【劇場アニメレビュー】ついに最終章! スリリングなオリジナルエンディングとTVアニメとの対比も楽しみな『亜人 最終章―衝戟―』

1609_ajin.jpgアニメ『亜人』公式サイトより。

 永遠に死ぬことのない不死身の人間=亜人と、彼らを差別し、隔離しようとする政府との攻防を描いた、桜井画門の同名人気コミック(講談社)を原作とするアニメーション映画3部作の完結編『亜人 最終章―衝戟―』がついに完成した。

 第1部『衝動』では主人公のエリート高校生・永井圭が交通事故に遭い、すぐに生き返ったことから亜人であることが発覚し(要は一度死んでみないと亜人かどうか判断できないという、何ともおぞましい設定ではある!?)、政府機関に追われ、一時は捕らえられて研究材料として蹂躙されるも、辛くも逃げ延びるまでを描いていた。

 第2部『衝突』では、地方に隠れ住む永井圭が、もうひとりの亜人である青年・中野攻と偶然出会って交流していく過程や、日本政府に戦線布告する亜人過激派集団リーダー佐藤の狂気のテロ行動などがスリリングかつダイナミックに描かれていた。……と、ここまでは大方原作に沿ったストーリー展開ではあったのだが、原作は「good!アフタヌーン」誌(講談社)でまだ連載中なので、今回の映画版ではオリジナルのラストを迎えることになった。

 こういった趣向は、古くは『銀河鉄道999』劇場版(79)や『地球へ…』(80)など、数多く繰り出されてきているので、今さら驚くほどのことでもないが、映画VS原作、どちらが面白かったかをチェックする意地悪な見方もまた、ファンのお楽しみではあるだろう。

 第2部のラストで永井圭たちは亜人管理委員会の役人・戸崎のもとへひそかに潜り込んで共闘することになったので、完結編は永井たちと佐藤、そして政府の三つ巴の戦が繰り広げられていく。

 基本ラインこそ原作と同じ流れではあるのだが、話が進むにしたがって内容そのものはかなり違っていく。具体的なことを記すのはネタバレになるので避けたいところだが、既に原作を読んでいるファンも、パラレルワールドとしての映画『亜人』を存分に愉しめることだろう。

 個人的には戸崎の部下としてずっと仕え続ける亜人・下村泉のクール&アダルトな魅力が開花しているところが好みで、一方では徹底した合理主義者の永井圭が、次第に若さゆえの未熟さを露呈していくあたりも面白い。

 対する佐藤(何と本名サミュエル・T・オーウェン。つまりは日本人ではなかった!)の壮絶なる悪としてのキャラクター性も相変わらずで、正直見ているうちに彼の方を応援したくなるほど、悪徳の愉悦に感じ入ってしまうほどだ。死んでもすぐに生き返る亜人の特性を巧みに生かした佐藤の作戦の数々は第2部で見事に描かれていたが、今回も負けず劣らず、何とも痛々しく、また爽快ですらあった。

 もっとも、第1部で永井圭を助ける幼なじみの親友・海斗や、永井の妹ながら彼を忌み嫌う彗理子の登場はやや唐突な感も否めず、またずっと意識不明のまま眠り続ける戸崎の恋人を巡るくだりも含めて、このあたりは10月から放送開始予定のTVアニメ第2期シリーズでどうフォローされるのか、気になるところでもある。

 そもそもこのアニメーション・プロジェクト、まず昨年11月に映画版第1部を公開して、今年1月から4月までTVアニメ第1期シリーズ(全13話/MBS、TBS)を放送、そして5月に映画版第2部を公開という流れになっている。

 要は映画版の第1&2部はTVアニメ第1期の総集編でもあるわけだが、その編集の上手さによって、総集編的なイメージはさほど感じられず、むしろ映画とTVアニメは別物のようなテイストに仕上がっているのは驚きでもあった。

 今回も第1部と同じように、総集編としての映画がTVアニメ第2期シリーズよりも先に公開される。しかしTVアニメ第1期が映画版2作分の内容だったことを考えると、今度のテレビ第2期は、映画完結編と同じ内容をじっくり丁寧に描いていくのか、それとも映画版の後のストーリーまで語り続けていくのか、非常に興味あるところである(さすがに映画ともまったく異なる内容になっていることはないとは思うが……)。

 正直、今回の映画完結編の結末は、割かし予想し得るものではあり、見ている間はスリリングでも、終わってしばらく経つともどかしい想いに囚われる観客も出てくるような気もしている。

 10月から放送開始となるTVアニメ第2期シリーズは、そんな映画完結編を見てどこかモヤモヤしている人の想いを払拭させるに足るものになれば良いとは思うが、いっそテレビ版はテレビ版で最後、原作とも映画とも異なるラストを発表できたら、それはそれでユニークなプロジェクトになるのではないか?

 まあ、あまり過剰に期待しても仕方ないので、少しラフな気分にモードを戻して、TVアニメ第2期に接したいものである。

 いずれにしても、ポリゴン・ピクチュアズによる3DCGセル・ルック技術の妙や、各キャラクターおよび声優陣の個性もいかんなく発揮された、今の日本アニメーション界を代表する力作であることに間違いはない。

 どこぞの機会で、映画版3部作を一気に見直すことができたら、また印象はかなり変わってくることだろう。
(文・増當竜也)

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