〜私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか〜 第7章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。

■「怒ってしまってすみませんでした。」

「あんなの金儲けマシーンだろうがよ!」

 昨年6月、神聖かまってちゃんのボーカル・の子さんがニコニコ生放送の配信で言い捨てた。さらに「大人の操り人形だよ!」と続け、BABYMETALのみならずアイドルシーンに嫉妬を込めて暴言を吐いた。

 どうしても聞き捨てならなかった。BABYMETALがマシーンだと?人形だと?「ざっけんじゃねーぞ!」

 の子さんの暴言はもはや一つの芸当で、今までもたくさんのアーティストを批判してきた。珍しいことではないのに、つい感情的になってしまってTwitterで反応した。そのツイートがファンにコメントとして拾われることで、本人の目に留まった。見ず知らずのヘイターや評論家が何を言っても気にしないが、身近である分無視できなかった。なぜなら、私にとっての子さんは大切な人だからだ。

「好き」と「嫌い」とでは情報量が違う。「好き」な私にとってそれは機械でも人形でもない。さくら学院で絆を深め合った3人のストーリーを知っている。成長し、強い意志を持ち、本気で挑んでいる。BABYMETALは舞台裏にカメラが入ることがなく、奥底の内面を知る機会がない。完成されたものだけを見せる。そこに美学がある。その反面、彼女たちの経歴は「嫌い」な人を含めて世間一般に知られることもなく、“ぽっと出”のアイドルとして認識されるのかも知れない。

 イライラするので配信を閉じた。その後、神聖かまってちゃんのファンの方々から「の子さんが物凄く反省しています」「許してあげてください」といくつもリプライをもらった。

「し、しまったぁ……」

 普段密接に関わるアーティストに対して、アイドルのことで本気で怒るなんて。と、途端に恥ずかしくなって申し訳ない気持ちが押し寄せた。

 ライブでギターを床に叩きつけて破壊したり、配信中のパソコンも叩きつけて粉々にしたり。テレビ番組で司会のSMAP・中居正広氏の目の前でカメラになるとを貼り付けたり、歌詞をすべてアドリブで変えて歌ったり。予定調和がまるでない。私が撮り始めた頃はセットリストさえ決めずにライブに挑み、支えられるほどお客さんがいないのにダイブすることもあった。衝動的で何が起きるかわからない。もちろんパフォーマンスだけに惹かれたのではなく、彼にしか作れない歌詞とメロディに魅了された。

 神聖かまってちゃんのありのままを晒け出す姿は、BABYMETALと真逆だ。弱音も愚痴も吐き散らす。良くも悪くも人間臭さに溢れている。一方、BABYMETALはそれが見えない。ありのままの姿を魅せるというより、作られた世界観でキャラクターを演じるという表現が正しい。YUIMETALがインタビューで語るように、ライブで《変身》する。いや、豹変と言ってもいい。その瞬間、たまらなく痺れる。普段なかなか前に出られない性格の水野由結は、YUIMETALに変身すると自信が漲るという。なり切ることで別の姿が現れることの面白さに本人は気づいている。

 それを観るのが楽しい。ドキュメントではなくフィクションの中に身を投じることで、まるで壮大なスケールのハリウッド映画のような迫力を味わう。『いいね!』の“現実逃避行”とはまさにこのことだ。

 の子さんは表も裏もドキュメントだ。音楽に人生を懸けている。誰にプロデュースされることもなく、自分でフリーターとニートを往復しながら小さなライブハウスから地道に活動を続け、ようやくメジャーデビューを果たした。

 嫌われることを恐れずに自分を表現するのは、そう簡単に出来ることではない。これは勇気の物語だ。本番直前、の子さんが緊張で震える手を叩きながら「俺は明日死ぬ。俺は明日死ぬ。俺は明日死ぬ。」と何度も自分に言い聞かせ、自己暗示をかける姿を見たことがある。そして“今日”、死ぬ気でライブに挑む。彼の「人生は一度きりしかない」というモットーはBABYMETALの「命が続く限り 決して背を向けたりはしない」のフレーズに近い。

 だからこそ《敵》を作ってほしくない。これは精神論の押し付けになるのだろうか。他者の中に《敵》を作ってもキリがないのだ。他人と比べるとどうしても限界がある。その憤りは最終的に自分に跳ね返ってくると思うのだ。

 の子さんは配信の中で「今のバンドは良い子ちゃんばっかりで、みんな他人に嫌われることを恐れている」と憂いていた。プロデューサー・KOBAMETAL氏がかつてインタビューで「最近、バンドシーンは非常識を常識に変えてしまうような熱量に少し欠けていて、優等生が多くなってるんですよね」と語っていたのを思い出した。

 現状を知った上で新しいものを魅せようと、神聖かまってちゃんは「壊す」。BABYMETALは「作る」。正反対のようだけど、根底に流れるものはそう遠くはないのかも知れない。

METAL RESISTANCE(通常盤)

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本気で推すことは素敵なことだと思うんだ

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