九目『おとぎのファルス』少女が助けたのはソーセージ? シュールな展開に目を見張る。

 九目『おとぎのファルス』(徳間書店)は、あまりにもシュールすぎて、よくもまあ、こんなことを考えつくものだと作者の才能に驚く作品です。

 物語のヒロイン・アメリアは母を亡くして身よりも住むところもなくした女の子。母が遺してくれた僅かなお金を持って彷徨っていたアメリアですが、自分が困っているというのに困っている人を放ってはおけない性格です。寒さに困ってる子どもがいれば、着ている服をあげてしまい、押しの弱さゆえに変態おじさんに履いていた靴下まであげてしまいます。

 おまけに、僅かなお金も大工にコキ使われていた機械少女のリリーを助けるために使ってしまうのです。こうして、機械少女と一緒に森を彷徨ってたアメリアが次に助けたのは、熊に襲われていたソーセージ。

 ええ、手足が生えて服を着たソーセージです。口もないのに話す上に人間(?)ができているソーセージのブルストは、肉屋のゼベットさんのところで暮らしています。何年か前に愛する奥さんを亡くしたゼベットさんは、悲しみのあまりソーセージをつくったら、なぜかしゃべるソーセージのブルストになってしまったのです。

 こうして、アメリアとリリーはゼベットさんと一緒に肉屋に住むことになります。街の人はみんな平和で親切そのもの。でも、平和は長くは続きません。というのも、アメリアは、ある貴族の落とし胤の様子。アメリアが生きていると不都合があるのか、殺し屋のヒズベルトが街にやってきたのです。

 でも、冷酷な殺し屋だったはずのヒズベルトは、アメリアを見て一目惚れ。仕事を放棄して、そのまま街にいついてしまうのです。これまたイケメンのヒズベルトに、特に街の奥さん方は親切にするのです。

 と、ソーセージを助けるとか妙にシュールな展開で始まる物語。シュールギャグかと思いきや、ちょっとラブコメ的な雰囲気もあったりと、なんだか謎なマンガになっています。

 配信サイト「GANMA!」で連載中の、この作品は作者の九目氏の初連載作品。正直、まだマンガとしては発展途上です。コマ割りの単調さに新人感をぬぐい去ることはできません。

 だからといって、読みにくいかといえば、そんなこともないです。というのも、物語の構成がとても上手い。一話から数話完結の構成になっているのですが、ちゃんと次回も読もうと思わせる引きになっている。あと、キャラが妙に立っているので、物語世界に引き込まれていくでしょう。

 こんなシュールな作風だと、ついついギャグに走ってしまいがちですが、九目氏はできるだけギャグ要素を押さえて読ませる作品に仕上げようとする意図もあるようです。

 加えて、作者が描いているキャラに愛情を込めまくっていることが、なぜか見えてしまうことも本作の特徴でしょう。ちょっと弱気な気分の時に読みたい作品だと思いました。
(文=大居候)

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