かつてのヒーローたちが大集結の実写版『亜人』、原作からの改変で映画らしい映画に

かつてのヒーローたちが大集結の実写版『亜人』、原作からの改変で映画らしい映画にの画像1映画『亜人』公式サイトより

 漫画やアニメーションを原作とする実写映画も今では珍しくも何ともなくなってはいるものの、ファンとしては毎回どんな出来に仕上がっているか、期待よりも不安要素のほうが多いものが大半を占めた企画になっているのも事実ではあり、その意味では映画『亜人』もまた不安材料に満ちた1本といえるかもしれない。

 原作は2012年より『goodアフタヌーン』にて連載されている桜井画門の人気コミックで、死んでもすぐに生き返ってしまう新人類“亜人”が世界各地で出現するようになり、各国の国家権力がこれを“保護”という名のもとに捕獲・生体実験を繰り返すようになって久しい近未来社会、とある交通事故から自分が亜人であることに気づかされ、国家権力から逃亡する主人公の永井圭と、その国家権力を憎悪し牙をむく亜人テロリスト佐藤との“絶対に死なない”壮絶なバトルを描いていくもの。

 15年から3部作のアニメ映画が、同年秋からそれを基にしたテレビシリーズも分割2クールで製作、放送(どちらも総監督は、この秋の話題作『GODZILLA 怪獣惑星』の公開を控えている瀬下寛之)され、好評を博した。

 そして今回の実写版はTV&映画で大ヒットした『踊る大捜査線』シリーズ(1997年~12年)で知られる本広克行監督のメガホンで映画化。

 今回、原作ファンの間でもっとも議論されること必至なのは、原作からの改変部分であろう。まず主人公・永井が原作では高校生だったところを、演じる佐藤健(現在28歳)の年齢に合わせて研修医に変更。

 対する佐藤も演じる綾野剛(現在35歳)の実年齢に近づけたキャラ設定がなされているのだが、原作の佐藤はいいトシした中年オヤジであり、そこがまた味わい深かっただけに、個人的にはここが一番ひっかかっていた。

 どうしても人気キャストの起用が企画のキモとなってしまう昨今の日本映画界、それゆえの失敗も数限りなく見てきたが、しかし今回、不安も大いにあるにせよ、原作&アニメを見続けてきている側として、綾野剛がもし中年の年齢に達していたら原作の佐藤ぴったりだったなという、どこか期待したくなる部分があったのも確かである。

 何よりも、この『亜人』という作品、何度でも死ねる亜人の特質を活かしながら、飄々と殺戮を続ける佐藤のピカレスクに満ちたキャラクターが圧倒的に面白く、彼を見ていると、どうせワルになるのならかくありたいとまで思ってしまうほどなのだ。

 そして結果から先に記すと、今回の綾野剛は映画賞ものの怪、いや快演であり、もはや実写の佐藤は彼以外ありえない! と太鼓判を押したくなるほどの気迫がみなぎっていた。声色までアニメ版で同役を演じた大塚芳忠に似せており、これはかなり原作とアニメを研究して役に臨んだなという演じる側の努力も、原作やアニメファンには伝わってくることだろうし、原作の佐藤が若かりし頃はきっとこうであったろうという演出する側の確信までも見ている側にもひしひしと伝わってきて、とどのつまり、やはり実写の佐藤もすごかった!

 こういった原作から映画への改変は、最近は歓迎されないことも多いが、原作と映画は別物であり、何よりも2時間前後の限りある上映時間内でいかに面白く転がしていくかという、映画そのものの縛りとどう向き合うか、もともと漫画やアニメ好きで、TV&映画版『PSYCHO-PASSサイコパス』アニメ・シリーズ(12年~)で総監督を努めたキャリアも持つ本広監督は非常に意識的に取り組んでいる。

 実は原作からの改変はこれだけではなく、原作で永井を助ける幼なじみの海斗や、永井とともに行動をとる亜人仲間の攻は今回登場しない。これは永井VS佐藤の図式をシンプルに引き立てるためでもあろうが、さすがに両者のファンの間では賛否が割れることであろう。

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