原作・LINK/作画・宵野コタロー『終末のハーレム』 女の園はほとんどゾンビに囲まれたショッピングモール 

 エロ妄想の具現化かと思えば、意外にちゃんとSFしていた。

 LINK(原作)・宵野コタロー(作画)『終末のハーレム』(集英社)は、そんな作品である。いったい何がハーレムなのかといえば、物語の舞台が男性5人に対して女性50億人となった未来の地球なのである。それは、美味しいハーレムかと思いきや、とてつもなく怖い世界なのである。

 作中でまず、驚くのは舞台設定である。

 物語の始まりは西暦2040年。

 この時代、人類はすでに科学技術の発展により労働から解放され、仕事は余暇ややりがいを求めるために行うものになっていた。

 現在、西暦2016年。あと24年でどれだけ人類の文明が高度成長するのだろうかと、驚いてしまうくらい近い未来なのだが、まあそれはいい。

 その世界に住む青年・怜人は、幼馴染みの絵理沙と友達以上恋人未満の微妙な関係である。そんな関係に終止符を打とうと想いを告げた怜人。その理由は悲しいものだった。彼の身体は不治の病に侵されていたのだ。

 ただ、この世界の科学力は凄かった。4~5年もコールドスリープをしていれば、AI(人工知能)が治療法や薬を開発してくれるのだという……なんか、マジで24年後? 22世紀くらいじゃないのか?

 それはさておき、今までずっと一緒に過ごして来た2人にとっては辛い別れである。お互いに再会を近い、コールドスリープに入った怜人。

 しかし、目覚めると世界は一変していた。男だけが罹患して死亡する未知のウイルスによって、地球上に残った男は怜人を含めて5人だけ。そして、男たちの死滅によって社会そのものが崩壊しようとしていたのである。

 さらに、絵理沙は行方不明になっていた……。

 こうして物語の本題がはじまる。怜人は女たちが支配する世界で種馬となって生きることを求められる。もちろん、その世界に馴染んでいる男もいた。けれども絵理沙への想いもあってか、怜人はそのような運命を受け入れることはできない。考えあぐねた怜人は、その優秀な頭脳で自らがウイルスを克服する治療法を開発することを決意するのだ。

 設定が設定だけに、当然エロティックなシーンも多い。だからといって、興奮するような物語かといえば、そんなことはない。一言でいって「ホラー」なのである。

 なぜかといえば、周りが全員女だから。街を一歩歩けば、崩壊しつつある社会で貧しい女たちが「男よ~!」と襲いかかってくる。怜人を保護する機関は、秩序があるようにも見えるのだが、コイツらだって脳内では欲望にまみれているのは当然。すなわち、ゾンビとかクリーチャーがはびこるバイオハザード的な世界で、ゾンビに保護されているような怖さを感じるのだ。加えて、女たちが微妙に火花を飛ばし合っているのも、絶対に視界に入ってくるじゃないか!

 いや、なんかの集まりとかで女性が多めだったりすると、女性のイヤな部分がいっぱい見えてゲンナリすることがあるだろう。この作品は、それが24時間続いているような世界観なのである。この作品を読んだだけで、二度とエロゲー的ハーレムに欲望を抱くことはなくなりそうだ。
(文=是枝了以)

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