〜私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか〜 第7章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。

 後日、の子さんから電話がかかってきた。「こないだのことなんですけど……」と申し訳なさそうに切り出し、「本当にすみませんでした……」と謝られた。

 自分が恥ずかしくなった。謝罪を要求しているわけでもなく、ただ条件反射的に怒っただけ。何よりも、単なるカメラマンがアーティストを謝らせているなんて申し訳なさすぎて消えてなくなりたい。

「こちらこそ、怒ってしまって恥ずかしいです。本当にすみませんでした……」

 互いに謝り倒した。どうして怒ったのかをきちんと話した。二人とも真剣だけど、端から見ると物凄くシュールだ。だって、アイドルのことで互いに声を震わせているんだもの。しかもネット上で衝突して。本当に大人げない。

 の子さんには自分の道を貫いてほしい。優等生になる必要はない。その姿が勇気を与えているのだから。「の子さんはやりたいようにやってください。」その気持ちを伝えた。

「これは、僕の本気と竹内さんの本気がぶつかったってことですね。」

 の子さんが締め括った。まさにその通りだろう。かっこよく言い過ぎてる気もするけど、の子さんの暴言は本気だからだ。そして私は本気だから怒った。反省はしているが、本気の気持ちを伝えられたことに後悔はしていない。

 ピーター・バラカン氏にとって決して譲れないものがある。モッシュッシュメイトにとって大切な音楽がある。その本気と本気のぶつかり合いで摩擦が生じるのは当たり前だ。ただ、MOAMETALが『KARATE』MVで捕まえた虫を放してあげるシーンを見逃したくない。好きなもので争いたくない。それこそ《本当の敵は自分自身》の精神を忘れたくない。

 BABYMETALに心を射抜かれた理由の一つに、ダンスがある。今までアーティストのギタープレイや魂を揺さぶるアジテーション、メロディセンスや心の内面から生まれる歌詞に魅力を感じていた。ダンスにまったく興味がなかった。だが、YUIMETALの容姿に似付かないキレッキレのダンスは振り向かざるをえなかった。まさに静と動。そのバランス感覚に長けている。

 想像力に富んだ振り付けはパントマイム的要素がある。かくれんぼしたり、チョコを食べたり、空手をしたり。チャップリンの無声映画にも似たセリフ要らずのボディランゲージが、世界共通の言語として成り立っている。

 YUIMETALが一心不乱に踊り続ける姿から、“本気”以外の何が見えるのだろうか。すべては「好き」が原動力であるように思う。SU-METALが歌を、YUIMETALがダンスを、MOAMETALがアイドルを、プロデューサー・KOBAMETAL氏がメタルを。それぞれの本気がクロスオーバーすることで間口が広がり、世代や言語の壁を越えているのかも知れない。

 最新アルバム『METAL RESISTANCE』に収録されている、怒りをテーマにした『Sis.Anger』に込められた一つのフレーズが印象深い。

「大事なことは本気かどうかだけ」

 ここにすべてが集約されている。たとえ「まがい物」でもそれが本気であることは間違いなく、その本気を目の前で見ても「世も末」なんて言えるのだろうか。知ようとするかしまいか。そこに物事を見据える《本気》の違いがあると思う。

 の子さんはその後の配信で意味深にトマトを食べていた。またその後の配信でも食べていた。偶然なのかも知れないが、生まれて初めてトマトにメッセージ性を感じた。なぜか和解の印のアイテムになっていた。きちんと自分から謝ってくれたことに感謝している。自分自身の本気を貫き通し、他人の本気を認める。そんな誠実なアーティストと出会えたことを心から幸せに思う。

 今後何があってもBABYMETALの真っ直ぐな姿勢を「見続ける」という選択肢しかない。女の子たちの本気、それをサポートする大人たちの本気、見続けるファンの本気。その本気が足を引っ張ることなく、ポジティブに作用し合ってほしい。

 これからアメリカツアーが始まる。有名なテレビ番組『The Late Show』に出演した効果か、いくつもの会場がすでにソールドアウトになっている。誰が批判しようと、この人気は留まることを知らない。今後、想像以上の展開が待ち構えているように思う。

 そこで願いたいのは、YUIMETALが極端に痩せることもなく、頑張った後はトマトを食べたりして、BABYMETALの3人と神バンドとスタッフが無事にツアーを終わらせて日本に帰ってくること。そして、どこかでアリアナ・グランデに再会すること。

 ヘイターだって、かつての私のようにコロッと意識が変わるかも知れない。それは本当の意味で“知る”時だろう。

 ツアーファイナルの東京ドームでは一体どんな光景が観られるのか。時代が『SUKIYAKI』から『TOMATO』へ移り変わる様を、本気で見届けていきたい。
(文/竹内道宏)

1408takeuchi_p.jpg

竹内 道宏(a.k.a. たけうちんぐ)ライター/映像作家
監督・脚本を務めた映画『世界の終わりのいずこねこ』がイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に正式出品。現在、2枚組DVDとなり発売中。他の監督作品に、スターダストプロモーション「EBiDAN」所属のラップグループ・MAGiC BOYZ主演『イカれてイル?』、佐津川愛美主演『新しい戦争を始めよう』など。神聖かまってちゃん等の映像カメラマンとしておよそ700本に及ぶライブ映像をYouTubeにアップロードする活動を行なっている。

2013年2月以来、BABYMETALに心を奪われてしまいました。命が続く限り、決して背を向けることなく彼女たちの活動を追いかけます!
たけうちんぐダイアリー(ブログ)→http://takeuching.blogspot.jp
ツイッター→https://twitter.com/takeuching

METAL RESISTANCE(通常盤)

METAL RESISTANCE(通常盤)

本気で推すことは素敵なことだと思うんだ

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。のページです。おたぽるは、人気連載アイドルアイドル&声優その他音楽の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!