実写版『銀魂』をヒットさせた福田雄一監督の最新作『斉木楠雄のΨ難』もメチャ面白い!

『銀魂』ではギャグとハードを両立させるという新境地を開拓し得た福田監督が、今回はそのリハビリといってはアレだが、本当にのんびりと楽しくゆる~いギャグを連発させながら、それでいてちゃんと1本の映画としてのメリハリも鮮やか。個人的には『銀魂』よりも福田監督らしい微笑ましさが十二分に発揮された快作と捉えている。

 何よりも今回はキャストがいい。斉木楠雄を演じる主演の山崎賢人は、ここ数年漫画原作の映画出演が目立っており、今年だけでもすげに『一週間フレンズ。』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』と新作が発表。本作の後も、11月に公開される『氷菓』は推理小説が原作だがTVアニメ版の印象も強いだけに、今や彼こそ2次元世界の3次元化俳優の第一人者といってもよい(その事実を本作の予告編でギャグに使っているほど!)。そして今回の彼は、およそありえないキャラクターを演じることの歓びみたいなものが、見る側にもすこぶる伝わってくるはまり役の好演である。

 が、今回もっともすごいのはヒロイン照橋心美を怪演する橋本環奈であろう。“1000年に1度”の“天使すぎる”美少女として大いに崇め奉られている彼女だが、ここではそういったキャラクターを逆手に取るかのように、自分が美少女であることを自覚し、それなのに唯一自分に興味を示してくれない斉木楠雄を虜にしようとあの手この手を画策していく、その見た目は乙女で内面ドロドロ具合が絶妙に楽しい(ちなみに斉木楠雄は超能力で心の内を読むことなど日常茶飯事なので、彼女の内面などとうの昔にお見通しなのだ)。

 もともと橋本環奈は『銀魂』ではヒロイン神楽に扮し、何と鼻くそほじり姿まで披露してしまったのだが、それをやらせてしまった福田監督を全面的に信頼しているのだろう、今回もおよそ天使過ぎる美少女なら絶対にやらない言動の数々を喜々として実行してくれているのだが、それによって逆に彼女の好感度もアップするのではないか?(少なくともわたしはそうである)

 その他、ひとりひとりのアホなキャラを紹介していったらきりがないほどだが、全てがマンガ原作というある種の滑稽さとケレンミを理解し、福田監督に身を委ねながら徹底的にオバカなことを真剣に演じてくれている。そのことが何よりも本作を面白くしている秘訣なのだ。

 作っている側が勝手に悦に入って笑っているだけで、見ている方は面白くも何ともないというコメディ映画は昔も今もいっぱいあるが、福田作品に関しては真剣に笑いに挑戦し、しかしそれを億面にも出さず、ゆる~く観客に提示して2時間弱の上映時間を堪能させてくれる。個人的にも今もっとも信頼できる映画監督であり、『斉木楠雄のΨ難』もまたその期待を裏切らないどころか、彼のフィルモグラフィの中でも1、2を争う楽しい出来栄えであると強く推したい。
(文=増當竜也)

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