『NARUTO』の源流は真田十勇士・猿飛佐助にあり!? 三重大学の研究で“忍者もの”の起源が明らかに!

 この例としては、浅井了意による『伽婢子』(1666年)があるそうだ。この物語の7巻では、上杉謙信に試された加藤段蔵が、番犬を巧みに殺して、長刀とその場にいた娘をさらってくるという「しのびこんで、取ってくる」話が描かれている。元は中国のヒーローものの小説だったが、浅井了意が忍びの話としてまとめたそうだ。また、江島其磧の『風流軍配団』(1736年)でも、加藤段蔵が番犬を眠らせ、鎧を取ってくる場面が描かれている。

1609_ninjya_01.jpg『伽婢子』の長刀と娘をさらう加藤段蔵。

 しかし、当時の本に描かれている加藤段蔵の姿を見ると、黒装束を着ていない。「特別な忍者服を着ていると、任務遂行中に忍びだとバレやすくなります。だから、そのための服を用意することには差し障りがありました」と吉丸先生。

 では、忍者の格好は、どこからでてきたのか。その源流は、歌舞伎にあるそうだ。たとえば今でも上演される歌舞伎の『毛抜』には今と同じような黒装束の忍者が出てくる。この芝居の中の忍者は、黒幕の差し金であり、よい侍に懲らしめられるという役所らしい。初演は1742年。当時の台本が残っていたいため、はじめから忍者が黒装束を着ていたかは分からないが、現代の上演では、黒装束を着ている。

 一方で、記録として残っているのが、人形浄瑠璃『本朝廿四孝』の1766年講演の番付(パンフレット)だ。この番付では、忍者は黒装束で女性をさらい、手裏剣を打っている姿で描かれている。吉丸先生によれば、1760年代くらいから、黒装束の忍者が発生しはじめ、1800年代になるとおおよそ黒装束になっているそうだ。

1609_ninjya_02.jpg『本朝廿四孝』に描かれた、黒装束の忍者。

「これは演劇の特性です。小説なら、これが忍びだと書けばわかりますが、劇だと登場してわかる格好になっている必要があります。1817年の『北斎漫画』にも黒装束の忍者が出てきますが、演劇を通して出てきたものではないでしょうか」(吉丸先生)

1609_ninjya_03_1.jpg1609_ninjya_03.jpg棒手裏剣と十字手裏剣など平面上の手裏剣。

 さらに手裏剣についても一般的になっており、『劇場訓蒙図彙』(1803年)という演劇百科事典に、手裏剣を受け止めたように見せるため、棒手裏剣が刺さった柄杓の小道具の図が描かれている。手裏剣術自体は、武士が習う術としてあったそうだが、「遠くから敵を倒すのは武士道に反するという考え方から、芝居の中で使われるようになったのでしょう」ということらしい。しかも、「忍者は手裏剣をいくつ持っていたかと質問すると、いくつも持てないという答えがよく帰ってきますが、実際は手裏剣を持っていませんでした。忍び込んで、身体チェックを受けたとき、手裏剣を持っていたら、忍者とわかってしまいますから。だから、実際は持っておらず、お芝居の中で持つようになったのです」と吉丸先生。

 ちなみに、手裏剣自体も、忍びが使うものは棒手裏剣がメインで、一般的な手裏剣のイメージである十字手裏剣は、昭和20年代の貸本漫画から出てきたのではと推測しているそうだ。

■猿飛佐助が正義のヒーローに忍者の源流

 江戸時代の忍者像の典型例としては、このほかにも、手で印を組みがまがえるに変身したりするような魔法的な忍術(妖術)をつかって、お家の乗っ取りや添加転覆を謀る忍者があるそうだ。天竺徳兵衛、仁木弾正などがその例だという。しかし、江戸時代、神仏以外が超人的な力を使うことは悪とされていたうえ、その不思議な忍術を使って盗みや誘拐を行うことから、忍者は「悪」の存在と見なされていた。海外の映画で、忍者が怪しい闇の存在として描かれているのも、このあたりを強調していると吉丸先生は語る。

 そうした忍者が、『NARUTO -ナルト-』のうずまきナルトのような正義のために戦う忍者になる転機となったのが、2代目玉田玉秀斎の講談と、それを元にした立川文庫の『猿飛佐助』(1913年)の人気だったという。これは真田幸村に仕えた真田十勇士のひとりで、江戸時代の小説で端役として登場していた猿飛佐助を、玉田玉秀斎が主役にした物語だ。「猿飛佐助は、忍術の名人・戸沢白雲斎から、正しい心を教わり、忍術を学びました。しかし、猿飛佐助はもともと忍者ではなく、作中で『猿飛佐助は武士である』と言っているように、猿飛佐助は忍術を身につけた武士なのです。だから、忍術を使ってよいことをしました。猿飛佐助によって、忍術を使うヒーローが出てきたのです」(吉丸先生)

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