『07-GHOST』の雨宮由樹&市原ゆき乃がおくる、新作SFバトルアクション『バトラビッツ』レビュー

 幼い頃、「鬼(オーグ)」に父親を殺された輝夜。彼は人が働くことや家族を守ることを尊重し、万引きをした不良の行為に呆れていた。しかし、その不良・コースケがある日オーグに身体を乗っ取られてしまう。輝夜は異空間のようなバスの中で出会ったウサミミの少女・マオには、理由もわからず命を狙われ、オーグに取り憑かれたコースケに心臓を貫かれてしまうが、間一髪で「バトラビッツ」に覚醒し、命を取り留めた。そして暴力ではなく、言葉と心でコースケを改心させる。マオは輝夜の持つ金色の「宝玉(ラビジュエル)」に驚くが、どうやらそれはバトラビッツの頂点に立つ者の証らしい。なんと輝夜は、彼らが千二百年もの間待ちわびた「若様」だったのだ。

『バトラビッツ』(一迅社)の作者「雨市」氏は、09年にTVアニメ化された前作の『07-GHOST』(一迅社)では「雨宮由樹&市原ゆき乃」として活動していた2人組の漫画家だ。「雨市」名義に変更してから初めての作品となる『バトラビッツ』にも、前作にも登場した死神「フェアローレン」が登場するのが興味深い。彼の正体は2作でリンクしているのだろうか? そして前作と同様、登場人物がざくざくと増えていく。初めは敵か味方かわからないものの、バトラビッツ地球総本部・総司令官の鷹ノ宮聖に支えられ、仲間たちに恵まれ、輝夜は父の仇を討つためにオーグを狩ろうと決意する。

 亡くなった優しい父と、その義妹に育てられたお陰で、心根の優しい人間に育った輝夜。コースケといい、学校の屋上から飛び降りようとした先輩といい、コンビニ強盗といい、オーグに寄生される源は人間の負の感情だ。憎しみや怒りを増幅させ、仮面をかぶった鬼になる。まだまだ戦闘能力では及ばないが、持ち前の優しさでオーグを寄生されていた肉体から切り離し、人間を助けることができる輝夜。しかし、金色のラビジュエルを持つ彼は、当然多くのオーグに狙われることになる。なぜなら、万一それをオーグに奪われてしまうと、星ごと破滅を導くくらいに大きな力となってしまうからだ。それゆえに、まだ力の弱い輝夜の存在はバトラビッツたちにとっては足かせともなってしまうのだった。

 雨市氏は、人間の心の闇を描くのがとても上手い。そしてそれ以上に優しさを描くのに長けている。相変わらずバトルシーンは迫力があってワクワクするし、人間からバトラビッツに変身するとウサミミが生えてくるというのも愛嬌がある。イケメン+ウサミミ……なかなか良いものだ。鬼畜な聖にも萌えるが、筆者的には医療技術担当の濡羽を推したい。可愛らしいタレ目に、高度な医療技術で身体を構成するすべての細胞を修復できるスペシャリストなんて、素敵すぎます! もちろん、オーグも含め、各キャラクターがそれぞれの魅力に溢れているのは間違いないだろう。これからも新しい登場人物が増えると考えられるため、今のうちに人間関係を把握しておくと良いと思う。

 合間に挟まれる、輝夜が優しく強い少年に育ったエピソードにも心打たれる。ホームレスだったけれど、亡くなるまでこの上ない愛情を注いでくれた父親。その腹違いの妹で、姉のような存在の涼音。輝夜には守りたいものがあり、仇を討ちたい理由がある。それが今後どのような形で展開していくのか、そして命を投げ出してまで仲間を守りたい輝夜の優しさが裏目に出ないのか(いや、多分出る……と思う)など、心配や期待は尽きない。現在3巻まで刊行されており、第1巻だけが表紙などの装丁が違うのが気になるが、まぁそれはご愛嬌!? 兎と鬼の対決、そして輝夜の出生の秘密など、伏線はあちこちに散りばめられているので、またもや長いお付き合いになりそうだが、今後も『バトラビッツ』を見守っていきたい。
(文/桜木尚矢)

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