〜私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか〜 第7章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。

 ところが4月2日の深夜、ウェンブリーアリーナ公演のライブビューイング。深夜4時、Zepp Divercity Tokyoのスクリーンに映った光景がその不安を一気に吹き飛ばした。

 オープニングは最新MV『KARATE』に登場した白装束を身に纏った骸骨の鉄仮面の3体が、地鳴りのような演奏とともにステージに現れる。それを誰もがBABYMETALだと信じて疑わなかった。日本人未踏の新たな伝説を迎え入れるため、フォックスサインを掲げて歓声を上げた。

 が、それは違ったのだ。途端にライトアップがセンターステージに切り替わる。そこに本物が居た。私たちはしばらく偽りの姿に声を上げていた。今年初めてのライブでようやく確認した。その“本物”の体格がちゃんと元どおりになっていたのだ。

 いつものように風を切るようなダンスを炸裂させる。頰はぷにぷにの輪郭を取り戻していた。安堵の気持ちが押し寄せた。あれは一時的な変化だったのかも知れない。その真相は分からないが、

「よかったぁーーー!」

 序盤からクライマックスのような感動が襲う。ただ、いかに私が鉄仮面という偽りの姿に声を上げて、過剰に心配していたかを思い知らされた。

 YUIMETALは楽しそうだった。メンバー同士で見つめ合う時の表情が手に取るようにわかり、笑顔から時折素が垣間見れた。この目で見ることがすべてなのだろう。

 終盤、『THE ONE』でその名の通り一つになる会場を目の当たりにする。客席で掲げられる世界各国の国旗を見渡すYUIMETALの笑顔がすべての答えだった。テロや移民問題で揺れるヨーロッパ諸国の国旗が一斉に広がり、BABYMETALの目標である「メタルで世界を一つに」があながち夢物語に思えなくなる。メンバーそれぞれの目が潤んでいた。その瞳は決して消えることのないような光を灯していた。

「坂本九以来、53年ぶりの日本人アーティストの米・ビルボードTOP40入り!」というメディアが取り上げやすい新たな枕詞を得たけど、BABYMETALは《本当の敵は自分自身》というテーマを掲げていた。冒頭で登場したもう一つの姿に打ち勝つかのごとく、ライブは盛大に終了する。他者の中に《敵》を作ることがいかに愚かであるかを教えてくれた。記録より記憶に残る。いつまでも居続けるのはチャートではなく、人の心の中だ。己自身と向き合い、道なき道を突き進む彼女たちを心から尊敬する。

 そんな最中、あるトピックがネット上を駆け巡った。

「あんなまがい物によって日本が評価されるなら本当に世も末だと思います」

 著名ラジオDJのピーター・バラカン氏がBABYMETALに対するコメントをTwitterに書いたことでファンが一斉に反応し、ファン以外をも巻き込んで各所で話題に取り上げられた。

 YUIMETALの全身全霊のダンスを評価することだって世も末であるならファンとして悲しいけど、これも一つの意見として受け入れたい。好きなものをいくら揶揄されても、BABYMETALに倣って他人に《敵》を作りたくない。ライブの最後にいつも「We Are!」「BABYMETAL!」と一緒に叫ぶなら、その一員でありたいのだ。

……なんて大人びたことを言うけど、一部のファンの人がバラカン氏を激しく糾弾する姿に身に覚えがあった。今このように思うのは、ずっと恥ずかしくて反省していることがあるからだ。

 すみません。BABYMETALを貶されたことでキレたことがあるんです。

METAL RESISTANCE(通常盤)

METAL RESISTANCE(通常盤)

本気で推すことは素敵なことだと思うんだ

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。のページです。おたぽるは、人気連載アイドルアイドル&声優その他音楽の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!