもみ消すためには、罪のない、むしろ害を受けた被害者を悪者にしていきます。SNSを駆使して貶めていく描写があり、それがとても恐ろしいです。もちろんこの映画は事実ではなくフィクションですが、あってもおかしくない土壌が、いまの日本にはあることがはっきりしたのが怖い。

 そして官僚だけでなく、真実を報道する使命を帯びている報道機関も監視されています。真実を書いて世に出しても「誤報」と訂正され捏造された記事が別途出されるのです。首相と仲良しであれば、どんな大罪ももみ消すことも可能なこと、それがまかり通る現実が淡々と描かれ、それは私たちの現実にリンクしています。

 記憶に新しいレイプ事件の犯人が不起訴になった事件や、首相のお友達の学校問題など…、そのまま同じものだと思ってはいけないのは分かっているのですが、このように事実がもみ消される事態が横行しているのです。

 そうだよ、私はあの事件があった時に「なんでレイプ犯が無罪になるのか? 顔まで出して記者会見をしているのにSNSで見かけるものには被害者を叩くものが多いのか?」と疑問に思ったじゃないか。なのに、いつの間にか忘れていた。

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